長きに渡る封印を自力で解いたので試しに誰かに使えてみる。

第三話 魔力制御と魔力偽装

私は現在屋敷にある自室にいる。

そして私の目の前には、姉様が居る。

「姉様。話があります。」

「どうしたのかしら。フレニカちゃん。

それよりもタメ口で良いのよ？」

「いえ。普段からこの口調に慣れておくために敬語で話させていただきます。」

とりあえず仮にも、仮とはいえ姉になったイルミナを放ってはおけない。

姉様がSランク冒険者にバレると間接的に私まで巻き込まれる可能性が高いからだ。

とりあえず呼び出した理由を説明する。

「姉様、取り敢えず今回の用件は、貴女の魔力についてです。」

「魔力？」

「はい。『復讐の大狼』を探しに魔力が分かるSランク冒険者が来るらしいので、

姉様には魔力の偽装を出来るようになって貰います。」

「魔力の偽装？わざわざする必要あるのかしら？」

「魔力を偽装しないと姉様がバレる可能性があります。そうすると面倒な事になるので偽装して貰います。」

「面倒な事は嫌ね。分かったわ。」

取り敢えず姉様を説得することに成功した。まずは魔力を偽装する為に必要な魔力制御を教えることにする。

「姉様。まず初めに魔力の偽装に必要な技術、魔力制御を取得して貰います。」

「魔力制御？」

「はい。まず魔力には波があります。

そしてその波、魔力波と言いましょう。

魔力波には人によって違う性質があります。例えばとても波が大きかったり、逆であったり、動かなかったり、はたまた密度が違ったりと。まずはその魔力波を自由に動かせるようになって貰います。」

「大変そうね。」

「姉様は私よりも強い魔法を使っていたので大丈夫だと思いますが…」

そうして姉様の魔力制御の練習が始まる。

暫くして、

「難しいわね。」

姉様はそう声を上げた。

姉様の魔力を見てみると、魔力波はとても大きく、動かそうにも勝手に動いていた。

しかも、その魔力はとても密度が高い。

恐らく、とても膨大な魔力量を持っているからだろう。これは時間が掛かりそうだ。

隙間の無い鉄の棒を想像したら分かりやすいだろう。そうして1日が経ち、私が屋敷の家事をしていると、

「フレニカちゃん。やっと魔力を自由に動かせる用になったわ。」

姉様がそう話しかけてきた。なので、

「良かったです。では次の工程に移りましょう。」

「ええ。何をすればいいの？」

私は家事をサクッと終わらせて姉様に次の作業を教える。

「まず、自分で制御していない時の魔力波がどんな感じかがわかりますか？」

「ええ。分かるわ。」

「そしたら、姉様の魔力はとても密度が高く、大きく揺れている事がわかりますか？」

「…ええ。分かったわ。」

「それなら、次はその揺れ方を別の揺れ方にして、その状態で維持出来るようにして下さい。」

「難しいことを言うわね。動かす事は出来るけど、動きを止めてそのまま別の波を作るって事でしょ？直ぐに元に戻っちゃうんだけど...」

「取り敢えずそれができるようになったら後は簡単なので、頑張って下さい。」

「…分かったわ。頑張る。」

そうして姉様は魔力制御の練習に入る。

私はそれを見届けたあと、ギルドへ行っていつも通り依頼をこなすのだった。

そして２日後、

「ずっと魔力を固定出来るようになったわよ。」

姉様からそう話をされた。ここまで来れば後は少しだ。私は姉様に最後の工程を教える。

「姉様、最後の工程ですが、魔力偽装をして貰います。現在の時点で大分偽装は出来ていますが、魔力波だけでなく魔力の質も変えなければいけません。」

「…魔力の質？」

「はい。姉様の場合は、その密度の高い魔力の密度を薄くする事です。」

「それは、どうすればいいの？これまでは魔力を動かすだけだったから何となく分かったけど、魔力を薄くなんてした事がないからわからないわ。」

「それでは方法を教えます。まず、魔力を出す量を減らしてください。」

「減らせば良いのね。」

「はい。これで成功する場合と失敗する場合がありますが、どうですか？」

「魔力波が小さくなったわ。波が小さくなったのではなくて、体が小さくなったみたいに。」

「やっぱりですか。では次の工程です。

次は、魔力量はそのまま、魔力を広げてください。」

「広げる？」

「はい。元の波の大きさになるように、

魔力量は少ないままです。」

「…やってみるわ。」

姉様はその言葉の後に集中しはじめた。

姉様の魔力はとても不安定な形を描いて、とても工夫していることが見て取れる。

1時間が経ちようやく、

「出来たわ。」

姉様からその言葉が出た。

それに私は、

「おめでとうございます。」

そう言って微笑んだ。

これでいつSランク冒険者が来ても大丈夫だ。後はSランク冒険者が早く帰ることを望むだけ。

そうしてすることが終わった私は、

屋敷の家事をするのだった。