第九話・閑話 伯爵のその後

何故こんなことになったのだ。

目の前では護衛の男がメイドに簡単に倒されて地面に倒れていた。


「ば、化け物!」


私はそう叫び、手に持った資料を投げ捨て、男を叩き起こして屋敷から逃げ出す。あんなやつが居るなんて知らなかった。

子爵殿の話していた事と全く違うでは無いか!私はただあの女から研究を取って来るだけで良いと聞いたのに。

こうなっては子爵殿にしめしがつかない。どうにかしてあの資料を奪わなければいけない。そうだ、あの女の悪評を世間に流して私も被害に遭ったといえば良い。

そうして私に研究を寄越せば事を済ませると脅せば…

そうと決まれば速く行動しよう。


何故だ?悪評を流して数日立つと言うのに一向に彼女の評判が下がらない。それどころか私の悪評が広まり、彼女を擁護する声の方が強い。一体何があったのだ?


子爵殿に呼び出された。

まずい、今回の失敗のせいでこのままでは子爵殿の後ろ楯が無くなってしまう。

速く別の手を打たなければ。


彼女の家に凄腕の密偵と暗殺者を送った。

これでなんとかなるだろう。

そもそもあのメイドがいなければこうはならなかった。暗殺者は私の手を煩わせた罰だと思え。


いくら待っても帰ってこない。

何があったというのだ?

一体あいつらはどこへ…

それより外が騒がしい、何があった?

そこで突然部屋の扉が開いた。


「第三王国騎士団一番隊だ!チーザル伯爵には殺人や窃盗の罪がかかっている。大人しく連行されなさい。」

「何を言っている!私は何もしていない!」

「既に審議官やスキル持ちの協力を経て証拠は揃っている。抵抗は無駄だ。」


なんで私が捕まるのだ?

こんなはずでは、こんなはずでは無かったのに…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る