第二話 メイドになりました。

「あー、あー。発声も良いか。」


私の名前はフレニカ。森の家に暮らす一般人、という設定だが大丈夫か?封印され過ぎて常識が解らんがまぁいい。

わたしはクレヴィア家のエレネスお嬢様に今日から勤めるメイドだ。突然口調と性別が変わって驚いているだろうけど安心して欲しい、これは「生命系統」の「性転換魔法」によるものだからな。まぁ、性別なんてあって無いようなものだから関係ないが()。

クレヴィア家はここ、シルファール王国の子爵である、アルフィー・フォン・クレヴィア様のご令嬢だった。だが、エレネス様はクレヴィア家の次女だったため、別荘に住む事になったらしい。そしてその使用人が足りない為、雇うという話を街に出していたが、誰も首を縦に振らなかったらしい。

噂を又聞きしただけだからな。

何も知らない。しょうがないね。

まぁ、そこで私が申し込んだら丁度最後の使用人が今日辞めるらしく、その場で採用された。使用人の服を渡してきた後であのおっさんやけに清々しい笑顔で


「あとは任せたぞ!私は自由だ!」


などと叫んでどっか行った。

男の姿なのにメイド服を渡された。

夜中の道を走っていくので直ぐに消えたから仕事やらの話を何も聞けなかった。


シルファール王国で、次女、次男というと、跡取り争いを起こす可能性が有るため、長女や長男を確実な跡取りとして、次女と次男は自宅から遠い別荘や親戚の家等で暮らすということになっているのだ。過去に跡取り争いで紛争になった国があったらしい。そして、そういった事情基本的には次女次男には不干渉を決め込む親が多い。だが、クレヴィア家は代々王家の抱える魔術師一家だった上で更に類い希な才能があった為にクレヴィア家から近い別荘に住むことに成ったとか。そして一緒に付く使用人等が居ないために市民から使用人を見繕ったと。取り敢えず屋敷に向かう事にする。


「行ってきまぁ。」


という誰に向けたでもない何とも気の抜けた声を出して屋敷に向かう。


「大きい。」


屋敷に着いたのだが、普通に屋敷がデカイ。何故敷地内に果樹園が有るのかね?

趣味か。そんなことは置いといて。


「勝手に入って良いのか?」


門前には誰も居ないためどうすれば良いかが分からなかった。というか門番すら居ないのか?無用心だと思うが次女なら仕方ない。


「入るか。」 


仕方なく門を開いて屋敷に入る。


「こんにちは。」


割りと大きい声で喋ると、少しして


「はーい。」


という幼い声が聞こえると共に、奥の部屋から身長約155cmの黒髪ロング、蒼眼と白眼のオッドアイの少女が出てきた。

クレヴィア家の人間は必ず白眼の入ったオッドアイの眼になると言われているので、眼の色から察するに彼女がエレネス・クレヴィア様だと考えられる。

何故そんなことを知っているのかって?

私の情報収集能力をなめんな。

酒場のおっちゃんといったらおだてていれば聞いてもないのに気を良くして話してくれるぞ。


「どなたですか?」

「今日からここで勤めるフレニカと申します。宜しくお願いします。」

「あぁ、今日から来るというメイドさんですね。それではよろしくお願いします。」

「はい。早速ですが、この屋敷での仕事を教えて頂きたいのですが。」

「解りました。ひとまず屋敷の案内、それから仕事の説明をします。」


それから案内が始まった。

屋敷には入り口から果樹園と畑。ここが敷地の内の約7割を占めているらしい。

実際屋敷は貴族にしてはあまり大きくなく、部屋も合計で10位しかない。


一階に合計七部屋で入り口から五つが使用人の部屋。客間が一つ、食堂となっている。二階に合計三部屋でエレネス様の寝室と執務室、書斎室となっている。

調理場とお風呂が別であるらしく、食堂から通じる通路を通って行けるらしい。


次に仕事内容を説明されたが、果樹園の木を枯らさないように手入れをして、畑を育てる。屋敷の掃除は後で良いらしい。

それと朝昼夜の食事を作ること。


それが終われば自由で、書斎も使えると。それと、出来る限り果物をデザートで欲しいとの事だった。お嬢様曰く果物が好きらしい。


「というふうな仕事内容です。

理解して貰えましたか?」

「はい。概ね理解しました。」

「それでは貴女の部屋は一階の何処でも使ってください。貴女以外に使用人が居ませんので。」

「わかりました。それでは早速仕事にかからせて頂きます。」

「早速ですか?では宜しくお願いします。

時間が空いたのなら書斎の本を好きに読んでも構いません。」

「有り難うございます。」


ということで早速仕事に取り掛かる。

まずは果樹園の管理だが、


「魔法でいけるかな?」


流石にこの範囲に攻撃以外の魔法は使ったことがないので不安だ。


「やってみるか。『植物系統魔法・成長』」


「植物系統」の「成長魔法」は樹木が安全に成長するように諸々の植物系統の魔法の効果を入れたもので、代わりに魔力消費量が馬鹿げてるが魔法一つで済ますことができるのでとても便利な魔法だ。


「とりあえず終了かな。」


魔力反応を見る限り全体に行き渡ったみたいなので終了とする。

畑は一緒に範囲に入ったみたいだ。

次にすることは屋敷の掃除だ。


「なんの魔法があったかな。」


記憶を探ると「生活系統」の魔法に丁度良い物があった筈だ。


「『生活系統魔法・清浄クリーン』」


「生活系統」の「清浄クリーン魔法」は魔力の膜を円形にのばしていき、膜に当たった部分の埃や汚れのみを無くすものだ。言語が急に変わったのは文字数的に言葉にする量が少ない方が発動までが早いからだ。

その時の気分にもよるが。


「追加で『時空系統魔法・状態保存』」


しばらく汚れないようにしておく。


「こっちも終了。」


昼食まで時間があるので時間が空いた。


「書斎に行くか。」


ということで書斎へ向かう。


「凄い。」


思わず声が漏れるほどその書斎は大きかった。入った扉の横の壁から既に本棚が置いてあり、その本棚にはびっしりと本がしきつまっている。本棚には様々な部類の本があり、ジャンルによって棚がしっかりとわけられている。そこで気づいたが、屋敷を外から見たときよりも広いと感じた。

おそらく「空間系統」の魔法を使っているのだろう。でなければこの広さには説明がつかない。とにかく本を読むことにする。

今の世界のことや国について把握したいからな、いざという時に困る。

ということで調べものに取り掛かる


気づけば既に昼食の時間が迫っている。


「危ない」


厨房へ急ぐ。


「何を作ろうか」 


現在ある食材を考えてなにが作れるか。

調理場の食料庫には?

リンゴ、レモン、梅、桃、梨、柿、

ミカン、オリーブ、ブドウ、柚子、

ブルーベリー、キウイ。

人参、レタス、キャベツ、じゃがいも、

紫キャベツ、ビートルート、ラディッシュ

ネギ、タマネギ、大豆、キュウリ、生姜、

ミョウガ、さつまいも、カボチャ、トマトピーマン、小麦、胡麻。

果樹園と畑にあるのしか無いんだが。

肉類が無い。買ってないのかな。

買い出しに行く時間がないので今あるもので作るしかない。ちょっとまて、なんで

キャベツと紫キャベツ育ててるんだ?

まぁ、置いとくとして、何を作るか。

使えるとしたら、あれを作るしかない。


作り終えたのでエレネス様を呼びに行く。


「エレネス様、食事の用意が出来ました。」

「・・・今向かいます。」


それから少しして執務室からエレネス様が出てきたので食堂へ向かう。

エレネス様が席へついたところで食事を運ぶことにする。


「本日は畑の野菜のみを使ったコンソメスープとブドウ入りのパン、レモンの果汁をあえたとキウイとリンゴのフルーツサラダになっています。デザートは別で用意しております。」

「・・・よくこの短時間で作りましたね。

それに主食のパンはなかった筈ですが。」

「お褒め頂きありがとうございます。

私は魔法を扱えるのでそちらを使いで用意致しました。」

「魔法ですか。私の記憶ではそのような魔法は無かったと記憶していますが。」

「?...普通に「時空系統」の魔法と「生活系統」の魔法を組み合わせて使いましたが。」


そう言った途端にエレネス様は頭を抱え始めた。普通の魔法を使っているだけなのに何故だろうか。


「どうかされましたか?」


そうたずねると、エレネス様は


「・・・良いですか、まず「時空系統」の魔法は既に失われた筈のものです。ましてやそれに加えて他の魔法を使う等できる筈無いのです。ただでさえ消費魔力が多いのです。それにそのような効果の「生活系統」の魔法は聞いたことがありません。」

「そうなんですか?」


目覚めてから最大の驚きだった。


「一つ、聞いても良いですか?」


エレネス様から問いかけられる。


「貴女は何者ですか?」


その問いに対して私は、こう返した。


「ただの一般人です。」

「そんな筈がありません。・・・もう一度問います。貴女は一体何者ですか?何故そこまでの力を持ちながら、この屋敷へ来たのですか?」

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