第七話 お嬢様の帰還と準備

という訳で屋敷に帰って来ましたよっと。

さてさて、姉様はどちらに居るのかと…

良かった、今度は魔力反応が屋敷の中にあります。

今は、何処に…?私の部屋にいますね?なにしてらっしゃるのかしら…


という訳で自室の前へと来たのですが…あー、やっぱり部屋の中に居ますね。取り敢えず扉開けましょうか。


という訳で扉を開くと…私のベッドで寝る姉様の姿がそこにはあった。

何故に?しかもぐっすり寝ていらっしゃる…

うーん…起こすのも忍びないのでそのまま扉を閉めて退散する。


何をしようか…取り敢えず屋敷の掃除とか付与魔法の確認でもしておきますかね〜。

という訳で屋敷内を歩き回る。探知魔法だけでは分からない目に見える物とかあるかもしれないですし。


そんなこんなで暫く過ごしていると、突然街の付近にお嬢様とエクレシアの魔力反応が現れた。

…は?馬車の移動では?魔力反応の表れ方があまりに突然過ぎて固まってしまった。


しかも魔力反応がこの屋敷の報告へ向かって来ている。これは…何かあったか?

そうして屋敷の前まで魔力反応が来たので取り敢えず迎えに出る。


屋敷の前へ行くと、そこには馬車に乗って出た筈の2人が徒歩で帰ってきていた。やっぱり緊急事態ですかね〜……


「フレニカ!緊急の話があります。」


こちらに気付いたお嬢様が話しかけてきます。

その様子は大分焦っていて急いで帰ってきた事が伺えます。

隣のエクレシアも深刻な表情をしている事から余程の事なのでしょうね。


「実は、この国と聖国との境界線であるモルベア辺境伯の領地に対して、聖国が本格的に侵攻を始めたのです。そして、現Sランク冒険者二名を相手にした試験で勝利してSランクへとなった貴方を派遣して欲しいと、モルベア辺境伯本人から要請を受けました……フレニカ、受けてくれますか…?」


……とても聞き覚えのあるお話ですね。

具体的には先程。モルベア辺境伯領に行くというのは聞いていましたが辺境伯領の何処に行くのか聞いてないんですよね。


だからお嬢様の許可必要だとおもっていたのですが……一応、お嬢様にも依頼の話をして受けるという話をするか。


「お嬢様、実は先程冒険者ギルドから同じく、モルベア辺境伯領の防衛依頼を受けました。ですので、お嬢様の許可さえあれば向かわせて頂きます。」


「フレニカ、受けてくれるという事ですか…?」

「はい。それと、姉様と共に向かわせて頂けたらと思います。」


良かった。お嬢様の許可が出たからこれで場所が何処だろうと関係無く行ける。

丁度良いし姉様と話してた件もこれで済ませようと思い話してみたけどそれも了承されましたし。


「…えぇ、お願いします。」

「うん。フレニカが受けてくれて助かったよ。君は知ってると思うが、王城や王都の防衛で…私は出れないからね。」


そういえば、エクレシアが出れたらそれで解決するのか。まぁ、少し言葉を濁した所から昔のアレを今も使っているのだろう。だから戦争には王都の防衛という間接的なものにしか関われないのだろうな。


「それではお嬢様、冒険者ギルドの依頼では明日他の冒険者と共に向かう事になっていますので、準備に向かわせて頂きます。」

「はい。…フレニカ、モルベア辺境伯領が破られたら、王都との間にある領地では対処出来ないでしょう…お願いします。」


お嬢様のその言葉を背に受けながら自室へと向かう。まさか時代が移って尚戦争に参加する事になるとは、ですが、今回は防衛への参加で良かったですね。侵攻するのは、あまり好ましく無いですから…

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「…フレニカが受けてくれて助かりました。今回は他にも数名のSランク冒険者が参加するとの事なので安心でしょうか……」


「そうだね…エレネス嬢、もしかしてフレニカの事が心配かい?」

「…はい。彼女と出会ってまだ一月程しか経っていませんが、彼女には既に返せない程の恩を受けています。まだ、何も返せていない……」


「……そうだね。エレネス嬢、フレニカなら心配する事は無いよ。幸い今回は防衛依頼だ。攻勢の依頼ならまだしも、防衛なら怪我一つ無く帰還する筈さ。」

「そうですか…彼女に、何もありませんように…」

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という訳で自室の前へと戻ってきて部屋の扉を開けました。


「そういえば寝てましたね……」


私のベッドには先程見た光景が広がっていた。

姉様が未だに私のベッドに寝ているのだ。

だが、起こさなければならない。


お嬢様に姉様も一緒に連れていくという話をしてしまったので話を通さなければ行けないのだ。

取り敢えず声を掛けてみるか…


「姉様、起きて下さい。話があります。」

「…?お話があるの?話してちょうだい。」


この人、軽く声を掛けただけで起きた。昔狼だった時の習性だろうか…しかし起きただけで一向にベッドから出ようとしない。

……まぁ、良いか。取り敢えず話をしよう。


「姉様、明日の正午に一緒にギルドへと行って貰えますか?少し、遠出しなければ行けない依頼が来たので、手伝って貰いたいのですが。」

「……良いわよ。内容を教えて頂戴。」


この人了承が早いな…まぁ、話が早いに越したことはない。ギルドでされた説明にお嬢様の話を加えた物を伝える。


「……戦争ね、あまり気は乗らないけど…防衛依頼なだけ良いわね。」

「姉様も同じ意見ですか。」

「えぇ、貴女なら…ね?分かるでしょう?」


まぁ姉様の言いたいことは分かる。実際、私は昔の戦争で人を殺さ無いように戦っていた。人に限らず、動物もだが…

だからこそ、防衛という依頼は有難いのだ。


「それと、姉様。前に話していたパーティを組む件、それも今回で済ませてしまいましょう。」


そう、前に話していた冒険者パーティを組むという件だ。前回は姉様のランクと私のランクが離れすぎていて組むメリットよりデメリットが目立っていたが、姉様なら今頃高ランクになっているだろうから関係無いだろう。


「あぁ、あの件ね!安心して、私もAランクになったから。安心して組めるわよ!」


……なんか、唐突にテンションが高くなりましたね。まぁ、取り敢えず話したいことは終わったので部屋から出ていきます。


………あれ?ここが私の部屋じゃん?………

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あの後、色々と準備を終えて翌日の正午より少し前になりました。少し早めにギルドへ向かいますか。と、その前に姉様に声かけとお嬢様へ報告を…


ん、姉様は既に屋敷の門の前に居ますね。

では先にお嬢様に報告をしてきますか。

いつも通り執務室におりますねー……

とりあえず扉をノックして声を掛けます。


「失礼します。お嬢様、出発前のご報告に参りました。」

「…はい。フレニカですね。入って下さい。」


そして執務室へと入る。お嬢様はいつもと同じように書類に目を通したり書き留めたりしていた。

取り敢えず、報告を始めますか。


「ただ今より、私と姉様の二名はモルベア辺境伯領の防衛依頼の為に出発致します。それに伴い、屋敷の管理をする者が居なくなる為、屋敷全体へ「時空系統」の「固定魔法」及び「付与系統」の「強化」魔法を掛けました。」


……?なんか、お嬢様が何か言いたそうにこちらを見ている。何かしましたっけ?まぁ気にせず報告を続ける。


「そして、屋敷全体に長期間持つよう「生活系統」の「清浄クリーン魔法」を掛けました。そして、最後に食堂にお嬢様の食事を作り置きしてあります。全ての料理は「時空系統」の「状態保存魔法」と「生活系統」の「保熱魔法」を掛けております。」


……?お嬢様が頭を抱え始めたぞ。何かあったか?


「報告が終了しましたのでお嬢様の許可が下りれば直ぐにでも出発させて頂きます。」

「そうですね…貴女はそういう人でしたね、えぇ。」


お嬢様がそう1人呟く。はて、何かしただろうか?まぁ、取り敢えず報告を終えたので許可が出るのを待つ。


「……色々と言いたいことは有りますが、後で良いでしょう。命令です。フレニカ、絶対に帰還しなさい。」


「…承りました。」

「良いでしょう。出発を許可します。」


私は一礼をして執務室を出る。

しかし、お嬢様による初の命令が絶対に帰還する事とは……

…絶対に、帰って来る。私はそう決めました。

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