第1話「ようこそクレセント女学園へ」

 Side 冴葉 ヒカル

 

 先日の夜もそうだったが改めてマトモな食事を出された事に驚く。

 運んできてくれたのはソフィアさんだ。

 後ろにはアイヴィスさんもいる。


「あらあら。男の人だからよく食べるんですね。少し多目で正解でした」


「あんまり親しくし過ぎるといらん誤解をされるぞ」


「大丈夫です。私はこう見えても強いんですから」


 と、ソフィアさんは昨日も言っていた言葉を言う。

 僕はと言うと、とんでもない美女二人にドキドキしながらも食事をする。


「あらあら、そんなに慌てなくても大丈夫なのに?」


 ソフィアの様子にアイヴィスはハァと溜息をついて


「異性に慣れてないんだろう・・・・・・」


 と正確な答えを導き出した。


「あらそうなの?」


「だからお前は危なっかしいんだ」


「ふふふ、アイヴィスったら何時もそんな感じなんだから」


「まるで私のお姉さんみたい・・・・・・か?」


 ソフィアが言おうとしたらしい言葉を先んじてアイヴィスが言う。


「このやり取りも何度目かしらね」


「ふん――」


 アイヴィスは照れながら顔を逸らした。

 この二人、仲が良いんだなとか思った。



 学園長質に案内された。

 そこには美人の赤味掛かった首元まで伸びた茶髪の学園長、エレジアさん。

 黒い外陰に白い制服衣装。

 その衣服越しからでも分かる程のナイスバディな美人先生だ。

 

「あらあら、ソフィアちゃんはすっかり仲良くなったのね?」


「はい。そんなに悪い人じゃなさそうです」


 と、ソフィアさんは満面の笑みで言う。


「それって勘?」


 学園長にそう言われたが――


「はい。私の勘はよく当たるんです」


 と、返した。

 アイヴィスは「はぁ・・・・・・」と溜息をついた。


「うーん。だけど悪い子じゃなくても悪い事をしちゃったし、それにお話も気になるからもうちょっと監視を続けてくれる?」


「本人の目の前で言う事かそれは?」


 と、僕の意見をアイヴィスさんが代弁してくれた。


「その方が不愉快にさせないかもと思って。ほら、警戒心を解くための作戦よ」


「それよりも異世界云々の話を本当に信じるんですか?」


 話題を変えて学園長にそう切り出すアイヴィス。


「うん、信じてるわ」


 即答で返した。


「学園長ですから色々と皆さんが知らない秘密を沢山知ってるんです。取りあえず此方でも帰れる方法を探ってみますから。サエバ君? 不便だと思うけど旅行に来たつもりで楽しんでね」


「は、はあ・・・・・・何かノリがお母さんに似てるな」


「あら、褒め言葉かしら?」


 なんか掴み所がない人だな。

 取りあえず僕はソフィアさんとアイヴィスさんの二人に案内される事になった。

 この学園の事がてっ取り速く、分かり易い場所へ。



 ローマのコロッセオのような場所。

 広場でマジックメイルと呼ばれる異世界版パワードスーツを身に纏った少女達が剣を振ったり、大きな銃を構えて的に向かって射撃訓練をしたりしている。

 

 空中では空を飛び回り、剣がぶつかり合い、互いの銃弾が交差する。


「本当に異世界に来たんだな――昨日はゆっくりと見れなかったけどこれがマジックメイルか」

 

 僕は熱心にマジックメイルを眺めた。


「その通りだ。我々の任務は主に魔獣に対抗するためだが、いざと言う時は国家間同士の戦争にも駆り出される。そのために訓練している」


 アイヴィスがそう言うので思わず


「君達が戦うの?」

 

 と、言ってしまった。


「昔は男の仕事だったが・・・・・・戦争の影響でな。猫の手ならぬ女も戦わねばならないと言う事だ。それに幸か不幸かマジックメイルの適正値は女性の方が高いのもあるしな」


 アイヴィスの説明に僕は――


(うわ~でた。ラノベ特有のご都合主義設定・・・・・・)


 などと思った。

 昨日も言ったが、これがラノベだったら間違いなく一次選考落選コースだろう。

  

「まあともかく色々あって、こうして女学園が誕生したワケだ」


「色々の部分はしょりすぎでは?」


 アイヴィスにそうツッコムが


「仕方ないだろう。実際そうなのだから――」


「はあ・・・・・・」


 まあそう言うのならそう言う事にしておこう。

 朝っぱらから歴史の授業がはじまりそうだ。

 それよりもマジックメイルに興味がある。


「マジックメイルって色々あるんですね」


「まあな。汎用型のラウンダー、空戦型のウィンド、陸戦型のグランなどが代表的だ。地域によっては海戦型とかあるがな」


「ふーん」


「ふふふ。お二人ともなんだかんだですっかり仲良しですね」


 などとソフィアは僕とアイヴィスの二人を眺めて微笑んでいた。

 アイヴィスが「親しげに会話したぐらいで好きだとか嫌いだとか子供か」と照れくさそうに言っていた。


「念のため釘を刺しておくが乗りたいなどと思うなよ。一応監視されてる身なんだからな」


「はーい」


「だけど、監視が解かれたら試しに乗ってみるのも――」


「そんな事せず余所の男子所帯の学園とかに放り込めばいいんじゃないか?」


「勝手にどうこうするのも可愛そうでしょ?」


 アイヴィスさんに正論にソフィアさんの意見がぶつかる。

 なんかこう、端から聞いてると弁護してくれたり助け船出したりしてくれるのはありがたいのだが、何だが頭が痛くなる会話だ。


「だけど言ってはなんだが覗き犯だからな?」


「なら私が手取り、足取り教えて自立出来るように面倒見ます」


「なんでそうなる!?」


「そうしたいからそうするだけです」


「はあ・・・・・・なんで悪い男に引っかからないのか不思議だ・・・・・・」


(あ、それ自分も同意です)


 アイヴィスさんの意見に心の中で同意した。

 

「あら、こんなところにいましたのね。覗き魔さん」


「え?」


 ふと、金髪ツインテールでツインテールの部分がロールしているどっかで見たことあるような胸の大きい気の強そうな女の子が現れた。

 制服に剣を腰にぶら下げているからこの学園の生徒なのだろう。


「私はロザリア・ローゼスですわ。覗き魔さん」

 

 と、挑発的に自分の名前を名乗る。


 この出会いがとんでもない事に発展するなど、僕は予想だにしなかった。

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