第三話 「お嬢様、僭越ながら私に常識を教えて下さいますか?」

「・・・もう一度問います。貴女は一体何者ですか?何故そこまでの力を持ちながら、この屋敷へ来たのですか?」


その問いに対して私は、


「・・・私は、一般人です。」


そう答えた。すると、エレネス様は、


「・・・そうですか。疑って申し訳ありませんでした。貴女に対して『真偽の宝玉』を使用させて頂きました。そして貴女が嘘をついていないということがわかりました。」

「そうですか。それなら幸いです。」

「はい。まぁ、貴女の認識と私の認識のずれはいずれ無くなるでしょう。」

「そうですね。」


とりあえず疑いが晴れたようだ。

しかし、このままだとこれから生活する上で困るかもしれない。なのでわたしはお嬢様に対して思い付きでこう言った。


「お嬢様、僭越ながら私に常識を教えて下さいますか?」

「・・・突然ですね、良いでしょう。どうせ私は忙しくもありません。これから使用人となる貴女に常識を教えるとしましょう。」

「ありがとうございます。」

「しっかりと仕事をして貰えれば構いませんから。それでは午後も残りをお願いしますね。」

「既に終わっておりますが。」


その言葉を発したあと、また頭を抱えた。


「・・・・・・そうですか。えぇ、そうですね。

まずは食事を済ませましょう......」

「冷めぬうちにお食べ下さい。」


そして食事を始める。

私は使用人なので後に食べることになっているが、目覚めてから全くといって良いほど空腹にならないのだ。

いよいよ人間か怪しいな。


お嬢様の食事が終わったので早速常識を教わることになったので、教わる為に客間へ移動する。


「まずはじめに、この世界の国等についてどの位知っていますか?」

「そうですね。「王国」「帝国」「公国」に対して「聖国」が宣戦布告したことは知っています。」

「えぇ、その通りですね。」


衛兵のおっさんに聞いといてよかった。


「次に、『消失魔法ロストマジック』については知っていますか?」

「申し訳ありません。しらないです。」

その返答に頭を抱えるお嬢様。

「・・・良いですか?『消失魔法ロストマジック』とは、およそ五百年前にあったとされる『魔力破壊マナブレイク』 と呼ばれる災害によって継承者が殆どいなくなった魔法のことです。今使える人間は数少なく、その殆どが国に属すかギルドに入っています。」

「『消失魔法ロストマジックも『魔力破壊マナブレイク』もわからないのですが。」

「そこまでですか。えぇ、良いでしょう。

常識を貴女に求めるのは諦めます。」


諦められた。悲しいね。


「説明しましょう。『消失魔法ロストマジックというのは話をきいていればわかると思うので後にします。まず『魔力破壊マナブレイク』というのは空気中の魔力が溜まりすぎたことにより魔物が大量発生する事態になったのですが、その結果魔物の発生に魔力が使われ、急激に減ったことにより圧縮された魔力が解放され、各地で『魔力暴走』と呼ばれる魔力を消費する大爆発が起きて世界の魔力が不足しました。そして魔力の不足と魔物の大量発生が重なった結果、魔法を使用する際の消費魔力が増加、かつての名のある魔法使い達だけでは対処できず、その弟子まで駆り出されました。そして、結果的には人々は魔物を倒しましたが、魔法使い達の殆どは死んでしまいました。そして生き残った僅かな魔法使い達は各国へ散り、それぞれが国を守ることになったのです。」

「・・・成る程。理解できました。」


つまるところ魔力の減少により空気中の魔力を消費して使っていた魔法が使えなくなり、魔法使い総出で魔物の対処をするがギリギリで、魔法使いの数が減ってしまい、その結果が『消失魔法ロストマジック』と。


「とりあえず、一般的な常識を教えます。しっかり、覚えてくださいね?貴女が居なくなったら私に仕える人が居なくなってしまうので。」


そんなお願いをしてきたお嬢様に対して、


「わかりました。これからお願いします。」

そう返すと、お嬢様は私に対して、

「はい。」


と、満面の笑みを見せてきた。


私は現在ギルドに来ている。

ギルドというのはその地域の住人や国、貴族等からの依頼を請け負っている組織で、犯罪履歴さえなければだれでも登録できるところだ。例えば魔物の討伐や素材の採集、その他にも納品の依頼がある。


討伐はそのままの意味で、採集には魔物の他にも薬草や鉱石等。

納品は作成したポーションや武具を納めれば良い。

そんなギルドに来ている理由は依頼と登録をしに来たからだ。登録すれば町の外に出て動物や魔物の素材を自分でとりに行けるのだが、今登録してもあまり良い獲物が居る場所へ行けないので依頼しに来た。


因みに今は女物の私服を着ている。

メイド服は置いてきた。

受付は開いているみたいなので早速依頼を

しに行く。


「すいません依頼したいのですが。」

「はぁい。内容をどうぞぉ。」


受付嬢はおっとりしているが、

なんかめっちゃ魔力が溢れてるので一般人ではないのだろう。

問題を起こした瞬間に死にそうだ。


「今回はフットラビット十羽分の肉をとってきて貰いたいのです。」

「わかりました。フットラビットということなのでランクEの依頼となります。

依頼金は銅貨三枚と手数料で小銅貨三枚になります。」


「はい。お願いします。」

「丁度お預かりしました。依頼が達成された時はギルドにお越しいただければ保存した状態のものをお渡しします。」


「解りました。あとギルドに登録したいのですけど、できますか?」

「はい。それでは登録料として小銅貨一枚いただきます。」

「お願いします。」


「それではこちらのカードに血を一滴垂らして下さい。」

「わかりました。」

「・・・はい、それでは登録が完了しました。そちらのカードがギルド員としての証となるので無くさないようにして下さい。」


「わかりました。また明日来ます。」

「はい、それではまた。」


そんなこんなで用事も終わったので帰ることにする。銅貨三枚と小銅貨四枚ですんでよかった。


私の収納に入っていたのは白銀貨二枚に銀貨一枚、大銅貨五枚に銅貨十枚と小銅貨二十枚が入っていた。


換算方法としては

小銅貨十枚で銅貨一枚

銅貨十枚で大銅貨一枚

大銅貨十枚で銀貨一枚

銀貨十枚で白銀貨一枚

白銀貨十枚で金貨一枚

金貨十枚で大金貨一枚

小銅貨一枚で屋台の焼き鳥が1本買える。


あまり無いのは封印前は大体家に置いてたからだ。ともかくさっさと帰って本を読むことにしよう。


───────────────────

「あれは一体...」


ある日私はいつも通り受付をしていたが、夕方前に来た女性がとても気になった。

元々冒険者だったが最高ランクのSランクに到達してから引退し、それから長く受付嬢をしているが、私は冒険者をしている内に身につけた膨大な魔力によって初めて来た人には無意識の内に怯えられていた。

だが、あの女性は怯える素振りすら見せずに普通に会話していた。

別にそれだけでは気にならない。

魔力に鈍感な人も居るからだ。

しかし、私が気になった理由は...

彼女に誰も並べない程の魔力があったからだ。

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