第一話 転移した先は何処ですか?

・・・ここは、目の前に広がる自然。

巨大な木、そして小鳥のさえずり。

・・・・・・・・・・・・

うん、山だな。


「あっれぇ?おかしいな。」


おかしいな。記憶では祠があってそこに封印されていたと思ったのだが。


「埋まってる?」


どう考えても埋まっているとしか思えない悲しい事実。封印されていたとはいえ

720年も封印されていたら実家みたいなもんなのだから悲しい。


「どうしよっかな。」


どうしようもないので行く宛を考える。

確か祠はどっかの領地の外れだった気がするのだが、


「つんだ?」


いや、もう少し考えよう。昔どうなったのかを。よーく考えよう。

私、瀕死になる。

捕縛される。

街外れに連れてこられる。

祠が作られていた。

中に入る。

封印される。

「つんだ。」


完全につんでいた。食事や睡眠が必要なくなったとはいえ街等が近くにない。


「どうしよう。」


取りあえずどうしよう。

魔法に何かあるかもしれない。


「飛んで上空から見るか?」


飛んでみるか、飛んでみるか!


「『空間系統魔法・飛行』発動。」


・・・・・・・・・・・・・

「何でこうなった?」


私は今、衛兵の詰所の牢屋にいる。

理由は単純。


飛んでみた。

見渡してみた。

街見つけた。

近くに降りた。

入ろうとした。

衛兵に身分証の提示を要求された。

何もない。

捕まった。

他は特に何も聞かれなかったし。


「何で?」


追い返されるでもなく捕まる理由が

見当たるはずもなく、頭の中は「?」


「それよりも、警備雑だな。」


牢屋は至って単純に、詰所の地下に小部屋があって鉄柵があるだけだった。


「いつ来んのかな。」


衛兵が来るまで暇で仕方ない。


「衛兵さんいますか!」


叫んでみる。

ちょっと待ったところで、


「どうした。」


衛兵さんの登場です。


「何で私捕まってるんですか?」


一番聞きたいことを聞く。


「お前が聖国の者の可能性があるからだ。」

「聖国?」

「知らないのか?演技か?

どちらか分からないが教えてやる。

たった今、私達の住むこの

『シルファール王国』と

『ケルズニア公国』、そして

『アルフィード帝国』の3国に対して

『クラジニフィア聖国』が宣戦布告した。その理由は神々のご意思だと。

たった今3国と聖国による聖戦が

起きている。と言っても、聖国が言ってるだけだが。」

「そうなんですね。」


よし、国名と理由だけは覚えた。


「じゃあ私はどうすれば良いのですか?」

「そうだな、ここで暫く待っていろ

お前についての情報が入るまで待つ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

待っています。

とても待っています。

具体的に言うと体内時計的には2~3時間位待たされています。


「いつまで待てば良いのか。」


ここまで立つと正直きつい。

暇すぎてとてもきつい。


「誰かいますか~」


呼んでみる。


「何だ。」


さっきの衛兵がタイミング良くきた。


「いつになったら出れますか?」

「先程お前についての情報が入った。

結局のところ、お前は身元不明で、

ここ最近の諜報員の情報も無い。

だから聖国の者ではないとの判断だ。

出て良いぞ。」

「ありがとうございます。」


グッドタイミング。

やっと出れるみたいだ。


そんなこんなで身分証を貰いいざ街へ。

因みに身分証は登録した街と身分を証明する場所を確認すること、犯罪履歴や体内魔力の登録等その他諸々の過去が無いかの確認を行うもので、ただで貰えるらしい。

だが今回貰ったのは仮の身分証らしいので身分を保証する人、場所が無いのであまり意味がない。つまり身分証としての能力を半分しか機能していないということだ。

とりあえず街へ出ると通りには出店等が並びとても賑わっていた。

しかし金が無い上現在の常識等がわからないので少し話すと速攻粗が出そうだ。


「散策するか。」


街について知らないので職場探しついでに散策する。

しばらく散策していると


「道を開けろ!」


という声と共に人通りが開ける。


「泥棒だ!」


という声が聞こえることを見るに先頭を走るナイフを持った男がそうだろう。

明らかな女物の鞄を抱えているし。


「どけ!」


だんだんと此方へ来ているし目立ちたくもない為端の方へ避ける。


「退かねぇと刺すぞ!」


何故か男は私の方向へ向かってくる。

何故なのかわからない為、

反応が遅れて固まる。

止まった私に捕まえる意思があると感じたのか男はナイフを突き出してきた。


「退け!」


ギリギリの所で避けたものの、ナイフは服へ掠り、斜めに避けたせいで足が相手と引っ掛かり、男と共に倒れた。

そこで解ったが男は私の後ろにある路地裏へ逃げ込もうとしていたらしい。


「大丈夫か!」


そこへ鎧を着た女性が現れる。

そして男に縄を掛けて捕らえて部下らしい同じデザインの鎧を着た男達に命令してつれていかせた。


「大丈夫か?」

「あっ、はい。助かりました。」

「いや、怪我が無いようでよかった。

ところで、先程の身のこなし、何か武術をやっていたりしたのか?」

「いえ、特にやってないですけど、何か?」

「あそこまで洗練された動きはあまり見ないものでな、ましてやそれを見覚えの無い人間がしていたことから気になってな。」

「そうですか。」

「一応私はこの国の第一王国騎士団副隊長という役目から強い者等の情報は頭に入れていたのだが、お前は何者だ?」

「山奥から来た一般人です。」

「・・・一般人ということ以外に何も嘘は無いようだ。疑ってすまなかったな。」

「いえ、何故そんな事を?」

「あぁ、私にはそういうスキルがある。

そう言えばわかるかな?」

「成る程、理解しました。所でこんなところに居ても良いのですか?副隊長なのでしょう?」

「ふむ、そうだな。それでは私は帰ろう。何か困ったら王城の詰め所にこれを見せてくれれば何か手助け位はできる筈だ。

・・・其方とは縁を結んだ方が良さそうだ」


そうして去っていく騎士。

なんやかんや色々喋ってくれたな。

とりあえず、


「仕事、探すか。」


身分やらなんやらの為にも仕事を探すことを一番最優先にしよう。

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