第5話

この教会は身寄りのない子どもたちを支援しているため、神父は隣の東屋にいる事が多い


しかし今日は中庭の方で子どもたちを遊ばせているためか彼は庭で花壇?というか畑の手入れをしていた


「おや?珍しいお客様ですね?」


中庭に入ってきた私達をみて神父が微笑みを浮かべながら言った


「こんにちは。神父さま」

「エレナ様。わざわざこちらまでご足労ありがとうございます」


神父さまをいち早く見つけたエレナが挨拶をすると神父さまは立ち上がり挨拶をかえしてくれた

そしてエレナの隣へと神父は目を向けると


「ウォルフ国のジャン皇子ですね?はじめまして私はここで教会と孤児院を運営していますアラン・スミシーといいます」

「よく、私のことがわかったな」

「教会ネットワークでウォルフ国の皆さんが王都にある孤児院を見て回っているというのを聞きまして、もしかしたらと」


街にはよく降りていると聞いていたが、何をやっているかまでは詳しく聞いていなかったエレナは神父の話を聞いて驚く


エレナでさえも王都の孤児院を周りきれていないのにジャン王子は短期間ですべてを回っているの!?


「そうか…。はじめましてだ神父。私はウォルフ国第一皇女のジャンだ。よろしく頼む」


エレナの驚きとは別にどんどん2人は話をしていく


「それで、何かごようですか?」

「ああ、ウォルフ国で孤児院を豊かにさせるために学んでいるんだ」

「そうですか…王都は全部回られたと聞きましたが何かお気づきになったことはありますか?」

「そうだな。王都でも管理している神父により特色が違う事がわかった」


話を聞いていてエレナはエクール国の皇女であるけど

神父様によって何を教えているのか、何に重点をおいているかなんて知らなかった…


視察には行っていたけどそこまでは調べたこと聞き込みしていなかったのでジャン王子の話を聞いて初耳の事が多く、彼の探究心に感銘を受けた


国を背負うということはこういうことなんだ…

エクレオお姉さまはジャン王子と結婚し、そしてうまくいかず戻ってくるかも知れない。それかジャン王子とは婚約破棄する可能性もあるけれど、いずれこの国を出て行く側だ


今は元気な父が亡くなった後はエレナに継承権があるし、これからは自分が引っ張っていかなければいけない立場なのでもっとしっかりしなければとエレナは身を引き締めた


エレナが覚悟を決めている間も神父とジャン王子は話を続けている

エレナは話にはついて行けそうにもないので、神父が栽培しているであろう畑に目を向けることにした


さっきジャン王子が教会の指針といっていたけど、この教会の特色はこの畑なのかしら?

王都の教会にも行ったことはあるが、こういった畑はどの教会にもなかった


畑には鈴なりにトマトやナスが実っていて食べ頃そうだ

エレナがじっと実った野菜を見ていると遊んでいた子ども達がワラワラと集まってきて


「お姉ちゃん、遊ぼう」


と声をかけてきた

エレナは2人の話を聞くのも大事なことだけど、今話に混じれないならわからないことは後で聞けばいいと子ども達と遊ぶことにする


「ええ。いいわよ」

「やったぁ、あのね!」


子ども達はエレナが承諾してくれた事が嬉しかったのか次々と要望を伝えてくる

鬼ごっこやら隠れんぼ、人形遊びなどなど皆んなバラバラでエレナは困ってしまった


「みんな一斉に言われては困ってしまうわ。それに全部遊ぶことはできないので、一つだけね?」


と子ども達に言い聞かせると納得して子ども達は相談をしはじめた

素直で可愛い子たちだわ

元気いっぱいで言っていることをちゃんと理解しているここの神父様がしっかりとした教育をしていることがよくわかるわ


「お姉ちゃん決まったよー」

「そう。何にするのかしら?」

「あのね。隠れんぼしよう!」

「ええ。いいわよ。隠れるのはこの中庭だけね」

「わかったー!じゃあ鬼きめよー」


とルールも決めてエレナと子ども達は鬼を決めた

鬼の決め方はじゃんけんで、負けた人が鬼なのだが、じゃんけんというものを初めてしたエレナはことごとく負けて鬼役になった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る