第3話「襲撃その2」

 Side ロザリア・ローゼス


 私のスカーレットドレス。

 

 そしてアイヴィス先輩のヴェノムトゥース。


 後方から私達に続くように教師や自警団のマジックメイルが続く。


 敵は魔獣。


 黒い獣とも呼ばれる存在。


 普通の生物とは異なる戦闘的な存在。


 ワイバーンや人型で角に悪魔の羽を生やしたタイプ、オーガタイプなど様々な種類がいるが今回は数が多い。


 何者かの手引きによる物でしょう。

 

 手に持ったランスから魔力弾を乱射して敵を殲滅。


 敵の火炎弾や魔法攻撃に対してはスカーレットドレスの機動性でどうにかなりますわ。


 地上ではヴェノムトゥースが敵の大型の魔獣を次々と屠っております。

 まるで生き物のように変幻自在に延びる蛇腹の剣が通った後には屍しか残らず、接近戦に持ち込まれても左腕の黄金のかぎ爪で引き裂かれてしまう。


 シンプルな機体ゆえに強さが一目で分かる。


 流石アイヴィス先輩ですわ。


 私も負けておられませんわね。


 背中の翼、六枚展開。

 まるで浮遊する赤い羽のようになる。

 思考誘導で翼から多方面から魔法弾を前周囲に発射して一気に殲滅。


 この程度の数で学園を、私達を落とそうなどとは甘い考えでしたわね。


 

 Side 冴葉 ヒカル


 外では激戦のようだ。

 ここまで轟音が響いてくる。

 格納庫には避難してきた生徒達が集まり、中にはマジックメイルを身に纏って出撃する子もいた。


 ふと、自分は青と白の機体に目をやる。

 見た事もない機体だ。

 盾と大きな剣しかない。

 あまり整備されていないのか少し埃っぽい。

 

 それに吸い込まれるように触れると――


(なんだこの不思議な感覚は?)


 機体――


 マジックメイル――


 セイヴィア――


 必要魔力到達値――クリア――



 Side ソフィア


(あの機体を動かしている?)


 突然の出来事でした。

 少し目を離した隙にあの欠陥機――必要な適正値が高すぎるゆえに放置されていたマジックメイル。


 それがセイヴィアが作動しているのだ。


 どう言う事なのだろうかサッパリ分からなかった。


 更には――


(機体と同調している? ここまで完全に?)


 機体との同調。

 完全に己の手足とする技術。

 初めて触れた機体にも関わらず――余程機体相性が良いのだろう。


 運命。


 そんな言葉を信じたくなるような光景でした。


 彼はこの日、この時のためにこの世界に迷い込んだのではないかと。



 Side ロザリア・ローゼス


 今回に限って数が多いですわね。


 これはもう何者かの手引きだと考えて確実ですわ。


 負傷者も出て後方に下がって。


 敵はどんどん増えて。


 先が見えない状況。


 よくもまあこれだけの戦力を掻き集めた物ですわ――


 ですが私は退きません。


 ローゼス家の者として。


 学園の守護者たる者として。


 何よりも私の誇りに懸け――


「え――」  


 突然姿を現した青と白のマジックメイル。

 右手には大剣。

 左手にはシールド。

 素人のような動きで、圧倒的な力と素早さで強引に敵を薙ぎ倒していく。


 続いて白い聖騎士のようなマジックメイルを身に纏ったソフィア先輩が現れた。 


「アレは? ソフィア先輩? どうなってるのですか?」


「分かりません――サエバ ヒカルさんです」


「アレに? あの何処とも素性が知れない人間が?」


「はい」


 デタラメな軌跡を描く閃光。

 その閃光が通り過ぎた後は魔獣は残らない。

 速い。

 速すぎる。


「今の彼は機体に完全に同調――いや、機体に呑まれている可能性が高いです。連れ戻そうとして追いかけてきたのですが速すぎて――」


「そう言う事でしたか・・・・・・」


 ソフィア先輩を振り切り、縦横無尽に暴れ回っていた。

 あの無尽蔵かと思われた魔物の群れも気がつけば残り僅かになる。


「ともかく、数は大分減りましたわ!!」


 そう言って私は強気に打って出ました。

 あの殿方に聞きたい事も沢山ありますしね。


「ソフィア、ここまで来たんだから手を貸して欲しい」


「分かりましたわ」

 

 アイヴィス先輩の言う通り、ソフィア先輩の手も借りたい。

 ソフィア先輩のマジックメイル、ホワイトリリィは空中汎用型。

 ですがホワイトリリィは専用機でソフィア先輩の腕があれば汎用型でもとんでもない性能に化ける。


 それに戦況は最早掃討戦。


 消耗しているとは言え、私とアイヴィス先輩がいればどうにでもなりますわ。

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