ニ 怪異猫
お父さんがサヨちゃんに嫌われてるのはただ単に相性の問題なのかもしれません……ですが、サヨちゃんが来てからというもの、そんな常識では説明のつかないような、どうにもおかしな出来事が家の中で起こるようになりました。
夜、リビングでテレビを見ていたり、自分の部屋で
まあ、最初はサヨちゃんも来たことだし、突然の猫の登場にネズミでも騒いでいるのかな? と思ったそうなんですが、それにしてはずいぶんと頻繁に音がするんですよ。
それに、気のせいなのかもしれないですけど、家の中に目に見えない何かがいるような、そんな気配も感じるようになったんですね。
一人でテレビを見ている時、後のダイニングに誰か来たような気配がしたので、お父さんかお母さんが冷蔵庫でも漁りにきたのかな? と振り返ってみても誰もいない……。
また、お風呂に入っている時なんですが、浴室と脱衣所を仕切る曇りガラスに、ぼんやりと人の影のようなものが映ったんで、ナベさん、声をかけてみたんですね。
「父さん? ……母さんなの? なんか用?」
でも、返事がないんです。それなりに大きな声を出してるんで、聞こえてないなんてことはまずありえない……。
いや、それよりも、お父さんかお母さんが何か用事があって入って来たんなら、またすぐに出ていくなり、あちこち移動するなり、何がしかの動きがなくちゃおかしいですよね? でも、その影はそこに突っ立ったまま、身動き一つしようとはしないんです。
いったいなんなんだろう? これまでに感じた気配のこともあり、恐ろしい気持ちも少なからずあったんですが、ナベさん、湯船を出て、曇りガラスに手をかけると思い切って開いてみたんですね。
「ミャア……」
すると、そこにいたのはサヨちゃんだったそうです。
「なんだあ、サヨかあ……」
ちょこんとそこに座っている愛くるしい猫ちゃんのモフモフとした姿に、恐怖と緊張から一気に解き放たれたナベさんはホっと胸を撫で下ろしました。
サヨちゃんの頭を撫でてやりながら見てみると、廊下と脱衣所の間の引戸も猫の頭一つ分くらい細く開いています。何か興味を持って、勝手に入ってきちゃったんですね。
安心したナベさん、再び湯船に戻ったんですが……。
……あれ? なんか変じゃないか?
しばらくすると時間差で、やっぱりおかしなことに気付きました。
さっき見た人影は明らかに人間が立っているくらいの高さがあったんですが、座った猫はたかだか60㎝くらい。もし後脚だけでぴーんと立ったとしてもせいぜい1mぐらいのものです。さっきの人影とはどうにも背丈が合わないんですよ。
じゃあ、あれがサヨちゃんの影じゃなかったとしたらいったい……。
それ以上考えるのが怖かったので、あれはサヨちゃんの影だったに違いないと、無理矢理ナベさんは自分に言い聞かせてお風呂を出たそうです。
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