第15話

侍女長は今の時間部屋で雑務をやっていたのでエレナはすぐに捕まえる事ができた。


「お忙しいところごめんなさい。お姉さまの侍女について聞きたいことがありまして本日訪問させていただきましま」


本来であればエレナが執務室に侍女長を呼んで話を聞くべきだが、それはできなかった。

なぜなら侍女長もお姉さまやお父様の味方のような気がして、部屋に呼んでいる間に言い訳を考えられたりすることができる。


だからエレナから突撃訪問をする事で言い訳ではない本当の事を聞けると思ったのだ。


「エレナ様。こんなところまでご足労ありがとうございます。…ですが呼んでくださればこちらから向かいましたのに…」

「いえ、普段あなた達がどういうところで仕事をしているか気になっていたの。だから気にしないでください」

「……そうですか……。それでどのような事でしょうか?」

「そうですね……」


訪問理由はお姉さまの侍女のことだけど、単刀直入にいきなり聞いても大丈夫なのかしら?

…いえ、まずは探りをいれましょう。


「最近、見かけなくなった侍女達がいるのですけど侍女長はなにか知っているかしら?」


エレナの言葉を聞いた瞬間、侍女長が目を細めた。

どうやら心当たりがあるようだ。


「実はあの子達はクビになりました。私が責任をもって退職させました」

「どうしてそんなことをしたのか理由を聞いてもいいかしら?」

「もちろんです。元々あの子達はエクレオ様付きの侍女でした。まだエクレオ様がいた頃は従順に働いていたのですが、失踪してからというものの勤務態度は悪くなり、他者への嫌がらせをする様になりました。それに加えて最近は他のメイドと喧嘩をして怪我をさせた事もあります。このような者をいつまでも置いておくわけにはいきません。それにあの者達は以前から他の貴族にも色々と迷惑をかけておりました。なので私の判断で辞めてもらいました」


わたくしは最近見かけなくなった侍女の事を聞いて、お姉さまの侍女の事なんて聞いていないが侍女長はそれに気づかず説明をしてくれた。

それに、ライラやライラが他の侍女に聞き込みをしてくれた時は辞職をしていないが、出所もしていないと聞いた。

侍女長は聞いてない事まで言っていたので、何か知っていますね。


「そうだったのね……。でもその人達は今どこにいるの?」

「さぁ……。私は知りませんよ」


嘘ね。絶対に何か知っているんじゃないかしら?

その証拠に私の質問に対して一瞬目線が泳いだもの。

きっと彼女達の間で何かしら取引をして解雇したあとどこか連れて行ったのではないかしら?


「本当に知らないんですか?」

「はい。申し訳ありませんが、知らないものは答えようがございません」


これ以上は無駄でしょうね。

この様子だと教えてくれなさそうだし、諦めましょう。


「わかりました。時間を割いて頂きありがとうございます」


そう言ってエレナは侍女長の仕事部屋から出て行った。


侍女長が何かを隠しているのは明らかで、その何かを知っているのも間違いないだろう。

ただそれを問い詰めても何も言わないのでは意味がない。


ここにライラがいた場合、もしかしたら侍女長に詰め寄っていたかもしれない。

それは現段階ではまずいのでライラが今回自主的に席を外してくれて助かった。


あまり思いたくはないけど出仕していないお姉さま付きの侍女はお姉さまの元にいる可能性が見えてきている。


まだ王都を探してはいないから根拠もなにもないが、それでもなんとなくそんな気がするのだ。


もしや私はお姉さまとお父様に騙されているのではないかと思う。

箱入り娘であるお姉さまがここまで見つからないのはおかしいし、お姉さま付きの侍女もいなくなってしまっている。


もしかしてどこかの離宮とかでお姉さまは身を隠している…と…か?


新たに出てきた可能性にエレナは愕然としてまった。

ジャン王子がこの国を信用していないと言った意味がやっとわかったのだ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る