第二話 誤魔化したい…
「エクレシア様、本日は貴重な時間をありがとうございました。」
「いいえ、私も有意義な時間だったよ。
それではまたいつか。」
そうして客人が帰宅するので見送る為に玄関まで案内する。前回の時はそんなことしなかっただろうって?それはあの男が悪い。そして門の前まで来ると、
「メイドさん。案内ありがとう。」
そう言って彼女は立ち止まった。
「…いいえ。またお越しください。」
そう無難な返しをすると、
「とこらでメイドさん、何処かで合わなかった?」
そう聞かれた。もしかしてバレたか?
いや、でも「認識阻害」が掛かっている筈じゃ…いや、恐らくこいつが掛けた物だから「認識阻害」が意味無いのか?
取り敢えず誤魔化したい。
「何の事でしょうか?」
「あれ、誤魔化さなくても良いよ。
なんせ封印が解けてる事は分かってるからね。」
「何の話ですかね…」
バレてるね?ばれてますねこれ。
「ふふふ。私が掛けた魔法なんだから分からないはずないじゃ無いか。ねぇ、私の親友?」
「…ここでは私はメイドのフレニカとして働いています。」
「そっか。まぁ今回は伝えることがあっただけだよ。話はまた今度ね。勿論エレネス嬢に興味が無かった訳ではないよ?」
「用件を早く。」
「つれないなぁ。まぁ、用件はこの町に
Sランクの冒険者が来ているということだよ。君から感じる魔力からして
『復讐の大狼』について知っているだろう?冒険者ギルドに魔力が分かる人が居てね、街の中に『復讐の大狼』がいる可能性が高いと分かった。それを探しに来るんだ。因みにその冒険者も魔力が分かるから騒ぎは起こさないようにね?」
「……内容が濃い。しかも、それは問題が起こる前提で話しに来てるな?」
「なんの事かにゃー。じゃ、また今度!」
あいつ、話したいことだけ話して帰ってったぞ。しかもとても面倒事の気配がする。嫌だなぁ。件の冒険者が来るまでにアイツには魔力の偽装を出来るようにして貰おう。面倒事はこれ以上ちょっと…
そんなことを思っていると、
「フレニカ?貴女はエクレシア様と面識があるのですか?」
そんな声が聞こえてきた。
「エレネス様...」
今、1番バレたくない人に、今のやり取りを見られてしまったのだろうか?
いや、まだ全てを見られたと決まった訳では無い、どこまで聞かれているか…
「エレネス様。どうされましたか?」
「え?貴女が戻るのが遅かったので見にきたのですが...それよりも、エクレシア様が「また今度」と言っていたのですが、貴女は面識があるのですか?」
良かった、本当に良かった。最後しか聞かれてない。いや、最後も聞かれてたら不味いんだけど、取り敢えずどう誤魔化そうか、
「彼女には魔法を教わりました。私が多少魔法を扱えるのはそれが理由です。」
「エクレシア様に魔法を…そんなに凄いのにどうしてわざわざ私に仕えたのですか?」
あれ?これは選択肢を間違えた?
エクレシアがとても凄い魔法使いらしいから私の使える魔法についても擦り付けようと思ったのに、別の問題が出た?
どうする、どう誤魔化す...
私がそう葛藤していると、
「やはり、何か事情があるのですか?
前からずっと思っていましたが、そこまで話せないのなら話さなくてもいいです。
恐らく、貴女が連れてきた姉も、何かあるのでしょう?」
エレネス様はそう言った。
私は、事情を話すのは出来るだけ避けたい。だからといって、仕事が無くなるのも避けたい。だから私は、
「…私は何も話すことは出来ません。
ですが、貴女を裏切ることだけは無いと言えます。」
そう答えた。そう、彼女に仕えたのは偶然だったが、だからといって仕えたからには裏切るつもりは無い。それだけは、昔から決めていることだ。
私のその答えに、エレネス様は、
「…分かりました。貴女を信じます。
それに、2人しか居ない使用人に居なくなられても困りますからね。」
「ありがとうごさいます。」
「私は執務室に戻ります。何かあれば呼んで下さい。」
そうして、何とか事なきを得た私は、
「Sランク冒険者、来ないで欲しいんだけど...」
新しい面倒事に対して、そう愚痴を零すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます