第2話

それからというものエレナは朝必ずジャン王子に会いに行き、何かすることがないか聞いてみてないようであれば、すぐに部屋から去って自分の仕事をするということがここ一週間のルーティーンとなった


お姉さまの分の仕事をしなくてはいけないため、エレナはいつもの2倍働かなければならず、もうヘロヘロだ


ジャン王子に仕事を頼まれなくてよかったわ…

これ以上の仕事をしていては身体がもたない


お姉さまはあまり仕事をしていなかったようで、期日が迫った書類が山ほどあった

今までお姉さまが仕事をしている姿は見たことなかったけど、これは酷すぎますわ!


エレナは姉であるエクレオの事は慕ってはいるが、仕事の事に関しては逆であった

いつも姉に仕事をしなくていいのか?と言っていることが主だったのである


ジャン王子の言い方は気に入らなかったし、腹が立ったけど逆にこちらを気遣ってくれたのではないか?

と気遣われて申し訳ないと同時に無愛想だから勘違いされやすいのではないかと思いはじめた


エクレオお姉さまが抱えていた仕事がひと段落ついた頃

ジャン王子と仕事を一緒にする事が多くなった


それはエクール国の風土であったり、特産品についてだったり、この国での暮らし方や風習など本を読んでも調べられる内容だが、本には書かれていない事、実際はどうなんだというような内容から雑談までさまざまな事を話した


まるで仕事がひと段落するのを待っていたかのように会話や仕事が進み、エレナが思っていた事は間違いないのではと思った


「今日はプロフィトに視察に向かいたいが、皇女はついてこれるか?」


プロフィトはこのエクール国の第二首都で王宮より馬車で1日走らせたところにある


「はい、大丈夫です」

「では、行こうか」


幸い自分の仕事はもう終わっていて2、3日王都を離れたところで問題はないのでエレナは了承をした

こうしてジャン王子とエレナ、ジャン王子の付き人は馬車に乗り、プロフィトへと向かった


私達を乗せた馬車はゆっくりと街を進んでいく

窓から見える景色はレンガや石畳みでできた街並みからしだいに畑が広まる景色になる

ところどころに木造建築がならび、どこか暖かみを感じた


平和だなぁ

皇族としていつまでもこういう風景を守っていきたいなぁ


そんなことを思いながら外の風景をみていると前に座っているジャン王子が話しかけてきた


「そういえば、エクレオ皇女の体調はどうだ?」

「…ええ、あまり思わしくないようでジャン様には迷惑かけますわ」

「そうか」


お姉さまが失踪したのを体調不良というていにして誤魔化してたのを忘れてたわ

でも、勘の鋭い方だからもしかしたら気づいてるかも…

だって今までエレナが忙しかったというのもあるけどジャン王子からお見舞いに行きたいという申し出もなかったもの

婚約者なのにその申し出がないのはおかしい…


エレナは誤魔化すために

「この国はどうですか?気に入ってくれましたか?」

と半年も過ごしているのにこの質問は遅いような気がするが聞いてみた


「ああ。とても過ごしやすく、素敵な国だな」

「ありがとうございます」

他国の人から褒められると嬉しくなる。社交辞令かもしれないけど表情から不便がなく過ごせていることを知り安心する


「これまで視察には何度か出かけられたのですか?」

「ああ、王都にはよく降りていた」

「そうなんですね、なんで今日はプロフィトへ?」

「王都だ栄えているのはあまり前だからな、他の街がどんなものなのか見てみないとわからないだろう?」

「それもそうですね」


ジャン王子は勤勉な方で、実際に自分の目でみて判断する人だった

こんな人が将来治めるであろうウォルフ国を見てみたいとエレナは思うのであった


「王都に行く際はお姉さまも連れてでたんですか?」

「いや連れて行ってない」

「!?」


エレナは自分がプロフィトへ誘われたから当然お姉さまも王都の視察には行っていたのだろうと思っていたから連れて行っていないと聞いてびっくりした


「エクレオ皇女は選民思考が強いからな、街に降りることすら嫌いそうだからな」

「そうでしたね…、いつか民の前に立つのだから諌めてはいるのですが…、なかなか…」


エレナにはいい姉なのだが、たびたび自己中心的対応をとる事があるエクレオは街への視察は行きたくないだろうな

街にもいいものいっぱいあるのに…お姉さまはたびたびわかってくれないことがある


話してみてジャン王子とお姉さまは考え方が逆でこの婚約は大丈夫なのかしら?

将来結婚してもながく続かなそう、2、3ヶ月で離婚というのもありえそうだ

とエレナは心配になった




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