第14話

次の日、エレナはお姉さまの侍女に話を聞くために使用人棟に行ったが、エクレオ皇女付きの侍女は最近出仕していないと他の侍女から聞いた。


一人ならまだしも全員だという。


お姉さまの侍女はざっくりと10人くらいいる。

実際に数えた事がないので正確な人数は把握していないがだいたいそれぐらいだったと思う。

その人達が全員いないのだと言う。


それは何かがおかしい…


「それは本当なの?」

「ええ、先ほど一人一人の部屋を確認しましたが誰もいませんでした」


いつからこういう状態がつづいていたのか、たまたま今日だけ誰もいないのかはそれはまだわからないが、調べる価値はありそうなことだった。


実際にお姉さまがいなくなった頃からお姉さま付きの侍女はチラチラいたが、最近ではほとんど見かけなくなった。

エレナが忙しいかったのもあるが、誰も見かけないというのもおかしなことだ。


「ライラはいつからお姉さま付きの侍女を見かけなくなったかわかるかしら?」

「……さぁ、わたしもエレナ様についていることが多いのでわかりかねますね」

「そう…」


エレナ付きの侍女ライラも把握はしていないらしい。


お姉さまの事を心酔している方が多いからってきり荒れていたりするかと思ったけど…違うのね。

もしかしてお父様が頼りないから自分達で探しに行っている…と…か?

……いやいや、それはないか?


「では、様子とかはどうでしたか?荒れていたり落ち込んでいる方とかはいたかしら?」


いくらエレナと一緒にいるからと言っても常についているわけではない。

ライラに別の仕事をお願いする事だってあるし、使用人棟が生活している場なのだから他の侍女と交流だってあるはずなのだ。様子がおかしい侍女はみかけなかったがさらにライラに聞く。


「…いえ、特にそういう方はおりませんでしたね。彼女達はいたって普通でした」

「そうですか……」


これはどういうことなのかしら? 一人か二人は様子のおかしくなる人がいてもおかしくなかったのだけど…何がおかしい?

とりあえず今は考えていても仕方がないわね。


エレナは使用人棟を回ってくれたライラにお礼を言い、自室に戻る事にした。

そして、昨日調べたことと今日の事を紙にまとめてわかりやすくする。

できれば侍女の動向も細かく調べたいけど、それは記録されているものがないので難しいかもしれない。


お姉さまつきとはいえ王宮に働きに出ているのだから出仕していないとなるとそれはそれで問題だからお父様に相談してなんとかならないかと考えるが、そこでふとジャン王子の言った事を思い出す。


はたしてエレナが侍女の事を調べて欲しいとお父様にお願いしたところでちゃんとそれを実行してくれるかしら?

有耶無耶になって終わる可能性もあるわ…


エレナは考えた結果、お父様に頼む事はせずに自分で解決しようと決めた。

この件に関してはお父様やエレナの部下以外の言っていることは信用できないと考えた方がいい。


そう考えると昨日お姉さまの部屋を守っていた衛兵達も怪しいのではないかと疑問はつきないがそこはまぁおいおい考えればいい事だ。


まずは侍女の件ね。仕事が終わり次第侍女長に話を聞きに行こうかしら?

そう考えてエレナは行動に移す事にし、まずは溜まった書類へ目を通しはじめた。


■■■■■■■■■



今日は仕事の資料はあまりなく短時間で終わり、侍女長の部屋へと向かう。

ライラにも付き添いを頼もうとしたが、お姉さまについて聞き込みをしている時に見慣れない侍女がいたらしくそちらを調べたいと申し出たのでエレナはそれを快諾した。


「エレナ様、私は別で調べたい事があるのですが…そちらを優先させてもよろしいでしょうか?」

「ええ、かまわないわ。私もその事を侍女長に確認しましょうか?」

「ありがとうございます。ではまた後ほど」

「わかったわ」


ライラはそう言って一礼すると足早に立ち去った。

何かその侍女について気になることがあったのかしら?


エレナはライラを見送るとそのまま侍女長の元へと向かった。

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