第十三話 封印が解けた奴

私は現在屋敷から出て街の中を探索している。理由は単純で封印されてた奴の魔力を辿ってたらこの街に居るとわかったからだ。因みに今は学生みたいな普段着を着ている。


「どこに居るのかな。」


あいつは目的が無くなったから今は大丈夫だろうけどこれからが怖い。何かの拍子に国が標的になる。


「ん?あれは…」


一回も見たことが無いのになにやら既視感のある女が歩いていた。灰のような色合いの髪だが、どこか気品溢れる高身長の女。


その服は恐らく魔力で生成している。

しかも目立ってる。めっちゃ回りの人間が振り返ったりしてるのだが?近づきにく。


いやどうしよう、話しかける?

話しかけないと進まないんだよな。

思いきって話しかける。


「こんにちは。久しぶりです。」

「・・・あら?貴女は...そうね。お茶でもしない?そこら辺のお店で。」

「そうですね。行きましょう。」


感づいてくれたようだ。よかった。

話しかけたせいで自分も注目浴びてるけど仕方ない。それより、怒ってないかな?


───────────────────

「♪~~♪~」


鼻歌を刻みながら町を歩く。

何せ数百年ぶりですもの。

先程男性に話しかけられた時は驚きましたが、今は人の姿ということを思い出して普通の対応ができました。


それより、あの人は何処に居るのかしら?

早く会いたいのだけれど、話したいことがいっぱいあるので。


それにしても、随分国は変わりました。

私はあの頃スラム街に住んでいました。

そしてスラム街といったら仕事の無い人や後ろめたいことのある人しか居ない。

更に人拐いで消えるなんてことはざらです。


ですが、見る限りだとスラム街はとても小さな範囲しか無く、そこに住んでいる人達もあまり不幸そうな表情を浮かべていない。それに衛兵が見回りをしています。


衛兵が身に付けている国旗の国を私は知りません。恐らく新しくこの地に出来た国なのでしょう。しかし、街が出来てから相当時間が立ってそうです。


なので国はもっと早くからあったのでしょう。

つまり、あの国はとっくの昔に滅んでいたということ。なのになぜ今頃封印が解かれたのかしら?

確か条件は…


「こんにちは。久しぶりです。」


そう話しかけてくる一人の少女が居た。


「・・・貴女は...」


振り返ってみると何か既視感のある少女だった。はっきりと誰だかは認識できないが、恐らく何処かであったのだろう。


しかも私に「久しぶりです」と言うことは実験される前の知人かもしれない。

とりあえず相槌を打つ。


「そうね。お茶でもしない?そこら辺のお店で。」


これで良いのかしら?知人なんて久々どからどう対応して良いか解らないわ。


「そうですね。行きましょう。」


どうやら間違ってないみたいね。

とりあえず近くにあった店へ入ることにしました。


───────────────────

入った店は丁度個室がいくつかある喫茶店だったので、個室に行く。

誰かに話を聞かれることもないだろう。

適当に注文してから話を始める。


「さて。とても久しぶりですね。」


まず確認。こいつに敵対の意思があるかどうか。あったら不味いが、その場合お茶なんて誘わないだろう。


「ええ、そうね。でも、一つ良いかしら?貴女は誰だったかしら?」


・・・こいつ、気づいてない?気付かずに茶に誘ったの?


「・・・私は騎士団長です。」


これで気付くか。いや気付いて。


「・・・あぁ!フレニカさんね。会いたかったのよ。話したいこともあったし。」


やっと気付いたか。というかそれより、


「なんで気付かなかったんだ?」


それがとても疑問だ。こいつは相当強いし正体位簡単に解ると思ったが…


「そんなに「認識阻害」でガチガチに固められてたら解らないわよ。」


・・・?阻害魔法?


「掛けてないのだが?」

「あら?でも私は貴女から騎士団長と聞くまで少女としか認識できなかったわよ。」


「少女?今の姿は学生と同じだが?」

「ええ。そこまで認識を歪められるとは、よほどの阻害なのでしょ。」


私は「認識阻害」を使った覚えがない。

一体誰が…あいつだな。

というか身に覚えしかない。


「それより、お前は今の国に対して、私に対してどんな気持ちを抱いている?」

「・・・やっぱり。それを聞くのね?

私が貴女の敵かどうか。」

「そうだ。国が変わり、封印が解かれた。

それによってお前は自由になったが、何をする?」


「そうね...私が憎いのは、あの研究者達だけよ。少女の身で、何も出来ない私に実験をした。それと、それを容認していた国の人間達。だから、何もする気はないわ。貴女も、彼らに操られていただけなのだからね。」


良かった。戦うとなるととても怠いからな


「そうか。それは良かった。」

「そうだ、貴女は今何をしてるの?」


「今はとある貴族の下で働いている。

他に使用人が居なくて一人だ。」

「じゃあ私もそこで働けないかしら?」


成る程?とてもありがたい。エレネス様はこの前のことから狙われる事が多いと予想される。つまり護衛として現代の人間達より強い奴が居てくれるとありがたい。

私一人では無理なこともあるかもしれないからな。


「私一人では決められない。

お嬢様に話を通さなければな。」

「じゃあ、今から行きましょうよ。

私は今家が無いのよ。」


そうだ。こいつ封印が解けてまだ1日しかたってねぇ。


「じゃあ、帰ってから話を通す為に、お前と私の関係を考えないといけない。」

「姉妹で良いんじゃない?」


こいつ、殺しあったのに姉妹とか。


「本気で言ってる?」

「妹ってほしかったのよねぇ。」


…ダメだこれ。


「じゃあお前は私の姉で、私が来た所。

・・・何処だっけ?あー。森の家だ。森の家から仕事探しに来たってことに。」


危ない。忘れるとこだった。


「解ったわ。」

「そうだな、後は、名前どうする?

私は700年位ごしに知るんだが。」

「あら?そうね。じゃあ私の人間だった時の名前を使いましょう。イルミナよ。」

「解った。じゃあ話を通しに行こう。」

「そうね。それよりも、そろそろ本当の口調で話して貰っても良いのよ?違和感を感じるから。」


一々めんどくさいな。


「解った。これで良い?」

「ええ。良いわ。」

「じゃあ、帰りますか。」


会計を済ませて店を出る。

そして屋敷へ姉(仮)を連れて行くのだった


「と言うわけで、お嬢様。手が足りないので私の姉を雇って貰えませんか?」


早速お嬢様に話をしに来た。


「・・・・・・隣の方が貴女の姉ですか。」

「ええ。そうです。」

「・・・使用人を家族ごと雇うというのはあることなので構いません。ですが、」


お嬢様は一度溜めてから言う。


「ですが、何でこんなに魔力量が多いんですか?貴女と言いどんな一族なんですか」

「あれ?解ります?」


魔力量は私も姉(仮)もまぁ過去でも多い方だった。とは言え多すぎて感知できないと思っていたのだが、お嬢様は凄いな。


「解ります?じゃありません。はぁ。

良いです、雇いましょう。幸い何人雇っても余りが出る程お金が貯まっています。」

「ありがとうございます。」


雇って貰えるみたい。良かった。


「貴女と同じ条件で良いですね?」

「構いません。ね?姉様。」

「ええ。良いわよ。」


そんなこんなで、屋敷には一人、人が増えたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る