第#話·閑話 少女の記憶
「子供が生まれたぞ。」
「おぉ、綺麗な銀色の耳、これは伝承にある神狼の力を持つ子供だ!」
______________________
「いいか、お前は部族の者の見本とならなければならない。」
「どうして?」
「お前は特別な子だからだ。」
______________________「お母様。今日も疲れた。」
「大丈夫?しっかり休みなさい。」
「…お母様なら、完璧な皆の見本になれるのに。」
「うふふ。貴女もきっと、なれるわよ。」
______________________「族長。グリフィア王国の遣いと名乗るもの達が尋ねています。」
「む?分かった。今向かう。ソフィア、
皆の見本と慣れるよう、励むのだぞ。」
「はい。お父様。」
______________________
「族長、グリフィア王国の者達がまた来ました。」
「ぬぅ。」
「お父様?」
「む?大丈夫だ。心配せず、勉強していなさい。」
______________________「族長!グリフィア王国の兵士が宣戦布告をしてきました!」
「なんだと!?ちっ、老人と戦えない者を避難させろ!戦える者達は武器を取り構えろ!ソフィア、お前しか行けない村の隠れ場に行きなさい。」
「大丈夫なの?」
「安心しろ、すぐ迎えに行く。」
______________________「お父、様?」
「あ?生き残りのガキか?今あっちに向かわせてやるよ。」
「あ、ああああぁぁぁぁ!」
「なんだ!?このガキ、ぐぁ!」
「どうした!?がぁぁ!」
______________________「念話が途切れたと聞いて来てみれば、全滅か…少女?君がやったのか、」
「お前も、あいつら、仲間?」
「だったらなんだ?」
「あいつらに、皆、殺された。だから、殺す!」
「……そうか…私が、無理やりにでもこの作戦に割り込んでいれば、こうはならなかったのだろうか。」
______________________「がっ!」
「ようやく倒れたか。」
「………」
「?………こんなに、涙を流して………
本当は、こんなことしたく無かっただろうに。優しい子だったんだな...」
「うっ……うぅ、」
「………この子が自分でした事を思い出したら、どうなるのだろうか。きっと、自分を責めるだろうな。」
「…………」
「『催眠系統魔法・永遠の忘失』できるなら、私のことも、忘れてしまって。」
______________________「私は、何を?」
「今日も見本となるように勉強を…」
「いや、私は部族から離れて、暫く1人だった。」
「あの人は、とても穏やかだった。」
「あれ?あの人って誰だっけ?」
「穏やかな人…また、会えるかな…」
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