第十話 道中にて

そうして街から少し離れた所でエルバートさんが口を開いた。


「皆さん、ここから目的地まで今の徒歩のペースでは、休憩などを取らなかったとしても1日掛かります。ですが昨日時点での情報では、既に聖国との境界にある草原に拠点が築かれているようです。」


ふむ。既に拠点が出来ているのですか…

つまり、いつ開戦してもおかしくないということ。今このタイミングでそれを話したという事は、これから彼が話すのは恐らく…


「そこで、足に自信のある人には先行して領に行って欲しい。引き受けてくれる人は居ますか?」


…やっぱり、そういう事ですね。

んー…走るのはともかく、今の自分の体力がどの位あるのか分からないんですよね…


徒歩で丸一日という事は休み無く走ったとしても…6時間程ですか。それに加えて多少の悪路を想定しても、半日ですかね…それなら、引き受けましょうかね。


「では、私が向かいます。」

「私も一緒に行きましょう。」


私が声を上げたところでソフィアさんも声をあげた。確かに、彼女なら獣人だし、多少の悪路があろうと関係無く向かえるだろう。


「『豪嵐』さん、『創剣』さん…すまない。では、先に向かって下さい。」


その言葉を聞き、ソフィアさんと共に一行から離れる。…ソフィアさん、足速いな。

そんな事を考えながらぼーっとソフィアさんの方を見ていると…


「どうした?何かあったか?」


と、そう話しかけてきた。…そういえば、ソフィアさんって2人の時と他の人と居る時で口調が大分変わりますね…聞いてみますか。


「いえ、ソフィアさんって、2人の時とそれ以外の口調が変わるなと…そう思いまして。」

「なんだ、そんなことか。」


私の疑問に対してソフィアさんはすぐに答えてくれた。


「素の自分を見せれる奴って、案外少ないんだ。

だから、信頼出来る奴以外の人目がある場所では丁寧な人を演じてるんだ。」


なるほど?つまり、私は初対面で信頼に値すると認められたってことですか…それにしても、初対面の時はもっと子供っぽかった気がするんですが…


そんな私の考えを見通したのかまたソフィアさんが話し始める。


「もしかして、初対面の時の事を考えてるのか?

あれはさ、ちょっとテンションが上がってたんだ。懐かしい匂いがしたから。」

「…匂い?」


私ってそんなに匂いするんですか…?

ソフィアさんの言葉に若干ショックを受けているとソフィアさんはまた話し始めた。


「私、獣人だから鼻が良いんだ。それで、ここからは自分の身の上話になるけど…私の家族って、居ないんだ。そんな時少しだけ…本当に少しでも、心の支えになった人、その人と同じ匂いがお前からしたんだ。」


あー、そういう事ですか…やっぱりこの前考えたのは合ってたんですね…という事はやはり疑問が残るのは、この少女が何故あの時からずっと生きているのか…


いえ、エクレシアの件があるので一概にどうとは言えませんが…私が心の中で色々と考えていると、

前方から魔物の気配が現れた。それと同時に、


「右前方、狼の群れ、約10匹。戦闘は最低限に突破。」


と、ソフィアさんは短く要件だけを告げてその手に魔法を纏っていた。…取り敢えず、私も剣を作っておきますか。


そうして構えた直後に狼の群れが見え始める。

最低限の戦闘で行くなら…二匹は倒さないとですか…まず一匹を剣術で倒す…『グリフィア流剣術・二ノ剣 国守剣くにもりのつるぎ』次、『無系統魔法・強撃きょうげき


……目の前の二体を倒してそのまま群れを通り過ぎます。ふぅ、取り敢えず過ぎれましたけどソフィアさんは…大丈夫ですね。ソフィアさんと目を合わせて先へと進みます。


……なんか、嫌な予感がしてきました。早く行った方が良さそうですね…

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