第十三話 かつての親友は今
「帰ってきたのですね。」
屋敷に帰ってくるなり早々、珍しく部屋から出ているお嬢様にそう声を掛けられた。
珍しい。何かあったのだろうか?
「お嬢様、何かありましたでしょうか?」
「いえ、ただ貴女が見えたので声をかけようと。」
何だと。お嬢様からしたらただの一使用人…かは分からないが、使用人でしかない私にわざわざ声を掛けてくれるとは…
そうだ、お嬢様にSランク冒険者になったことを報告しなければ。
「ところでお嬢様、私本日からSランク冒険者となりました。これからも宜しくお願い致します。」
「えぇ。それは良かった。…え?」
お嬢様も笑顔で良かったと言って下さいます。何か疑問の声がきこえましたが気のせいかもしれません。
「あの、今Sランクと言いましたか?」
おや、疑問の声は聞き間違えではなかったようだ。なにやら顔が引き攣っているが、気のせいだろう。ここはしっかりともう一度言おう。
「はい。先程Sランクになりました。」
「……フレニカさん。」
何…?あのお嬢様が、私の事を普段貴女としか呼んでくれないお嬢様が名前で呼んでくれた!なんか、とてもテンションが上がりますね。
「私の名前を初めて…何でしょうか!お嬢様!」
思わず声に出してしまった…
そんな私に対してお嬢様は、
「おめでとうございます。それと、これからも宜しくお願いしますね。」
そう言いながら微笑んでくれた。
あぁ、試しにだったとは言え、彼女に仕えて良かったと、これ程思う事になるとは…私はこれからも、彼女に仕えていようと決意しました。
「そうだ、フレニカさん。言っておかなければならない事がありました。」
「何でしょうか?」
お嬢様が何かを思い出したように話し出す。一体何なのだろうか?
「明日、屋敷に【永き祈り】エクレシア様が来訪されることになりましたので、おで迎えの準備をお願いします。」
「…かしこまりました。」
あいつか。かつての親友とはいえ、あの事があったんだ。この前屋敷に来た時は親友と言っていたが、本当はどう思っているのだろうか。
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「ふぅー…とりあえず、今回【魔法議会】に提出する物の準備は整ったし、休憩しようかなぁー。」
私はエレネス嬢から預かった研究資料を纏めてからそう呟く。
いやぁ、それにしても明日が楽しみだな。エレネス嬢に【魔法議会】に資料を提出することが決まったと報告しに行く為に屋敷へ行くことになったのだ。
ふふふ、エレネス嬢と魔法についてを話すのは楽しいからね。思わず笑みが漏れてしまうよ。
それに、私の親友であるフレイアと会えることが何より大事だ!彼女の封印が溶けていた事は知ってたけど、何処にいるか分からなかったんだよね。
彼女とはまだまだ話したいことがいっぱいあったんだ。彼女なら封印を解けると思っていたしね。あの時、必死に止めて良かったよ。
それに、彼女とはまた一緒にやりたいことがいっぱいあるし、何よりも私が、
彼女と一緒に居たいから。
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