第四話・閑話 【魔法議会】の前に

馬車に揺られながらシルファール城の城門に向かいます。城門には、恐らく今回の【魔法議会】に参加するだろう人々の紋章が付いた馬車が並んでいました。


魔法研究で有名な方々の物と思われる馬車も複数あります。あれはもしかして…


「エクレシア様、あの馬車はもしかしてモルベア辺境伯の物ですか?」


「ん?あぁ、そうだね。それにしても珍しいね。彼は聖国との国境の小競り合いがあるから最近参加して居なかったのに。」


小競り合い…そう、今この国は聖国による宣戦布告を受けており、その国境の領地を任されているのがモルベア辺境伯なのだ。

その仕事柄彼には【守護熊まもりぐま】の二つ名が付けられています。


そして彼自身が獣人ということもあり、彼の領地に獣人が多く居ます。獣人の身体能力を活かしているから大々的な進行にならずに抑えているとか…


「うーん。もしかしたら今回の議会の前資料に彼の目を引く物があったのかな?」

「前資料、ですか?」


「うん?エレネス嬢には言ってなかったっけ?実は議会の主要メンバーになるとその会毎にどんな内容かの資料が配られるんだよ。」

「成程、そのような物があるのですか。」


「すまないね、エレネス嬢に見せるのを忘れていたよ。今からでも確認するかい?」

「いお気遣いありがとうございます。ですが、私は大丈夫です。」


主要メンバーになるとそんなものが事前に配られているとは…

興味が無いとは言いませんが、今回の目的は研究資料を提出する事です。


それに早く帰って研究を進めたいですし…


「それにしても、モルベアの気を引くもの、か。エレネス嬢はどんなものだと思う?」

「どんなもの、とは?」


「そうだね、例えば戦争に役立つ物なのか、単純に彼の気を引いたのか、はたまた資料には興味が無く、他の物に気を引かれた…とかね?」

「…そうですね…」


エクレシア様は笑いながらそう問いかけてくる。ここで彼女が聞いてくる意味は一体…


モルベア辺境伯の気を引く物…ですか。

幾ら気を引くと言っても彼が直接来る意味は無いのでは無いでしょうか…?


確か彼はSランク冒険者と同等の実力を持っています。彼の部下の方が獣人で優秀だからといっても、彼が抜けるのは大分痛い筈です。そんな中彼がわざわざ離れる意味とは…


資料等なら彼の部下を通してでも確認する事はできる筈です…彼自身が来るという事は彼しか出来ない事、もしかして、協力のようせいでしょうか?


議会には優秀な方が沢山来ていますし、それなら納得出来るのですが…あまり、自身は有りませんが、エクレシア様に聞いてみましょうか…


「恐らくですが、協力の要請かと…議会に出る方は、優秀な方々ばかりなので。」

「ほうほう。成程ね〜、彼の目的は資料ではなく協力の要請か。私も同じ考えだよ。」


エクレシア様も同じ考えでしたか。質問に答えられてひとまず安心です。


「そうだ、それならさ、誰が目的だと思う?彼は誰に要があるのかな?」

「誰、ですか。そうですね…」


誰が目的か、ですか…議会の方々は優秀とはいえ、その魔法の強さは良くて上の下の位置の方が多い、私も上の下にギリギリ位置する位ですし…


そうするとエクレシア様?でも、彼女は戦争等の争いごとには一切関わらないと公言していますし…ですが、そうなると誰もあてはまりません。


魔法の強さでは無いとするならば…知識?そうするとやはり、エクレシア様になりますか…


「恐らくですが、エクレシア様かと。」

「ほう。私かい?でも、私は争いごとには関わらない、と公言しているが?」


「はい。ですが、話を聞く位ならばエクレシア様も協力されるでしょう?」

「ふふふ。エレネス嬢、君はよく考えてるね。ただ、自分に対して、自分の周りに対しての関心が低い様だね。」


エクレシア様は何を言いたいのだろうか?

私の付近に対する関心が低いとは、まるで私に用があるという言い方ですが…


「ふふ、エレネス嬢、最近君の家に彼の知り合いが来なかったかい?」


モルベア辺境伯の知り合い…もしかして、


「もしかして、【豪嵐の銀猫】様?」

「気付いたかい。そう、彼女は彼の知り合いだよ。恐らく今回の小競り合いが終わってからの戦争にも参加するんじゃないかな?」


「成程、ではモルベア辺境伯の狙いはもしかして…」

「君だね。いや、正確には、新しいSランク冒険者に用があるのだろうね。」

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