第6話「気がついたら」

 Side 冴葉 ヒカル


 気がついたら自分は田舎町の門前(もんぜん)町の神社に来ていた。


 しかも傍にはソフィアさんやアイヴィスさんまでいる。


 自分の衣装も今は学園の制服であるせいか田舎町の景色にかなり浮いていた。


 と言うか銃刀法違反である。


 取りあえずどうするべきかと考える。


「あ、元の世界と行き来できるみたいですよ」


「本当だな」


「え?」


 更に衝撃の事実が襲い掛かる。


 言われた事は本当であり、祠の中から自由自在に異世界へと移動できるようなのだ。


 まあそこからが大変だった。

 学園に戻って衣装を取りに着替えに行ったり、ソフィアとアイヴィスさんは頑なについてくると言って聞かないし。


 根が折れた自分は「せめて剣は持っていかないでください」とだけ言っておいた。

 


 門前町は田舎町ではあるが田舎町と言ってもランクはある。

 少なくとも畑だらけで道路も舗装されてないレベルではない。


 やたら畑が目立つ平凡な町でスーパーマーケットの敷地内に精米機があったりするレベルの田舎だ。

 ちゃんとコンビニとかもあるし駅もバスもある。

 そんなレベルの田舎だ。


 だから問題が。

 自分はともかく、ソフィアさんとアイヴィスさんの二人がとても目立つ。

 それも海外のファッション誌の表紙飾れそうなレベルのとんでもないレベルの美女なのだ。


 芸能人のスカウトでこの二人に注目しないのであれば失格なんじゃないのかってレベルで。

 いや、逆にもう既にどっかの事務所と契約しているのか背後関係を洗うところから始めるかもしれないが。


 それに幾ら田舎だからと言ってもSNSぐらいは普及している。

 彼女たちの事が町中に広まるのも時間の問題だろう。


「やはり、人払いや認識阻害の魔法は使っておいた方がいい感じですね」


 ソフィアさんがポツリとそう漏らす。


「そうだな――初歩的なレベルだがこれである程度は――」


 アイヴィスさんも何かしらの魔法を使っているようだ。


 ・・・・・・異世界の魔法って凄いね。

 


 取りあえず広々とした我が家に辿り着く。

 庭付き二階建てで塀に囲まれた家。

 警察がいない事を見計らい、チャイムを鳴らす。


「どちらさまでしょうか?」


「あの、冴葉 ヒカルです――ちょっと込み入った事情があって――」


 あ、家が騒がしくなった。

 家の玄関が開き、そこからメチャクチャ若作りした美人ママ。

 クレセント女学園の学園長エレジアさんに何処となく雰囲気が似通っている。

 もとい母さんが現れた。後ろにはお父さんや妹もいる。


「ちょっと心配したのよ!? 一体何処にいたの!? 必死に捜して――」


 泣きながら飛び出してきた母さん。

 思い切り抱きついてきた。

 母さんはソフィアさんとアイヴィスさんを見て、納得がいったかのように「あ~そう言う事ね」と一人納得した。



 リビングで緊急の家族会議が始まる。


 とりあえずこれまでの経緯を説明する事になった。


「つまり異世界に行って帰って来たと――」


「母さん、幾ら何でも要約しすぎです」


 などと一人母さんは納得していた。


「ねえねえ、兄貴~イケメンいた~?」


 呑気に妹はそんな事を聞いてくる。


「あ~リカ。女学園だったからイケメンの人はいなかった」


「クソ、頭の悪いハーレムラノベは流行らないんだぞ」


 リカ。

 そんな事言われても実際そうなんだから仕方ないだろう。

 

「お父さんからは何か一言は?」


「あ~お母さんの事もあるからな」


 何か事情を知ってそうな雰囲気だった。


「お母さん知ってるんですか?」


「そりゃそうよ。お母さん異世界人だし」


「え?」


 なんか衝撃の事実を明かしたぞ。

 ソフィアさんもアイヴィスさんも流石に呆気に取られた様子だった。

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