誰が子猫の風船を割ったのか?
アほリ
1#割れた風船
ぱぁーーーーーーーん!!
野良猫達が住み着く街角じゅうに、ゴム風船が割れる破裂音が轟いた。
「うにゃーーーーーーーー!!あたしの風船が割れちゃったーーーーーー!!」
白い雌の子猫が、大粒の涙を流して大声で割れた赤い風船の破片を抱えて泣き叫んだ。
「割れちゃたーーーーーー!!割れちゃたーーーーーー!!誰があたしの風船割ったのーーーーー!!」
子猫の滝のように流れる涙で抱えた割れた風船はビショビショに濡らし、更にボルテージをあげて大声で泣きわめいた。
「あーーーーーーー!!煩いニャーーーーーー!!」
「風船は割れるのは当たり前のことじゃないんけ?!」
「風船が割れたのは、君の不注意だよ!!自業自得じゃん?!」
余りの大きな泣き声で煩さそうに耳を塞ぐ周りの野良猫達は、口々に割れた風船を抱えて泣きじゃくる白い子猫に文句を言いはなった。
「なに言ってるんだよ?!みんな!!子猫ちゃんが隣街まで延々と危険を承知で歩き続けて、やっと人間に貰えた大切な赤い風船なんだよ?!
お前達には風船には興味無いから、他猫の事なんかどうでもいいから、そんな酷い事を言ってるんだろうけどね!!
子猫ちゃんには憧れの、ずっと憧れていた風船なんだよ?!」
正義感の強い黒猫のくろたはしゃくり上げている白い子猫を宥めながら、子猫をからかっていた野良猫達に言い聞かせた。
「はーい」
「しゃーせーん。」
「わかりましたぁーー!!」
「反省してまぁーーーす。」
野良猫は皆しゅんとした。
「反省だけなら、サルでも出来るっと。
で、ねぇ子猫ちゃん。風船なら俺があげるぜ。ちょっと待ちな。」
黒猫のくろたはそういうと、ひょいっと塀をよじ登ってその場を去ったと思うと、今度は萎んだ赤いゴム風船を咥えて持って子猫の元に戻ってきた。
「よーし!俺が割れた風船の代わりの風船を作るからなぁ!!」
黒猫のくろたはそういうと思いっきり息を深く深く深ーーく吸い込むと、萎んだ赤いゴム風船の吹き口をくわえて頬っぺたを孕ませてゴム風船に吐息を渾身の力を込めて吹き込み始めた。
ぷぅ~~~~~~~~~~!!
ぷぅ~~~~~~~~~~!!
ぷぅ・・・ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!!
「ぜぇ~~~~!!ぜぇ~~~~~!!なかなかゴムが固くて風船がふくらまねぇーーー!!もう一度!!」
黒猫のくろたは、また深く深ーーく息を吸い込むとまた萎んだ赤いゴム風船を口で膨らまそうとした。
ぷぅ~~~~~~~~~~!!
ぷぅ~~~~~~~~~~!!
「あっ!!やっとちょっと膨らんだ!!」
「あーあ。黒猫が膨らまない風船と格闘して顔が浮腫み過ぎて赤猫になってるよぉー。」
「な、なんだおめえは!?い、犬?!」
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