第10話冒険の前にはちゃんとした準備と訓練をします。その2

(では、続けます。これからのスケジュールですが・・・まずは二人の服を買います。)

(やったぁ〜)

サーヤとリールの声が響く。

(防御力を高める服ですよ。この村で一番いいものを買います。)

ニコニコ話しをする二人に山田は言った。(服を買ったら、薬草、毒消し、食料、水、聖水などの道具を買います)

(わかりました。)とサーヤが答えた。

(冒険の準備ができたら、村の近辺でスライムなどの魔物と実戦を積みます。)

二人の顔が少し緊張した。

(二人とも天性の素質があり、スライムとかはレベルが低いかも知れませんが、まずは練習から・・)

二人なら、本当に練習はいらないだろう。

(慣れたら、もう少し強い魔物と連携攻撃の練習をします)

(私たちは、大丈夫だよね)とリールがサーヤに言うとサーヤは小さくうなずいた。

(それから、われわれは北の森へ向うというスケジュールです。ここまでで質問はありますか?)

(服はいつ買いに行きますか?)とリール。

(この会議が終わったら、行きましょう)

(スライムとの戦いはいつごろでしようか?)とサーヤ。

(服と道具を買ってからなので、明日くらいかな)と山田。

こうしたやり取りに、山田はちょっと感動していた。俺の説明をちゃんと聞いてもらえているんだ・・・嬉しい!

サーヤとリールの会議中の態度は、普通なことかもしれないが、山田には、それが嬉しかった。

転生前は、何かを始める前に上司にいきなり資料をつくらされる。

(そう・・・なったから!!)

とよくわからない理由で。特に説明もなく。

その後、上司たちのクレー厶まがいの修整指示を受けて、山田は疲弊する。

同時並行で、山田は参加メンバーの日程調整、会場の確保、資料の準備、セッティングもする。

こうした作業は他のスタッフも分担すると山田は聞いていたが、上司は分担するスタッフに何も言っていないので、誰も知らない。

苦情を言うと、

(担当がするのが当たり前だっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ)

と恫喝され、いつのまにか担当にされている。

更に疲弊して、当日の受付をし、会議の冒頭の挨拶、司会進行、資料の説明をして、最後は報告書も作る。

それでも会議中、参加メンバーはほとんど話しを聞いておらず、担当は山田と認識されて、基本的に丸投げされるだけだった。

そんな会議でも、資料中に他のメンバーへの役割分担を記載した際は、

(こんなこと、聞いてない)

(今は忙しい)

(こんなことをする必要がない)

(一番詳しい人がすべきだ)

などの盛り上がりをみせるが、最後は担当が頑張れで終わる職場だった。

だから、サーヤとリールがこんなに素直に話しを聞いてくれて、真剣にやる気をみせてくれることに山田は涙ぐみそうだった。

この二人こそ、危険な冒険の旅を断ってもいいのに、村のためにと思う気持ちが山田の乾ききったこころに染みる。

(俺、この子たちのために、ベストを尽くそう・・・)

そう誓う山田であった。






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