第十二話 二つの前線
ひとまず、ソフィアさんと共に街に降りることにします。街で1番大きい屋敷の裏手に行きましょうかね?ソフィアさんによるとそこが領主…モルベア辺境伯の屋敷らしいので。
……街に降りてから分かりましたが、冒険者と思われる装いの人が多く見られますね。それも全員慌ただしく動いています。
……阻害結界はもう必要無さそうですかね?
「ソフィアさん、魔法を解除してもいい良いでしょうか?」
「…大丈夫。ここからは私が対応する。」
ソフィアさんがそう言うので魔法を解除します。
魔法を解除するとソフィアさんが近くの冒険者に話しかけに行きました。
…私は取り敢えず様子を見ましょうかね。
暫くその冒険者とやり取りをした後、ソフィアさんは険しい様子でこちらに戻ってきます。
「フレニカ、まずいことが起きてるらしい。」
「…一体どうしたんですか?」
ソフィアさんはその様子から分かるように声を低くして話し始めた。
「……私達が来た方向で、不自然な程魔物が多かった理由…それは、魔物を指揮する知能を持つ「大災害級」の魔物が現れたかららしい。」
「大災害級というと…unknownの冒険者によって倒すことの出来る魔物、でしたか?」
「その認識で合ってる。が、タイミングが悪い…普段ならSランク数人とunknownが出てきて倒すけど、今回は聖国軍に挟まれている…それに、聖国が戦争を仕掛けてきた件で何かきな臭い話も出てきた…」
…さて、どうするべきでしょうかね…
話を聞く限りではunknownの方…一国に一人は居るらしいのでその方に対処して貰えば、と思うのですが、そうも行かなそうですねぇ…
ソフィアさんの反応があまり良くない事から察するに、戦争中と言うのがまずいんですね…
確か、unknownの方はその力が強大過ぎるあまり
一国の王様と同じ権力があるんでしたっけ…?
多分、大国を滅ぼす程の魔物と戦える力を持つのに国に居ては戦争に使われるといけない、だから王様と同じ程の権力を渡し、国や人同士の争いに関与してはいけない…
みたいな感じですかね?だから、戦争中だと近くにも近ずけないという事でしょうか?
……しかも、ソフィアさんがサラッと不穏な事言いましたね、聖国できな臭い話とかもう…
取り敢えず、聖国軍と「大災害級」の魔物、2つに対処しなければ行けないのですか…
……大分キツイですが、行けますかね…?
いいや面倒くさい、突っ込めばいいか。今更だけど私はお嬢様の使用人だぞ、なんで戦争に来てるんだ。さっさと終わらせて帰りましょう…
取り敢えずソフィアさんに話してから行こうかな。
「ソフィアさん、今回現れた大災害級の魔物について、何か聞いてませんか?」
「……それを聞くって事は、まさかフレニカは…」
「はい。まぁ、私達が来た方向ということは姉様達も居ますし、どちらにしろ対処しなければならないので。」
「……分かった。だけど、少しでもまずいと思ったら直ぐに帰ってきて欲しい。」
「もちろんですよ。」
「じゃあ、魔物の情報だけど…今回現れたのは熊の魔物らしい。魔法だったりとか特殊な行動は一切無い。でも、その魔力量が尋常じゃない程多くて、剣や魔法がまともに入らない…純粋に強いらしい。」
「なるほど…ありがとうございます。それでは、行ってきますね。あと、依頼の本命…聖国軍の方は、任せました。」
「……分かった。モルベア辺境伯には私から話を通しておく。また後で…」
ソフィアさんの言葉を最後に、「空間系統」の魔法2つを使って街から出ます。
さてと…姉様達が心配なのもありますが…こちらへ来る時お嬢様が心配していましたし、早く終わらせて帰りましょうかね。
_______________________
「……という事です。私たちは聖国軍に集中した方が良いと思います。」
「承知した。ソフィア殿、駆け付けてくれたことに感謝する。」
フレニカを見送った私は、モルベア辺境伯に報告をする為に屋敷へと訪ねていた。
一先ず私とフレニカで先に来たが、フレニカは大災害級の魔物を相手する為に行ってしまった。
……あのまま見送って良かったのか…試験の時の様子から見ても彼女は私より強いだろう。
だが、それでも…それでも心配になってしまう。
……彼女に何かあったら…彼女は、出会ってあまり経ってないが、唯一素の私を見せられる人物だと、そう思えた。
彼女の前でだけは、普段他人に見せない性格も出せた。…昔嗅いだことのある、落ち着く香りを纏った彼女……彼女が無事戻ったら、私の本音を話しみても良いだろうか…?
……兎にも角にも、彼女から任せられてしまったからには、聖国軍にしっかり対処しなければ。
_______________________
「あら、そっちは大丈夫かしら?」
「ちょっとまずいです…」
私たちは今、目的である辺境伯領まで、残り徒歩数十分という所まできたの。だけれど、とっても沢山の魔物が居たわ。魔法で数体纏めて倒しても減った様子が見えないし…
一体一体はそこまで強くないのだけれど、普段からすると数が異常ね。それにこの光景、どこかで見た覚えがあるのだけれど…
それよりも、先に行ったフレニカちゃん達は大丈夫かしら?まぁフレニカちゃんなら大丈夫だと思うけど…あの時の群れをほぼ1人で倒しきったんだし…
……あら?そういえば、この光景は『群れ』と同じね。まぁあの時と比べると1つ…2つはランクが落ちるかしら?
っと、そろそろ一緒に来た彼らが危なそうだわ。
エルバートさんは沢山の盾を魔法で出して何とか耐えているわね。
でも、イースさんは避けるので精一杯見たいね。さっきから切り傷を付けた魔物が倒れるから毒を使っているのだろうけれど…
あまりに数が多すぎて変わらないわね。
仕方無いわね。ここら一帯を魔法で…は彼らに当てそうだから辞めておいて…うーん。あまり使いたく無いけれど、使うしかないかしらね…
「お二人さん、1回こっちまで下がって下さい。」
「イルミナさん…なにか!策があるのかな!」
「そういうことです。早く後ろへ。」
「分かり…ました!」
「…!」
二人に呼びかけて準備をする。
はぁ、あまり人に見られたく無かったけれど…ね。
そうして私は自分に掛けていた魔法を解いていく。
魔物を殲滅するだけなら、足と手だけで良いかしらね…
さっきまで人の身だった私の手足が、元の体に戻っていく。鋭い爪が生え、腕と足は灰色の毛に多い尽くされる。
人の身では、動きなれてないもの。でも、手足だけでも戻ったら、十分でしょ?
そうして、2人が後ろに来るのを確認してから私は動き出す。次の瞬間、目の前に居た数十匹の魔物が纏めて切り裂かれた…
「ふふっ、私もかつては『群れ』の主だったのよ?それ以下の『群れ』なんて、大した強さじゃないわよね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます