長きに渡る封印を自力で解いたので試しに誰かに仕えてみる。

東雲 南丫

第一章 封印が解けた奴

プロローグ 封印からの目覚め

・・・・・・

目を覚ませば薄暗い空洞の中に居た。

周囲を見渡しても道なんてものは存在すらしていない。そう、密閉空間なのだ。


「やっと、出れたか。」


だが、そんなことはどうでも良い。

今起こった出来事を考えれば些細な事なのだから。

そう、私は先程まで封印されていた。その証拠に背後には千切れた鎖と共に蓋の壊れた棺が置いてある。

先程私はそこから起きて来たのだ。

約720年にも渡る封印から覚めたのだ。

喜ばない筈がない。だが、些細なことと、二つの問題があったのだ。

些細なこと、それは、服がボロい。720年は流石に劣化するよな。いくらなんでも多少の羞恥心はあるので少し恥ずかしい。


「そうだ、直そう。」


「生活系統」の魔法の中に「修復魔法」があったはずだ。

『生活系統魔法・修復』を発動した服は新品同然になった、見慣れた使用人のような男物の服だ。


「さてと、どうやって出るか。」


そう、ここは密閉空間の為にどうやって出るかを考えなければいけないのだが、

私の手足と首には、


「邪魔な重りだな。」


封印される前に弱った所で動きを封じられたオリハルコン製の重りがついている。

わざわざこんなに重くて貴重な物を使うとは、どれだけ人間達が切羽詰まって居たかが伺える。


「壊すか?」


面倒だし壊そうと思うが、あくまで貴重品なので壊すのを躊躇われる。


「そうだ!収納するか。」


だがそこで思い出す。720年に渡る封印の中で何もしなかった訳では無い。

そう、封印を解く為の鍛練の過程で様々な魔法を覚えた。さっき使ったのを早速忘れていたが。それはさておき、数ある魔法の内の一つが収納だ。

収納は一人一つは必ず生まれ持つ「スキル」によって手に入れるか、とても扱うのが難しい「時空系統」の「収納魔法」を使う事でしか扱うことが出来ない。私は収納の「スキル」がないので態々覚えたのだ。覚えたお陰で何故か昔見た「スキル」による収納よりも量が入る気がするのだが、


「気のせいか。それよりさっさと出よう。」


考えるのが面倒なので思考を放棄する。

そんなことよりも先にここから出なくてはいけないのだから。

・・・・・・・・・・・・


「めんどい、ぶっ飛ばそ。」


どうやら私は720年の間に少々せっかちになったようだ。食事や睡眠等が魔法により必要なくなったので焦る必要はないが。とりあえず私の使える魔法の中から吹っ飛ばせる魔法を探す。


「これは駄目か?」


いくら吹っ飛ばすと言ってもさすがにこの空洞に被害が及んで埋められるのは望んでいないので「爆裂系統」の魔法は使いたくない。かといって使える魔法等あまり...


「ねぇな。」


そう、無いのだ。ほとんど被害が大きくなる未来しか見えない。私が忘れているだけかもしれないが無いのだ。


「う~?」


何も思い付かない。


「あ~あ~?」


何かしら声を出せば思い出すかもしれない。そう思い唸る。


「お~?」


・・・端からみたらヤバイ奴だな。


「あぁ~!」


そんなことよりあった。丁度良い魔法が。

そう、「転移魔法」だ。先程「時空系統」を使ったのだから対となる「空間系統」の「転移魔法」も使えるよなってことなのだ。思い出したので早速使う。


「早速、『空間系統魔法・転移』」

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