第八話 お客様こまりますー
本日はお嬢様にお客様が来る日らしいので私は屋敷を念入りに掃除している。
この前掃除した上に「状態保存」をかけたが念には念をということでこの前使った「清浄魔法」に加えて「光系統」の「浄化魔法」を使って「状態保存」で万全の状態をキープしておく。いつ客が来ても大丈夫だ。
掃除を終えて食事の準備をしようとすると
玄関の方からとても大きな音がした。
何があったか見に行くと。
「ふん。やっと出迎えが来たか。さっさと案内しろ。」
と、とても偉そうな男が護衛の人間を連れて立っていた。
「お客様でしたか。それでは案内致します」
まさかこんなに朝早くに来る常識知らずだとは思わなかった。お前が言うなって?なんのことやら。
客人を客室に案内してお嬢様を呼びに行く
「暫しお待ちください。主人を呼びます。」
「さっさとしろ。使用人風情が。」
なんだこいつ。貴族とは言え態度が凄いな
お嬢様を呼びに来た。
「失礼します。お客人がお見えです。」
「こんな早くからですか?解りました。今向かいます。」
お嬢様もこんなに早く来ることは知らなかったらしい。ホントに失礼な奴だな。
とりあえずお嬢様を客室に案内する。
「お待たせいたしました。主人を連れて参りました。」
「ふん、やっと来たか。随分と遅いな、令嬢ごときが。」
「大変失礼致しました。まさかこんなに朝早くに参られるとは思いませんでした。」
「まぁ良い。さっさと研究成果を寄越せ。」
「しっかりと提出して下さるのですよね?」
「あぁ。しっかり出してやる。」
そうして客人はお嬢様から書類を受けとると、
「感謝するよエレネス嬢。これで私の立場は上がるのだからな。」
「どういうことですか?何を言って...」
「これは私の研究成果だと言っているのだよ。解るか?貴様はただ私の研究成果を見ただけだ。そして私に研究を返却した。そうだろう?」
「貴方、まさか父上の、」
「話は終わりだ。帰るぞ。」
そうして一方的に帰ろうとする客人に対して私は、
「お待ちください。」
そう声を掛けた。
「何だ?使用人風情が。私に何か用か?」
「はい。貴方の手に持っているお嬢様の研究を放しなさい。」
「何故だ?これは私の物だ。」
「いいえ。それはお嬢様の物です。今すぐその手から放しなさい。」
「失礼な奴だ。おい、使用人を殺せ。」
目の前の貴族は護衛の人間に命令する。
「お嬢様、離れて下さい。」
幸いこの部屋は広いので戦うスペースは十分に有る。
「主の命令だ、死ね。」
そう言って護衛は嗤いながら腰の剣を抜き切りかかってくる。
「お客様、困ります。」
そう言いながら私は剣を受け流した。
思ったより重くも鋭くも無い。
この程度なら緊張して損した。安心して戦うことが出来るだろう。
───────────────────
私は目の前で繰り広げられる戦いを見ながら呆然としていた。何故なら彼女が戦っているあの男は伯爵の護衛であり、「付与系統」の「強化魔法」を使っていたりする辺り、恐らくギルドランクで言うと戦闘専門でAランクの下位にはなるだろう。
それなのに私の使用人は
「お客様こまりますー」
等と言って簡単に受け流していた。
「さっさとしろ!使用人ごときに手間取るな。」
と、伯爵が怒っているが、一向に当たる気配が無い。というか、さっきから一歩も動いていない気がする。男は大きく動いているが、彼女は全く動いていない。
そうこうしている内に男は倒されていた。
そして彼女は、
「さて。お客様。そちらの資料を返却願います。」
そう笑顔で告げていた。
「ば、化け物!」
伯爵はそう吐き捨てて男を連れて帰っていった。
「お嬢様、お怪我はありませんか?こちらが資料です。」
彼女はなにもなかったかのように話しかけてきた。あんなことがあったのにこんなに普通に対応してくる彼女を見て私は、
「あっ、はい。」
としか反応出来なかった。
───────────────────「お嬢様、お怪我はありませんか?こちらが資料です。」
護衛の男と戦ってからお嬢様に資料を手渡しながら話しかける。お嬢様は呆然と
「あっ、はい。」
としか言わなかった。
取りあえず目の前の問題が解決したので一安心する。だが私の経験上あのタイプの貴族はただでは帰らない。恐らくお嬢様の立場を悪くするために根も葉もない噂を流したりするだろう。そのためにも先にこっちから仕掛けよう。その前に、
「お嬢様、お食事を用意いたしますので食堂の方へどうぞ。」
先に朝食を済ませようと思う。
というわけで今は街に居る。今向かっているのは食堂。ここは過去私が情報収集をした時にもきた。ということでその時の男を探す。いた。
「久しぶりです。」
さすがにその時会った男の姿で来たが、わかるか?おっさん。
「お前は、この前の兄ちゃんか!仕事は見つかったか?」
「おかげさまで。」
「よかったな!これでも食え!」
随分と気前の良いおっさんだな。まぁ、貰えるなら貰っておこう。
「ありがとう。そういえば、おっさん、ここだけの話、めっちゃ大きい話題があるんだよ。」
口調に気をつけながら相手が気を引く様に話すと、
「なんだと?聞かせろ。俺たちの仲だろ?」
簡単に釣れる。この手のおっさんは手に取りやすいから楽だね。
「誰にも話すなよ?実はな、あそこのクレヴィア家のお嬢様居るだろ?あのお嬢様の家にまだ日も昇らねぇ朝から訪問した失礼な貴族がいたらしいぜ。」
「そんな常識知らずがいたのか?」
「こんな朝から酒飲んでるあんたも大概だけどな?」
「うるせぇ。さっさと話せ。」
「はぁ。なんでも聞いた話によるとその貴族はいきなりお嬢様に護衛を襲わせたって話だぜ?」
「んだって!?そりゃあ大変じゃねぇか!」
「あぁ。しかしお嬢様の護衛に返り討ちにされて逃げ帰ったんだってよ。」
「んだよそれ。」
「誰にも話すなよ?ここだけの話だぜ?」
「わかってるよ。」
「ならいい。おっさんまたな。」
「おう。またな!」
これでよし。あのおっさんは良い具合に言いふらすだろう。そうして噂が広がればお嬢様を擁護する声が広がる筈。
じゃあ次は情報屋の所へ行こう。
「こんにちは。情報屋さん。」
目の前の明らかに怪しい服装の男に話しかける。黒いローブで体を全て覆っている。
「久しぶりだな。」
声もわからない。
「実は耳寄りな情報があるんだが、」
そうしておっさんに話した内容を話す。
これで情報収集した時の人には大体話し終わった。これであとはたのしみだね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます