第五話 狩りへ行きましょう。

「ふむ。」


私は現在調理場で立っている。

その理由は単純で料理を作る為だ。

しかし、相変わらず野菜と果物以外は存在しない現在はどうしてもレパートリーが減ってしまうのだ。今日は朝食後にギルドへ向かうのでそれまで肉は無い。

昨日の夕食はどうしたって?

いくら呼び掛けてもお嬢様が反応しなかったから私の「収納魔法」に入ってる。

さてと。何を作るか。


「あれにしよう。」


今日はカボチャのスープとパンプキンパイに加えて人参とキュウリ入りのポテトサラダを作る。

「空間系統」の「圧縮魔法」を使ってさくっとカボチャを潰す。

ついでにじゃがいもも一緒に潰しておく。

そこで気がついた。

砂糖が無い。

砂糖の代わりになる甘味といったらテンサイやみりんがある筈。

だけど、丁度作ってないね...

私は砂糖を使う以外に作り方を知らないのだが。諦めるしかない。

代わりにフルーツタルトを作ることにする。

まずはリンゴの種を抜き、フライパンの上に潰して敷き詰める。

そしてミカンや桃の皮を剥いて切り分け、一部を残して液体にする。


「生活系統」の「融合魔法」を使って簡単に混ぜる。そして潰したリンゴの上にそれを流し込んで残った切り分けた果物を一緒に入れる。そしたら蓋をして蒸し焼きにする。

焼いている間に人参とキュウリを切る。

切り終えたら潰したじゃがいもと一緒に混ぜる。そこにオリーブを切り刻んで投入して完成。


カボチャスープは潰したカボチャに切ったタマネギ、刻んだショウガを入れて煮込む

「時空系統」の「時飛ときとばし魔法」を使い一瞬で完成させた。タルトには使わないのかって?

タルトは焦がすことがあるからね。


少したってからタルトが完成した。

だがタルトの中身は固まっている筈もなく、液体だった。

そこで「空間系統」の「固定魔法」を使う。

「時空系統」にも「固定魔法」はあるが、

その物の時を止めるので干渉できなくなってしまう。


しかし、「空間系統」の方はその場所に固定するか、何かに紐付けで固定するので、何かが壊れれば簡単に崩れる。魔力を浸透させれば普通のタルトの出来上がり。


しかし本当は固まっていないので咀嚼した瞬間にとろとろになる私しか作れない特製タルトとなっている。


「お嬢様、食事が用意できました。」


完成したところでお嬢様を呼びに来る。

部屋から音が聞こえるので既に起きているのだろう。


「今向かいます。」


少ししてお嬢様が出てくる。

そして食堂へ行き食事をする。

お嬢様の食事を見ていると、


「このタルト、美味しいですね。」


と声をかけてきた。


「はい。ありがとうございます。」

「また作って欲しいです。」


お嬢様はタルトが気に入ったらしい。

夕食を食べてないものあってか、

1個丸々食べていた。

これは私が研究して作った自信作なので嬉しい。お嬢様の要望を聞き、今夜は別の果物を使ったタルトを作ることになった。


現在私はギルドに居る。

朝食が終わった後に仕事を終わらせて即座に出てきた。

依頼書の張ってある掲示板へ行く。

どんな依頼があるのかな。

私は最低ランクのFなので受けられる依頼が結構限られてくる。

丁度良い依頼だと薬草20本の納品がある。

これを受けようと思い、依頼書を受付へ持っていく。

昨日の受付嬢だ。


「すいません。この依頼を受けます。」

「畏まりました。手続きを致します。」


この依頼を受けましたという証明書を貰いギルドを出る。

衛兵に身分証(エレネス様から貰った)を見せて街から出る。

街の近くは道が整備されており、平原が広がっている。平原の右側には森が広がっていた。恐らくあの森の中に薬草は生えていると考えられる。

早速森に入る。

この森はあまり深く入らなければ動物や魔物があまり出てこないらしいので浅い所で薬草を採集する。

多少魔物が出るがスライムやフットラビット等の雑魚のみなのでサクッと倒す。

あっ、スライムコアだ。

因みにフットラビットの肉10個がFじゃなくEランクの扱いなのはモンスターのドロップが出ないこともあるから10以上倒さないといけないことが関係している。


のんびり採集していたら20本回収し終えたので帰ることにする。

街に入ってギルドに行き依頼の達成報告をしに受付へ行く。

さっきの受付嬢がいるのではなしかける。


「すいません。依頼の達成報告をしに来たのですけど。」

「わかりました。証明書と依頼の品を出してください。」

「はい。」


とりあえず「収納魔法」から薬草を出す。

スライムコアやウサギ肉はそのまま入れてあるが必要無いだろう。


「今どこから出したのですか?」


質問された。そういえばお嬢様曰く『消失魔法』となっているのか。

それならここは適当に、


「スキルです。」


こう答えよう。私は魔法で覚えるしかなかったがスキルなら普通にいるだろう。


「スキルですか。珍しいですね。気を付けた方が良いですよ。最近は「収納」のスキルを使える人が減ってきたので。」


なんと。スキルですら物によっては希少になっているのか。


「取り敢えず、依頼は完了ですので報酬の銅貨二枚です。」

「はい。」

「そういえば、フットラビットの肉の納品依頼が達成されていますが、受け取られますか?」

「お願いします。」

「では只今もって参ります。」


ということで少し待つことに。

しかし、これで今日から肉を使った料理が作れるようになった。

肉を受け取ってギルドを出る。

帰りに店で小麦粉や片栗粉等の必要品を購入して帰る。


屋敷に帰ってきた。

現在は昼前なので昼食の準備をしなければならない。


「何を作ろうか。」


調味料やその他諸々を買ってきたのでレパートリーが増えた。

ウサギ肉を使うのは確定として、野菜は沢山ある。・・・無難に焼くとしよう。

普通のオニオンスープとウサギ肉のソテーに朝作れなかったパンプキンパイを作る。まずタマネギを薄切りにする。そして鍋に水400mlとバター小さじ1に塩、コンソメの素を少し入れて「融合魔法」によって完全に混ぜる。そこにタマネギの薄切りを入れてしばらく煮込む。


煮込んでいる間にウサギ肉の下ごしらえをしておく。肉に塩胡椒とバジル、ハーブを揉み混んで「生活系統」の「熟成魔法」を使う。「熟成魔法」は食材にのみ使える「時飛魔法」みたいなものだ。

下ごしらえを終えてからフライパンを熱して片面をパリパリに焼く。

そして片面を弱火でじっくりと焼く。

フライパンに水やワインを入れ蓋をする。


焼くのを待つ間にパンプキンパイを作る。

カボチャをペースト状にして、砂糖とバター、卵、酒を入れ、「融合魔法」で混ぜる。

バターと塩、薄力粉、強力粉、水と酢を

「融合魔法」ど混ぜて生地を作る。

生地を伸ばして皿の形にし、「空間系統」の「固定魔法」を使う。

その上に先程のカボチャペーストその他をのせる。そしてオーブンで焼く。


そうこうしているうちにウサギ肉が焼き上がる。焼きたてにしておくために「時空系統」の「状態保存」をかけておく。

オニオンスープの火を止め、少ししてパンプキンパイが完成した。


「お嬢様、食事が用意できました。」


完成したのでお嬢様を呼びに来る。

部屋から音が聞こえるので既に起きているのだろう。


「今向かいます。」


少ししてお嬢様が出てくる。

昨日の食事から同じことをしているな。


食事中にお嬢様が


「お肉なんて久々です。」


と喜んでいたので良かった。

正直私は金を持っていても趣味等が無く、使い道が無いので給料が恐らく殆ど調味料等の食事関連へと回るだろう。

これからしばらくはギルドで稼いだりして色々な調味料を集めよう。

そうすると趣味は料理になるのかな?

そんなことを考えながらお嬢様の食事を見守っていた。

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