第八話 出発前の空いた時間に

そうして私は屋敷から出てきた。

門の前には既に準備を終えた姉様が居た。その姿はいつものメイド服とは違い、灰色をベースに所々白い模様が入ったローブを着ている。


それに比べて私は…あ、またメイド服のまま来てしまった……まぁ、昨日貰った2つ名にメイドって入ってるし大丈夫かなぁ…?

取り敢えず姉様に声を掛ける。


「お待たせ致しました姉様。では向かいましょうか。」

「あら、フレニカちゃん。まだ時間には早いけど、もっとゆっくりしてても大丈夫だったのよ?」


「いえ。早めに着くに越したことはないので。」

「それもそうね。それより、どう?このローブ。似合ってるかしら?」


姉様と会話をしていると突然そう問いかけてきた。似合っているか、ですか…私にそんな事聞かれても、服装とか詳しくないですし…うーん。

まぁ、似合って居るでしょうか。

素直な感想を言いましょう。


「…はい。姉様の印象にも合っていて、とても良いと思いますよ。」

「あらそう!ありがとう。それじゃあ行きましょうか。」


どうやら正解だったらしい。まぁ、取り敢えずギルドへ行かなければ。そういえば、ギルドには姉様を連れていくことを言っていませんでしたね…

早めに出発して正解でしたか。

_______________________


ギルドへと着いたが、既にエルバートさんが待っていた。早めに来たと思ったのですけどね…この人早すぎません?


「ん?こんにちは、【創剣のメイド】さん。まだ出発には時間があるけど、早いね?」


この人の方が早く居ましたよね?嫌味ですかね?

……まぁ、素で言ってそうですね。会ってから間もないですがそういう人な予感がします…

取り敢えず、この人にだけでも姉様の事を説明しておきますか。


「はい。少し早めに来ました。それと、今回の依頼に同行させたい者が居るので説明が必要かと思いまして。こちら、私の姉のイルミナです。姉様、こちら、Sランク冒険者のエルバートさんです。」


「はじめまして。【純蜃の盾】の二つ名を持つ、エルバート・ルベリアと申します。よろしくお願いします。」


「あらあら、はじめまして。私はフレニカちゃんの姉のイルミナです。基本フレニカちゃんと一緒に居ると思うわ。」


「なるほど…ところでイルミナさん、今回の依頼、危険度が大分高いのですが、貴女のランクをお聞きしても?」


エルバートさんがそう問いかけたのを聞いて私は、焦っていた…そう、完全に失念していた。


態々二つ名持ちのSランクであるエルバートさんやソフィアさんに話が行っているのだから、ランク制限が高くてもおかしくない…


いや、ギルドマスターが条件を話していたか?

確か二つ名持ち、もしくはAランク以上だった気が…姉様はAランクと言っていたし大丈夫か。

取り敢えず安心した……


そこまで考えたところで姉様とエルバートさんの会話は進んでいく。


「私のランク?えっとね〜この前Aランクになったの。これがギルド証よ。」


「…失礼しました。確認出来ました。今回の依頼の条件を満たしているみたいです。それにしても…姉妹揃って短期間で高ランク冒険者になるとは…驚きですね…」


「うふふ。フレニカちゃんは凄いでしょ。」


なんか、話の流れが変わりそうなのですが…

姉様の一言から何故か私の話題に変わっていき、2人の話はそのまま続いていった…


ん?あれは、ソフィアさんと…受付嬢さん、か?

ソフィアさんの隣には見慣れない服装の受付嬢さんと思われる姿があった。


その姿はまるでこれから戦闘に行くみたいで…え?もしかして着いてくる?受付嬢では?

私の頭の中が混乱しているとこちらへ来た2人が話しかけてくる。


「フレニカさん、こんにちは。」

「はい、こんにちは…あの、ソフィアさん、そちらの方は?」


「こんにちは、初めましてでは無いですよ。フレニカさん。ギルドでは必ず会っているではないですか。」

「……やっぱり、受付嬢さん?」


「はい、ロゼリアと申します。受付嬢になる前は一応、元Sランク冒険者をしていました。」


やっぱり…ソフィアさんの隣に居たのは受付嬢さんだった。というか、エルバートさんが二つ名を読んでいることから薄々感ずいてたけど、Sランクだったのか…


ていうか、あれ?受付嬢さんの名前何気に初めて聞きましたが?受付嬢さんとしか呼ばないから全く気にしてませんでした…これから、ロゼリアさんと呼ばせてもらおうかな。


私が色々考えていると、ソフィアさんが問いかけてきた。


「所でフレニカさん、あちらのエルバートさんと話している女性は?」

「あぁ、あの人は私の姉です。今回の依頼を手伝って貰うために私が呼びました。姉様!」


ソフィアさんの質問は私の姉様の事だった。私が連れてきたから知らないのだろう。取り敢えず、紹介する為に姉様を呼ぶ。


「何かしら?フレニカちゃん。」

「姉様、こちらソフィアさんとロゼリアさんです。お二人共、今回の依頼に同行する方です。」


「あら、そう。初めまして、フレニカちゃんの姉のイルミナよ。宜しくね。」

「これはどうも。私はソフィア・レイエスと申します。今回は宜しくお願い致します。」


「…あの、イルミナさん。1つ確認したいのですが…」

「あら、ええと、ロゼリアさん?何でも聞いて頂戴。」


「では、ギルド証を拝見させて頂いてよろしいでしょうか?」

「ええ、勿論。これで良いかしら?」


「……はい、失礼しました。」


その会話を聞いて私は思っていた。もしかして、

ギルドマスターが来たらこの流れもう1回やることになる?そんな依頼とは関係ない心配をしながら、私は出発の時間を待つのだった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る