第16話
メイド長の部屋から自室へと帰ってきたエレナは心ここに在らずだった。
ライラはまだ帰っていないようでエレナは何をすることもなく、ただぼんやりと窓の外を眺めていた。
わたしの味方って実はあまりいないのかもしれないわ…
皇女ではあるけれど、ていのいいように扱われていてお父様もお姉さまもわたしのことなんてどうでもいいのかもしれない…
お姉さまが見つかるまでは自分の事は後で考えようとおもっていたけど、国王やメイド長ぐるみでお姉さまを匿っているのなら話は別だ。
「はぁ…もうやってらんないわね」
エレナは今まで国のため、皆んなのために思って仕事をしてきたのに裏切られた気分になった。
何のために今まで頑張ってきたんだろう…
お姉さまは私の仮説がただしければそのうちひょっこりと帰ってくるだろう。
きっとエレナは父親から下町で見つけたのだ、怪我もなく元気で過ごせていたので安心したよと嘘の報告をされるにちがいない。
最初このことに気づいたときはとても悲しかったが、今になってみるとふつふつとお腹の底から怒りが湧いてくるのを感じた。
普段あまり怒る事はないエレナがここまで腹を立てる事は珍しく、もしその現場を目撃したものがいればとても驚いた事であろう。
コンコン そんな時、ドアがノックされた。
「……はい」
「失礼します」
入ってきたのは侍女のライラで彼女の用事は終わったので戻ってきたそうだ。
「用事はもう終わったの?」
「はい。確認がおわりました。」
「そう。それでどうしたのかしら?」
エレナがメイド長に会いに行っている間、ライラは別で確認したいことがあると別行動をしていた。
「私はエレナ様と別れてからもう一度使用人棟を見て回りました。さきほどはエレナ様もいた手前言えなかったこともあるかと書き込みと、部屋の中も見せてもらいました」
「そうなのね。それで新たにわかった事はあるかしら?」
「聞き込みからは新たな情報は得られませんでしたが、ある侍女の部屋でメモをみつけました」
ライラはどうやら使用人の間でなにか言えなかったことや隠されているのではないかともう一度使用人棟を探してくれたらしい。
幸いメイド長がエレナと会っているから余計な邪魔も入らないので、いなくなった侍女の部屋も見てまわる事ができたそうだ。
「それがこちらです」
ライラはその部屋で見つけたというメモを机の上に置いた。
紙には離宮の名称がいくつか書かれていて、それぞれ場所が細かく書かれていた。
「これは?」
「私はこのメモはエクレオ様が滞在している離宮について書かれているのだと思います」
普通に考えるとライラの意見はただしいが、いなくなった侍女の部屋から出てきたメモなので、きっとその侍女は行き先をメモしたに違いないが、他人に入られて見られるかもしれないのに証拠をわざわざ残しておくものなのかしら?
フェイクの可能性もある?
「可能性は高いかもしれないけど、いくつか書かれているのが気になるわね…。他にはでてこなかったのかしら?」
「残念ながらありませんでした」
「そう……」
もう一度エレナはメモを見る。
紙に書かれた離宮の名前は当然エレナも行った事がある場所で避暑に訪れたり、政で滞在したことのあるところだった。
王宮から近いところもあれば、少し離れて森林浴を楽しめる離宮もあ書かれており、候補としては多様だ。
この中のどれかにお姉さまは滞在しているのかしら?
しらみつぶしに調べてみる?
こんなに候補があるとひとつひとつ調べているうちにまた移動されて見つからないという事もある。
探すのもありだけどおとなしくひょっこり出てくるのを待つ?
きっとお姉さまはお父様が探さないというのはわかっていて、探しているのは妹であるエレナが探しているって思っているはずだ。
でも……。
なんだかお姉さまの手の上で踊っているみたいでなんだか癪に触る。
今までは従順になんの疑問もなく心配や仕事のサポートをしてきたけど、一矢むくいたいと思ってしまった。
「…どうしますか?」
「そうね…。まずはジャン王子に面会したいと手紙を書きましょう。探すことも大事ですが、このメモとメイド長の事も相談しましょうか」
自分の考えもそうだが、エレナはジャン王子の意見が聞きたいと手紙を書いた。
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