第六話 モルベア辺境伯領防衛依頼
さてと、ギルドの会議室へと案内されたので中に入ったのですが……ですよねー。
中にはギルドマスターに加えて先日会ったSランク冒険者、エルバートさんとソフィアさん…【純蜃の盾】と【豪嵐の銀猫】が一緒に居ました。
「失礼します。お呼びとの事で参りましたが、Sランクのお2人も揃ってとなると…大事ですよね?」
「あぁ、大事だ。突然呼んで済まないとは思うが、この国に住んでいる以上無視出来ない話だからな。」
「成程…早速ですが内容を聞いても?」
「勿論だ。まず、この国及び公国、帝国はクラジニフィア聖国によって宣戦布告されているのは知っているな?」
これは…確か街に入ろうとして衛兵さんに捕まった時に話を聞いた気がする。
知っていると思うので肯定の意味を兼ねて頷く。
「そうか。今回の話はそれに関係しているんだが…モルベア辺境伯領に、聖国が本格的に侵攻してきたらしい。ギルドは基本国には干渉しないんだが…聖国相手だと話が変わってきてな…シルファール王国王都本部であるこのギルドからも所属する高ランク冒険者に依頼を出しているんだ。」
成程…ん?ていうかここってただの街じゃ無くて王都だったんだ。でもこの街に来た時城みたいなものは見えなかったと思うのだけど…?
そういえば、この国の騎士さんか誰かが困った時は王城の詰め所にどうとか言ってたな……
って、そうじゃなくて聖国の話だった。
城については後で調べよう。
取り敢えず、今回の依頼は聖国との戦争かな?聞いてみるか。
「つまり、今回の依頼は聖国と戦う事ですか?」
「そういう事だ。一応、今回は聖国の主力が総出するとの事で、2つ名持ち、もしくはAランク以上の条件を満たす者に声を掛けている。受けてくれるか?」
やっぱり戦争ですか、それに相手の主力が総出とは……今の時代の戦力を見てみたいですし、受けましょうかね…?
それに、戦争ということはいずれここまで侵攻してくるでしょうし。
「…分かりました。依頼を受けさせて頂きます。」
「そうか!助かる…一応ここにいる2人も依頼を受けてくれたから、2人と一緒に街から出発して貰う事になる。」
「かしこまりました。それでは、ソフィアさん、エルバートさん、よろしくお願いします。」
「はい。よろしくお願いします。」
「私も、よろしくお願いしますね、【創剣のメイド】さん。」
…ん?そうけんのメイド?
「すみません、そうけんのメイドとは一体…?」
「あれ?聞いて無かった?模擬戦の時に剣を作って戦ってたからそういう二つ名が付いたんだけど。」
成程、私の二つ名ですか…そういえば、ソフィアさんがギルドカードが二つ名に合ったものに変わると言っていましたね。
新しいギルドカードは…黒を貴重とされていて、真っ白な剣が描かれていますね。メイドの要素と剣の要素ですか。まぁわかりやすいですね。
「…あー、取り敢えず、明日の正午に改めてギルドに来てくれ。その時に依頼を受けたメンバーと共に出発して貰う。」
「分かりました。それでは私はこれで失礼します。」
「あぁ。急で悪かったな。」
そうして会議室を後にします。そのままギルドを出て屋敷へ向かっている途中で気づいてしまった…
「行く場所聞いてない…」
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「ギルドマスター。」
先日Sランクになったフレニカに依頼の話をした後にエルバートが話しかけてくる。
「どうした?」
「【創剣のメイド】さん、改めて見たけど相当強いよ。」
「それは分かっているのだが…改めて言う程か?」
「【豪嵐の銀猫】さんも気付いたと思うんだけど…」
「そうですね。彼女、使う物は剣だけじゃ無いでしょうね。」
「…どういう事だ?」
Sランクの2人が話し始めるが俺には一切分からん。俺はあくまでギルマスであるし、冒険者の時もAランクが最高だったしな。
「ギルドマスターにも分かるように説明するとですね、何かしらの武芸を修めた人って言うのは普段の行動に何かしらの癖や歪みが出る筈なんですよ。例えば僕は盾を使いますから、立っている時には、無意識の内に盾を持つ左手を前に出してしまいます。」
「私であれば武道もしくは爪ですが…無意識の内に、前傾姿勢になる事が多いですね。」
「…?成程な?それじゃあフレニカには剣を持つ奴以外の癖があったのか?」
ふむ、癖や歪みの話をするということはフレニカには他の武芸のものが出ていたという事だろうか。
「それがギルドマスター、違うんですよ。」
「……?違う?」
違うのか…じゃあ何故彼女が他の武芸にも長けていると?
「そうですね…彼女、癖が無いんです。それどころか歪みも一切無い。なのに先日見せたあの剣技…どんな武芸を修めていても不思議ではありません。」
そういう事か…だが、そうすると、
「それだけなら他の武芸を修めていないと言うのも考えられるのでは無いのか?」
そう。何も癖や歪みが見られないなら先日見た剣技だけしか修めていない可能性もあるのだ。なのに何故他に武芸を修めていると確信出来るのだ?
「そうですね…説明は難しいのですが、私達は仮にもSランク冒険者、自分で使っている武器はある程度どころか高水準で扱えます。」
だろうな。Sランクになるには特殊な技能だけでは無く素の技術も必要になるからな。
「そしてこれは感覚なのですが…彼女から似た物を感じたんですよ。自分であれば盾の、同じ流派で無いにしろね。ソフィアさんもそうでしょう?」
「そうですね。私も同じく感じました。私の武道は我流ですが、それでも同じ使い手なら分かります。」
「成程な…つまり、お前たちは2人共フレニカが自分と同じ使い手だと感じたんだな?」
「そうですね。そして、自分で言うのもあれですが、盾を使えるというのは珍しいものです。彼女が剣技だけを使うなら話は別ですが、魔法も高水準で使える彼女なら態々盾を使う必要はないですし。魔法で防御すれば済みますので。」
「そうなのか……」
これは何とも、確実性がない話だが、Sランクの感覚となると話が変わってくる。これは、フレニカは本当に武芸を多く扱える可能性があるな。
「ギルドマスター、私からも。」
「お前もか…?」
今は受付嬢をしているが、【麗冥の淑女】の二つ名持ちSランクだった彼女までもか…
「私は短剣とレイピアを扱いますが…彼女からは同じく短剣を使う感覚がありました。それと、彼女が先日使っていたのは直剣ですが、恐らくレイピアも扱えるかと…」
「………そうか…」
まさか今分かっているだけで直剣の他に4種類も使う可能性があるとは……
フレニカは一体何者何だ…?
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