第11話
「…えっと、それはどういうことでしょうか?」
「あくまでも選択肢の一つとして考えてほしいのだが、エレナ皇女が他国に視察にいくという前提でエクール国を離れた場合どうなるのか、見てみたくはないか?」
何も考えなくていいのならば見てみたい…とエレナは思う。
プロフィトの視察で2、3日開けただけでも、大変なことになったのに、エレナがエクール国を離れたらどういうふうになるのか、それは想像できそうにないが、
お父様やお姉さまの考えを変えるためには一度エレナは国を離れてもいいのかも考えが揺らぐ。
「あとエクールの国王は隠しているつもりだが、エクレオが体調不良ではなくこの王宮からいないということはもう知っているぞ」
「……気づいておられましたか…」
「ああ。エクレオが俺のことを外見しか見ておらず、それで婚約の話を進めたこともその後嫌っている事も知っている」
「そこまでご存じでしたか…」
なんということだ、ジャン王子はお姉さまのことを全て知っていたのだ。
それなのになぜ、怒らないのだろうか?婚約破棄を申し入れないのだろうか?
「ウォルフ国はエクール国との繋がりを持つためにその提案をのんだだけで、エクレオ本人にはさして興味はないからな」
婚姻後、浮気しようが自分の国に帰ろうがどうでもよかったんだそうだ。
関係的には冷え切っているが、それがジャン王子とお姉さまにとっては今まで何事もなかったみたいだ。
お姉さまはジャン王子を嫌っていて婚約破棄をしたいと思っている。
ジャン王子もこの婚約にはどうにも思っていないみたいだし、お姉さまが望めば婚約破棄できたと普通に言う。
なので実はお姉さまは失踪しなくても望みは叶い、ウォルフ国に迷惑がかかるということはなかったのだ。
このお姉さまの失踪によっての被害はウォルフ国の方々はさして問題になっていなく、むしろ好都合だったらしい。
「エレナ皇女がエクレオの失踪で一番大変だったんじゃないか?」
「……おっしゃる通りです」
ここまで気づいているのだからエレナはもう隠す必要もない。
姉が失踪してからというものの仕事は全部回ってくるようになり大変だったのだ。
ジャン王子はそれをわかってくれていたからこそ、エクール国の改革をしようと思い立ったみたいだ。
エレナと関わらなければ改革をしようだなんて思わなかっただろうし、むしろ姉がエクールに帰国したが最後、エクールに攻め入ってたかも知れないという。
しかし、エレナが最近ジャン王子と交流を持つようになりその考えは変わったそうなんだ。
エクールの国王はともかく、2番目に国の行く末を握っているのはエレナだ。
エレナがこの国で潰れてしまうのは惜しい人物だと言う。
「ウォルフ国に視察には俺の帰国と一緒に来てもらうことになるから、視察にいくのは数ヶ月後になると思う」
まだ時間はあるからゆっくりと考えていいと言っていた。
エレナはこの話を聞いた時、エレナの立場上他国に視察に行く事は難しいため願ってもいない提案だったけれど、国を放置していいのか揺れている状況である。
まだ時間はあるし、諸々な仕事の引き継ぎなどのこともあるのですぐに答えを出すのは難しい。
なにより自分が視察にいくよりもまず、お姉さまを探してからという考えもあったのだった。
「……エクレオの事が気になるのなら俺も探すのを協力しよう」
「……よろしいのですか?」
エレナにとってジャン王子のこの申し出は願ってもないことだった。
結局のところお姉さまが見つからない限りはジャン王子も動きにくいらしい。
このまま婚約をつづけるにしろ婚約を廃棄するにしろ本人と一度話し合いたいそうだ。
「ああ。エクレオが見つからないと今度の行動に支障がでるし、エレナ皇女をウォルフ国に連れていくのならなおさら本人と話し合う必要がある」
お姉さまはウォルフ国には行きたくないから私が視察に行くってなったら両手を上げて喜びそうだけれど、現婚約者に筋は通したいそうだ。
今後の事を考えたら有耶無耶にされてしまう前にエレナ達が見つけて、いっそ事膿を出してしまおうともいう
確かにお父様に先に見つけた場合の懸念事項もある。
それがあるからエレナは先に見つけて失踪して理由とこれからはちゃんと仕事をしてもらう事、ジャン王子とのことをケジメをつけてもらいたいと思っていたのだ。
「…ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
こうしてエレナはジャン王子と一緒にお姉さまを探す事になった。
それがもっと大変な事態になることなどこの時のエレナは想像していなかったのだ。
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