第一話 お客様ですk…帰れ。
現在私は客人をもてなす為にお茶と茶菓子を作っている。どうやら客人が来るまで後一時間弱あるようだからな。ハーブ煮だしながら考える。
「何を作るか…」
茶菓子といえばクッキー等だろうか?
とても悩ましい。そもそも今回来るのがとても偉い人という情報しかないからな。
「クッキーでいっか。」
考えるのを諦めてクッキーを作る。
まずバター、砂糖、牛乳、卵を混ぜる。
しっかり混ぜる為に「生活系統」の「融合魔法」を使う。
しっかり混ぜたらそこに薄力粉と塩を入れてもう一度「融合魔法」を使う。
そしたら耐熱ペーパーに一口大で載せようと思ったけど無い…
普通のキッチンペーパーの表面に「結界魔法」を使って薄い結界を張る。
そして表面に一口大にした先程の混合物を載せる。そしてトースターに投入。
しばらく待って焼き上がった所で取り出す。しっかり結界は機能しているようで、クッキーはキッチンペーパーにくっつかず、簡単に外れた。
焼き上がったクッキーをすべて取ったら「時空系統」の「状態保存」を使い、保温に加え湿気を吸わないようにする。
これで準備は整った。整ってねぇ。
煮だしたハーブティの火を止めてポットに入れ換える。これで準備は出来た。
後は客人が来るのを待つだけである。
「失礼します。」
暇をもて余して庭の手入れをしていると例の客人と思われる声がしたので出迎える。
「お待たせいたしました。お客様ですk…」
出迎えて顔を見た瞬間に、
(帰れ)
そう言ってしまいそうになった。
何故なら客人というのは、
「私は【永き祈り】エクレシア。
クレヴィア嬢を訪問する約束をしたのだけれど、案内して貰えるかしら?」
永遠の時を過ごすと言われる魔女だったからだ。しかもこいつ、私と仲の良かった奴だし。バレるって。
「・・・かしこまりました。ご案内させて頂きます。」
そんな感情を表に出さないようにして彼女を客間へと案内する。
客間へ案内した所でお嬢様を呼びに行く。
「少々お待ち下さい。」
お嬢様の執務室をノックする。
「お嬢様。お客様が参られました。」
「・・・解りました。今向かいます。」
お嬢様を連れて客間へ向かう。
客室へついてからノックをして、
「お嬢様をお連れいたしました。」
「どうぞ。」
お嬢様が客間のソファーに座ったのを確認してから斜め後ろに立つ。そしてお嬢様と客人の会話が始まるので静かにしておく。
「さて、エレネス嬢。本日訪ねさせて頂いたのは他でもない。以前この屋敷を訪ねた伯爵だが、暗殺者らしき者を送り込んで捕らえられたのは知っているな?」
「ええ。この屋敷に侵入してきた者達が伯爵の手の者だったと。」
「その通り。今回はその件についていくつか質問をしたい。」
「質問、ですか?」
「そう。端的に言うとエレネス嬢とそこのメイドさんに容疑が掛かってる。伯爵が言うには自分が嵌められたとね…」
「私が、ですか?私は何もしていないのですが…」
「ふむ。エレネス嬢は『真偽の宝玉』を知っているね?」
「ええ。使用したこともあります。」
「それなら解ると思うが、あれは多少曖昧な物だ。嘘と事実を織り混ぜるとどれが嘘か、どれが事実かが判断出来ない。細かく質問を分ければ嘘が解るが、仮に伯爵が本当に嵌められてた時、そこまで時間をとらせる訳にはいかない。それに伯爵の言葉だからね、無視することが出来なかったんだよ。」
「そういうことですか…解りました。」
「では、質問させて貰うよ。メイドさんも良いね?」
「かしこまりました。」
さて、厄介なことになった。
ここで過去に関係のある質問、例えば何処から来たとか前は何してたとか聞かれるとちょっとまずい。だって大雑把に言うと山の中(物理)で生きてただけだし。
ここで嘘がバレて戦うとかってなると無理ですよ。封印前に彼女と戦ったけど魔法の種類による暴力で負けたし。
私が封印中に研究してたからと言って勝てる訳では無いのです。
「最初の質問だけど、エレネス嬢。
貴女は彼を陥れる様なことはしたか?」
「いいえ。していません。」
「そう。じゃあ次。メイドさん、貴女は犯罪に関わった?」
「いいえ。」
「ふむ。じゃあ2人とも。貴女達はさっきの会話で嘘を付いた?」
「いいえ。付いていません。」
「私も付いていません。」
「そう…じゃあ質問を終わるよ。」
早いな?3つしか質問無かったよ?
まぁ、私にとってはありがたいけど。
「質問が少ないと思った?まぁ、嘘かどうか確認するだけだし、メイドさんに関しては件の侵入者達を本当に捕まえたのか確認するだけだしね。」
なるほどね?でも、これだけの為にわざわざ来る人間じゃないと思うが…
「さて、私は仕事が終わったけど、今回の本題についてだ。」
「本題…ですか?」
やっぱり。
「そう。さすがにこの確認だけをする程私は暇じゃ無いからね。今回はエレネス嬢が伯爵に盗まれそうになった魔法の研究についてだ。それを私の名前を貸して【魔法議会】に提出しないかい?」
「良いのですか!?ですが…その…」
「伯爵に騙された後だから信用出来ないとは思うけど、私を信じて私の名前を貸すだけだからあくまでエレネス嬢本人に提出して貰うよ。私が付き添うことも約束しよう。」
「…解りました。宜しくお願いします。」
なんか話について行けないけどもあれか。
伯爵が盗もうとしてた資料はお嬢様が研究していた魔法の資料で、なんか知らんけど偉い人の名前が無いと【魔法議会】?というものに研究を提出できないようだ。
というか、【永き祈り】がわざわさ来るって事はお嬢様って凄いのでは?
「じゃあ、エレネス嬢、魔法について話し合わないかい?」
「良いのですか?」
「勿論。エレネス嬢の様に魔法について話せる人物とあいたかったんだよ。」
私が考えてる間に話し合いが始まった。
まぁ、良いか。私は先程作ったクッキーを机の上に置いてそのまま待機するのだった
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