誰が子猫の風船を割ったのか？

2#野良犬探偵登場

　風船を膨らますのに悪戦苦闘した為の頬っぺたの痛みを堪えながら、振り向いた黒猫のくろたの先には、マズルが黒い茶色の雑種の野良犬が突っ立っていた。

　「このゴム風船、貸してみ。僕が膨らましてやるから。」

　雑種の野良犬は深く息を吸い込むと、黒猫のくろたに渡された赤い風船の吹き口をくわえて、

　ぷぅ～～～～～～～～～～～～！！

　ぷぅ～～～～～～～～～～～～！！

　ぷぅ～～～～～～～～～～～～！！

　ぷぅ～～～～～～～～～～～～！！

　と、息を吹き込んで大きく大きく大きく大きく赤い風船をパンパンに膨らませて爪で吹き口を縛って、ぽ～～～んと鼻先で突いた。

　突いた赤い風船は、フワフワとゆっくり地面におちて転がった。

　「ほーら。僕らの息で膨らませた風船はプカプカ浮かない。

　子猫ちゃんの割られた風船は、空気より軽いヘリウムガスを入れて膨らませたヘリウム風船だ。

　解る？そこの黒猫。」

　慌てて転がった風船を取りに行って戻ってきた黒猫のくろたは、慌てて会釈をした。

　「そこのワン公、俺が膨らませられない風船を意図も簡単に大きく膨らませちゃうなんて。惚れちゃうなあ・・・」

　ぷしゅーーーー！！ぶおおおおーーー！！

　「ゲホッ！ゲホッ！何でここで風船の口がほどけるんにゃ！！ゲホッ！ゲホッ！ケモノくせぇ！！」

　野良犬は振り向くと黒猫の頭にグイッと、前肢を乗せて、顔をピキッ！ピキッ！とひきつらしながら言い聞かせた。

　「あのねぇ。僕も君もケモノじゃん。

　それに僕は『ワン公』じゃないから。

　『ポワろー』だから。『ポワろー』。

　解る？『ポワろー』だからな・・・」

　「すいませんニャ・・・」

　冷や汗の黒猫のくろたは、萎んだ赤い風船を畳んで片脚の小脇にしのばながら平謝りした。

　「さてと、申し遅れた。僕は自称この街の名探偵『ポワろー』だ。」

　・・・今さっき申したじゃん・・・

　「さっそく、君の大事なヘリウム風船を割った犯人を突き止める為に、その割れた風船の匂いをかがせて貰うわん。」

　白い子猫は、両肉球で大事に包み込んでいた割れた赤い風船を恐る恐る犬のポワろーの鼻にベチャッ！！と押し付けた。

　「ふがっ！ふがっ！」

　「ご、ごめんにゃ・・・あ、あたし、い、犬が苦手なの･・・」

　と、突然割れた風船の１部が犬のポワろーの息でぷくーっと膨れた。

　「うにゃーーっ！！」

　白い子猫は慌てて卒倒して逃げた。

　「ビビらせてご、ごめん子猫ちゃん。それにしてもこのゴム風船・・・縮んでなかなか読めないけど『開店セール』の字・・・見覚えあるぞ？

　そして、嗅ぎ覚えのある微かな匂い・・・」

　犬のポワろーは鼻を空に突き上げてクンカクンカと匂いを嗅ぐと、地面に鼻を押し付けてクンカクンカと地面の匂いを嗅ぎまわり、黒猫のくろたと白い子猫もその後をついていった。