25,貧民街/外道の巣・午後


「へえ。こりゃまた珍しいお客様だ」


 にやりと笑った男は、掴んでいた別の男の髪を無造作に放し、レギンとユーリアの二人へと対峙する。


「ふーん。女なのに銃使いガンマンなの。良いねえ、そそるねえ」


 値踏みするようにユーリアを見つめ、男は銃を持つ腕を上げた。


「!!」

「そんなにビビんなくて良いんだぜ? 今は撃たねえからさ」


 手にしていたのは────大口径の連発拳銃リボルバー


「何時もならボコって輪姦マワしてやる所だけど、正直俺、君の事好みタイプだからさ。それに免じて取引してやるよ。早撃ち勝負だ。こいつが床に落ちたら合図だぜ?」


 銃をくるくると回しながら、男はポケットから取り出した銀貨をユーリアに見せる。


「もしあんたが勝ったら、投降でも何でもしてやる。でももし俺が勝ったら、今晩、俺と寝てくれよ。悪くはしねえからさ」

「…………」


 ユーリアへ目配せしてみせる男に、レギンは目付きを一層鋭くする。その視線に気付いたのか、男は不機嫌そうに彼を睨んだ。


「あー。でもその前に一個、条件付けさせてもらおっか。

 おい、そこのテメエ。さっきから生意気ナマ言ったりガン飛ばしたり、何様のつもりだよ。俺、キレるとワケ分かんなくなっからさ。もし俺とその子の決闘に水なんて差したら、マジで頭撃っちゃうからね? これ以上イラつかせねえ方が身の為だぜ?」


 表情を緩めて息をつくレギンを目にし、男は得意気に笑う。


「分かったんならさっさと引っ込んでろ。ええ、腰抜けチキン童貞ボーイ君?」


 ────レギンのそれが、呆れや憐れみの類を表す表情であると、男はまだ知らない。


 男は手の中の銀貨を弄り、上へと弾くべく構えた。


「準備は良いかい、お嬢ちゃん。んじゃ──……」


 男が手から銀貨を弾き出そうとした、その瞬間。

 あろう事か、レギンが疾駆を始めた。


「な、テメ──……ッ!?」


 引き金を引かせる間も与えずに男の目の前へ辿り着いたレギンは、走った勢いのままに踏み込み、跳び上がる。


 そして、これでもかという勢いで男の顔面を蹴り飛ばした。


「おゴッ、はッ……!!?」


 鼻の骨が一撃でへし折れる程の力で蹴られ、男は背後の机を吹き飛ばしながら床へと倒れ込む。暫くして、男は鼻血の止まらない鼻を手で押さえ、ゆっくりと身体を起こした。


「やろ……ッ! 邪魔、しやがッ……!!」


 薄い笑みを浮かべ、レギンは正面から男に近付いて行く。


「ご自慢のオモチャは撃たねえのか。そりゃそうだ。今はテメエの世話するだけで精一杯なんだからな……!」

「うぐぁッ!!?」


 銃を構えようとしていた右腕をレギンに踏み付けられ、男は声を上げる。そこから更にレギンは追い打ちを掛けるように屈みながら前へ身を乗り出し、踵に体重を掛けた。


「邪魔しやがって、だ? ハ、誰がテメエみてえなチンピラ以下のクソなんざ真面に相手にするか。

 今すぐそっ首刎ね落としてやっても良かったんだが、命拾いしたな、お前。剣士が剣を忘れるとか、そうそう無え事だぜ?」


 レギンが男の腕を踏む力を強めようとした、その時。


「……何ボサッと見てんだテメエ等ァ!! 早くブッ殺せ!!」

「!! あ、ああ」


 男が叫ぶと同時に、呆然とやり取りを見ていた取り巻き達がすぐさま銃──中には霊力砲も混ざっている──をレギンへ向けて構える。


「チッ、集中砲火か……!」


 間髪を入れずに発砲が始まり、レギンは机を倒して陰へ隠れた。


「あいつ、机の裏に!」

「撃つな! 跳弾するぞ!」

「ならコイツで──……。ッ!?」


 一人の男が霊力砲の引き金に指を掛けるも、直後にその手へ只ならぬ衝撃を受け、霊力砲を取り落とす。


「撃たせませんよ」


 ユーリアの銃の先から、一筋の白煙が立ち昇る。一対多でレギンが標的となっているこの状況、彼女が黙って見ている筈も無いのであった。

 続け様に二人。ユーリアは正確な射撃を以て、男達の手から確実に銃を弾いていく。


「レギンさん、今です!」

「了解!」


 銃声が止んだ事を確認し、レギンは机の陰から躍り出た。


「ヒッ……!」


 低い姿勢で駆けて行き、レギンは足を竦めた男を一人、鳩尾を殴り込んで沈める。


「クソッ、あの女を人質に……!!」

「行かせねえよ?」


 そして落とした銃を拾い、レギンから逃げつつユーリアの方へ向かおうとした男二人の襟を後ろから掴み、自らの方へと引き寄せた。

 一人はそのまま投げて床へと叩き付け、尚銃口を向けて来たもう一人は、振り向き様に銃身を掴んでから顎を蹴り上げる。

 ばたりと男が倒れたのを最後に、その場から起き上がる者は居なかった。


 ふとレギンが横へ目を向けると、そこには弾痕まみれの机と剣の鞘のみが残されており、伸びていた筈の男の姿は何時の間にか消えていた。


「……逃げたな」


 小さく舌打ちをするレギンの元へ、ユーリアが駆け寄る。


「お疲れ様です。例の男ですけど、先程奥のドアへ入って行くのを確認しました。足を狙って何発か撃ったんですけど、思ったより逃げ足が速くて……。追いますか?」

「当然。でもその前に」


 レギンは床に突き刺さっている剣へと歩いて行き、その前に立つ。


「剥き出しの剣を持ち歩くワケにはいかねえが、鞘があるんなら話は別だ。有り難く頂戴して、とっととあの野郎をぶった斬りますかね」


 刀身を床から引き抜こうと彼が柄を握った、瞬間。


「退がって、レギンさん──────っ!!!」

「!?」


 ユーリアの叫びと同時に頭上からの射線を察知し、レギンはその場から飛び退く。

 乾いた銃声が三つ響き、弾の一つが床板に減り込んだ。


「……──ッ!!」


 周囲の状況を理解したレギンは、横倒しになった机の傍へ転がっている鞘を咄嗟に掴む。


「こっちです!」


 そしてユーリアの後を追うように、へと身を隠した。


っぶねー、マジで死ぬとこだったわ。大丈夫か、ユーリア?」

「私の事なんかよりレギンさん、腕が……!?」


 眼前の光景に、ユーリアは動揺を隠せない。それもその筈、彼女が今目にしているのは血塗れになったレギンの左腕であり、しかもその指先からは絶え間なく血が滴り落ちているのだ。


 左肩を右手で強く押さえながら、レギンは大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出した。


「いや、腕じゃなくて肩だ。がっつり穴開いたぜ、こりゃ。後、脚も。こっちは掠っただけだから、割と大した傷じゃねえけどな」


 とは言うものの、レギンが目を遣った右大腿部の銃創も、行き場を失った血液でてらてらと光って見える。

 丸く大きな穴が開き、吹き抜けとなった天井を仰いだレギンは、ハハ、と声を漏らした。


「抜けた天井を逆手に取って回廊ギャラリーとして使う、か。大した根性だ」


 目を閉じ、もう一度レギンが深呼吸した、直後。


「待ってくれ! ちゃんと中てただろ!」

「は? 俺さっき、あの野郎の頭ブチ抜けっつっただろ? 嘘く気か、お前?」

「え、で、でも!」

「外してんじゃねえぞ、このマヌケがよ!!」


 レギンとユーリアの頭上から、怒声と共に低い発砲音が響く。


「ったく。どいつもこいつも役立たずだったなあ、ええ?」


 一階で倒れ伏している三人を一発ずつ撃った音の主は、わざとらしく足音を立ててゆっくりと歩き始めた。


「おい、聞いてるか? 返事はしなくて良いぜ? 今からテメエの脳ミソブチ撒かしてやっからよ。震えて待っとけ」

「……何処まで行っても、クズはクズだな」


 ふう、と息をつき、レギンはユーリアに笑いかける。


「ユーリア。先に外へ出てろ」

「そんな!? いいえ、そんな事──……!」

「外の様子を見て来てくれねえか。

「! ……分かりました。すぐに戻ります」

「ああ」


 床の陰に隠れて音を消しつつ、男の足音を追うようにして戸口へと向かったユーリアは、レギンを一瞥してから外へと出て行った。

 傷を押さえていた右手の血を上着で拭い、レギンは足元の鞘を拾い上げる。


「しょうがねえ、付き合ってやる。テメエの大好きな一騎討ちだ」


 そう不敵に笑い、床の陰から姿を現した。


「ほーん、自分から出て来やがったか。そんなに死にてえか?」


 男は鞘を片手に自らを睨むレギンへ銃口を向け、引き金に指を掛ける、が。


「丁度良いや。そんじゃお望み通り、って、あら?」


 ユーリアの姿が見えない事に気付いたのか、男は引き金を引く指を止めた。


「おいおい、何処行っちゃったんだよ。あの子の前じゃなきゃ意味無えだろうが」


 きょろきょろと辺りを見回す男を、レギンは鼻で笑う。


「とっくに帰ったよ。女の子一人ロクに誘えんヘタレな男は好みじゃねえってさ。それに丁度良いだろ? サシで勝負しようぜ」

「野郎……!!」


 レギンの挑発に青筋を立てるも、直ぐに男は余裕の表情を浮かべた。


「ま、そうやって馬鹿にしてろや、ハハ。どうせどの道、今殺すんだからなァ!!」


 引き金が引かれた。相手は大口径の拳銃。人間の身体であれば、何処に中ってもまず無事では済まない。

 しかしレギンはそれを難無く躱し、そのまま大きく身体を捻って振り被る。


「こいつ、弾を避け──……!!?」

「せいッ!!」


 全力で投げられた鞘。

 それは凄まじい速度で真っ直ぐに飛んで行き、男の眉間へ激突した。


「あ、が────」


 男は意識を失い、その場に倒れる──事も出来ず、一階へと落下していく。

 どしゃ、と、鈍い音が建物に響いた。


「おーおー。また派手に落ちたな、こりゃ」


 言葉は暢気なレギンだが、その表情からは笑みが消えていた。




 貧民街/向かいの空き家・午後




「──────…………。ッ!?」

「動くな」


 目覚めた男は早々、ユーリアに銃を突きつけられる。


「警備隊が到着しています。今すぐ投降して下さい」

「……警備隊だあ? そんなモン来るワケ無えだろ」


 光の無い瞳に見下ろされた男は、掠れた声で笑い始めた。


「知ってるか? あいつ等、貧民街の連中を取り締まらねえんだぜ。治安も連中も最悪過ぎて、真面に相手してらんねえんだと」


 だから自分は捕まらない、とでも言わんばかりの笑みを浮かべる男だったが、ユーリアは表情一つ変えず、淡々と話し始める。


「ええ、知ってますよ。ですが『ギルド』が関与していれば話は別です」

「は……?」


 ユーリアの言葉に、男は呆然と口を開けた。


「『ギルド』と治安維持部隊は連携協定を結んでいます。その内容は、定められた条件下に限り『ギルド』は治安維持部隊が対応を困難とした犯罪者や犯罪集団、組織の無力化を、捕縛や排除の依頼として扱う事が可能になる、というものです。この協定の対象地域はシュダルトだと貧民街や南部の路地裏、それ以外だと全域に及びます。そして治安維持部隊の派生組織であるシュダルト警備隊にも、この協定は適応されます。


 確かに貴方の言う通り、シュダルト警備隊は貧民街で起こった犯罪には一切関与しません。言い換えればそれは、貧民街で起こる全ての犯罪は警備隊の手に余る、という事です。けど、依頼が完遂された際の事後処理であれば、警備隊は動いて下さいます。ご存知でしたか?」


 暫くして、男は目を見開いた。


「……おい。その言い方ってまさか、本当に?」


 ユーリアはきっと男を睨み付け、銃口をその額に強く押し当てた。


「ええ。貴方が散々罵っていたあの人レギンさんが全部やってくれたんです。ここへ来る前、警備隊に連中を捕まえるよう言ってくれ、これを見せれば動いてくれる筈だから、と依頼人さんに『ギルド』の受注許可証を渡していたんですよ。だから……」


 ユーリアは銃を下ろして一歩下がり、男の前から退く。そこに広がっていたのは、数人のシュダルト警備隊が銃や盾を構えている、男にとって絶望的な光景だった。


「最後の警告です。今すぐ投降して下さい」


 では私はここで、と警備隊の面々に頭を下げ、ユーリアはその場を歩いて出て行く。


「……終わったか?」

「はい、バッチリです! 報酬を貰って帰りましょう!」


 そして戸口のすぐ脇の壁へ背を預けて立っていたレギンに笑顔を見せ、警備隊が男を騒がしく拘束している空き家を、彼と共に去って行くのだった。




 敵勢ギルド拠点/医務室・夕方




 はああ、と、レギンの口から特大の溜息が漏れ出る。


「俺一応『敵勢ギルドここ』の主戦力だよ? 上からの射線に気付かないとか何、剣持ってないだけでこんなポンコツになるの、俺?」


 椅子の上で抱えた膝に顔をうずめているという中々に珍妙な格好の彼だが、その姿からは只ならぬ哀愁が漂っている。


「考え過ぎな気もするけどな。つかもう全部綿紗ガーゼ替え終わったんだから服着ろよ」

「うん……」


 ほぼ全裸──所謂、パンツ一丁──のレギンが、傍らに脱ぎ捨ててあったズボンを手に取り、何やら泣き言を呟きながら足を通そうとした、その時。


「すいません。絆創膏を一枚下さ、い──……」


 ユーリアが医務室に顔を出した、刹那。ぴし、と時が止まった。

 ズボンを履こうとしているとは言え、レギンは未だパンツ一丁のままである。


「ああああああああああ!!?」

「あっ、あの、ごめんなさい! 出直しますっ!」


 あたふたとユーリアがドアを離れ、医務室に静寂が戻った。

 叫ぶ合間、神憑り的な速さでエーティの背後へ隠れたレギンが、またも溜息をつく。


「……俺、多分今なら死ねるわ」

「あんたうるせえからもうさっさと服着て出てけよ」




 敵勢ギルド拠点/食堂・夕方




 皆が報告会も兼ねた夕食を摂っている頃。


「……──ってなワケで。あそこから順に、怪我人小、中、大って所だ」


 エーティが言い終わると同時に、リゼルが吹き出した。怪我人小、中、大とは勿論、順にシン、ラルフ、レギンの事である。


「ちょっとアンタ、小ってどういう意味よ。バカにしてんの? シメるわよ?」

「え? あんたはだって、小だろ。火傷っつったって大したモンじゃなかったし」

「……そうね。アンタはそういう男だったわ」


 青筋を立てていたシンが冷静になった、直後。


「────ふ、フフッ、アハハハハ!」


 堪えきれなくなったリゼルが、声を上げて笑い出した。


「違うって、エーティ。その小、中、大ってヤツ、身長順になっ──……」

「このッ、笑ってんじゃないわよ!!」

「ああ、言われてみれば確かに」

エーティアンタも納得するな!!」


 やいのやいのと騒ぎ立てている三人を、レギンが遠い目で見つめる。


「平和だ…………」


 何時もなら真っ先にリゼルの標的となる彼なのだが、今日に限って特にそういった事も無く、久々に落ち着いて夕食を食べられる、


「そう言えば兄さん、ユーリアにパンツ一丁のとこ見られたってホント?」


 筈も無かった。

 飲んでいた茶を危うく噴き出しそうになったレギンは、盛大に噎せながらリゼルを見る。


「やめなさいって、本人の目の前なんだぞ!?」

「あー、成程? だからあんな事を僕に言って来たのね、彼女」

「え?」


 まさか、と言わんばかりに、レギンはゆっくりとユーリアの方へ向く。


「私は大丈夫なんです。大丈夫なんですけど、その。レギンさんがまだ気にしてたらどうしようって思って、リゼルさんに相談したんです。だからあの、本当に、ごめんなさいっ!!」

「あー!! 待って! こんな下らねえ話で真剣に謝るのやめよ!? てかやめて、精神的にかなりこう、グサグサ来るから!!」

「良いじゃない、ユーリア。これをダシにしてレギンアイツから何か奢ってもらうなりしなさいよ」

「え!? そんな、良いですよ。申し訳無いですし──……」


「今日も元気ねえ、皆」

「うん! 楽しいのは良い事だよね!」

「…………」


 賑やかな食卓の片隅で、フェリーナが穏やかに笑う。彼女の隣ではハクアが揚げた魚をもりもりと頬張っており、一方前ではラルフが無愛想な表情のまま、騒ぐ皆を眺めていた。


 そして。


「ハクア! 今度兄さんが『ギルド』でユーリアとハクアにご飯奢ってくれるって!!」

「なッ!? そんな事言ってねえだろ!?」

「え!? 良いの!?」

「…………分かった、分かったから! ユーリアとハクアの分な!」

「良かったね、ユーリア!」

「はい。でも私なんかが、本当に良いんでしょうか……」

「良いのよ、こういうのは素直に喜んだモン勝ちなんだから」

「そ、そうなんですか?」


「…………」


 一瞬のうちに団欒だんらんの渦へ巻き込まれていったハクアを、ラルフは何となく見つめていた。


「ちょっとだけ優しい顔になったわね。ラルフ君」

「……は?」


 フェリーナに思わぬ事を言われ、ラルフは疑問の声を上げる。


「何だかゼドに似ている気がするわ。気の所為かしら、ふふっ」

「……?」


 フェリーナの言葉の意図を理解出来ず、ラルフは怪訝そうに眉を寄せるのだった。




 ギルド/ギルド長室・夜




 机の上へ置かれたランプに、暖かな光が灯っている。


「では早速、成果を報告してくれ。君」


 白い髭の男を前に、密偵である中年の男が一人、敬礼をした。


「は、報告します。帝国陸軍大佐、メイラ・エンティルグによる東方民族鎮圧の件ですが、既に作戦を終了し、中央政府へ帰還中との事です」

「やはりそうか。到着は何時になる?」

「明日の朝頃になるかと」

「……そうか」


 組んだ両手に顎を添え、男は中空を睨む。


「メイラ・エンティルグ。十年前、エレナ・ネバンダが政変クーデターに失敗して軍を去った後、その立ち位置を埋めるようにして現れた、帝国軍最強と謳われる女。まさか二月ふたつき掛かるとされた東方民族の鎮圧を一月ひとつき足らずで終わらせるとはな」


 うん、と唸った男は、目の前の密偵を見た。


「十八年前、革命軍は帝国に敗北した。我々の出番は完全に終わってしまったのだ。だが、我々は革命の機を完全に逃した訳ではない。

 ……『敵勢ギルド』。あれが帝国へ与する事をしない限り、我々の勝機は存在する。連中が帝国側あちらへ寝返るような事だけは、万が一にもあってはならん。

 君。これからも偵察に励むように」

「は、了解しました。では、失礼致します」


 密偵は再度男に向かって敬礼し、部屋から出て行った。

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