第5話

文字通り手ぶらで来た俺達は、集合場所でお喋りをしていた。


この旅行のメンバーは転生者、トップ冒険者、それらからコアカードを買い取れるスペシャルなお金持ちである。

俺は転生者、武光はトップ冒険者、俺らの会社を乗っ取りした橋田はスペシャルなお金持ちだ。


第二回の旅行の事もあるので、主催者の冬月 健吾がせっせとリストを作っていた。


ダンジョンコアネットワークだが、既に関係各所から探りを受けていて、ダンジョンコアの持ち主なら誰でも入れるとする事になった。

メンバーを絞ると、入れなかった人がなんとか入れるようにムキになって画策をするからである。


今もう、既に転生者以外からマウント合戦などが発生しており、触れるのを嫌ったとも言う。


もう解散しちゃえよ、という意見も出たが、クランから派生した会社連合システムは法律的に便利だし、転生者だけの連合を作ったらそこが狙われるのは明らかなので、あえて入りやすいクランを作って、その中で「特に仲良しなグループ」とする事にした。仲良しグループなら好悪で選んでても仕方ないからな。


この旅行中に「転生者グループ」と「転生者と信頼できる仲間グループ」で連絡網を作る予定らしい。

橋田は俺達の大好きなVRゲームを握っているので、それを盾にこの連絡網にもねじ込んできそうで怖いが……。あそこに頭下げないと、特許の関係上ゲーム開発すらできないんだよな。俺達が開発したのに。

 そもそも頭に直接接続する装置だから、政敵の管理するそれに接続するのは馬鹿そのもの。現にヒヤッとした事だってある。まあ、開発段階で政府に危険性は周知して、そうそう簡単に悪用できないようにシステムと法整備は構築しておいたけど。

 つまり、機械のVRゲームは俺達はずっとできないことになる。開発したのに。

 駄目だ、この事について考えると腑が煮え繰り返る。せっかくの旅行なのに。

 マスコミにも連絡がいってて、ぱしゃぱしゃ取られてるのがうざい。


「これはこれは、八城さん、春川さん。まさか貴方達がこれほど有能な冒険者だとは思いませんでしたよ」


 爽やかな好青年面で話しかけてくる。こいつ。こいつマジか。武光がスキルを使おうとするのを抑える。


「会社の資産にダンジョンの成果物を入れておいてくれても良かったのに」

「必要な分だけ成果物を換金してから資金にしてたんだよ。おかげで助かった」

「あんた、いくら何でも厚顔無恥すぎない? 会社の乗っ取りしておいて、まだ足りないって?」


 見かねた転生者の女の子が俺達を庇うべく、前に出る。


「ありがとう、でも大丈夫です」

「武光さん……」

「会社の乗っ取りとは人聞きが悪いですね。経営手腕が杜撰すぎただけでしょう」

「お前っ」


 あかん。今度は俺が武光に止められる。


「喧嘩ふっかけるんだったら残ってもらうけど? ダンジョンカード持ってるやつご招待って言っちゃったから来て良いって言ったけどさ。そもそもこの企画は武光さんと咲也さんの元気づけに企画されたもので、あんたはただの参加者。そもそも無料で旅行に連れてってやる義務なんてないんだし」

「私は我が社の評判を落とそうとされて嗜めただけですよ」


 冬月が慌てててやってきて言う。


「まあまあまあまあ! スポンサーもこう言っている事だし、橋田君も控えたまえよ。盛大なオープニングイベントを終えたばかりだし、今後は運営もあるだろ? 評判を落とすことはないじゃないか」


 止めたのは、参加者でもある、大企業の人だ。ダンジョンの農場化もしているって話だ。

 橋田はそれで矛を収めた。


「冬月君。全員集まったよ」

「じゃあ、荷物配布して」


 鞄を配っていく。


 短剣と剣帯、コインを入れたポーチ。会話辞書。それに数字の書いたワッペンだった。


「治安の悪い所だから、護衛の人と、くれぐれも! 喧嘩しないように! 護衛の番号はワッペンに書いてあるから」


 そして、クリーンの魔法を掛けられた後、並ばされる。

 冬月が何もない場所に鍵を差した。


 扉の先は、異世界だった。

 大きな城塞都市の外で、番号を書かれたワッペンをした種族がさまざまなものが並んでいる。

 俺と武光の相手は翼人と機人だった。

 俺は自分達と護衛の皆さんに翻訳魔法を使った。


『よろしくお願いします! その羽格好いいですね! 俺、昨夜って言います!』

『うわあ……! 初めまして、武光です。よくヒーローに似てるって言われませんか?』


 俺と武光はぴゃあああああっと護衛の所に行く。


『俺はイーサンっていうんだ。翻訳魔法使えるのか。良かった。今日から三日間、好きな場所に案内してやってくれって言われてる。どこ行きたい?』

『私はALS022です』

『『魔法みたい!』』

『よし任せろ。闘技場に連れて行ってやる』

『演劇なんかも良いのでは? 魔法がふんだんに使われてますよ』

『両方行きたい!』

『グルメなんかも楽しみたいです!』


 マスコミがすごい勢いでパシャパシャ写真を撮っているが、冬月がなんとかするだろう。

 三日騒ぎに騒いだ後、余ったコインを全て渡した。


 帰りは集合場所で冬月が鍵を使って帰った。


 その後、転生者のみの会議に呼ばれ、もちろん参加した。

 冬月の使った鍵は使用回数制限があるとかで、可能な限り俺が鍵を使う事を約束した。


 改めて日帰り旅行にも出た。

 今度は団体旅行で、演劇を見てショッピングして夕食を楽しむというコースで親睦を深めた。

 護衛の人達に沢山お土産を買った。


 冬月が使ってた鍵は用途不明のはずれアイテムとされていたらしく、めちゃくちゃ高騰したという。


 目一杯遊んだから、次は仕事しないとね。

 ダンジョンで当座の資金を稼ぎ、次はダンジョンコアにプログラムを施す事とした。

 インスピレーションは大量に沸いてるので、俺と武光はダンジョンコアを前に頑張ってプログラムを愛しした。


 一年後のゲームフェスティバル開催の手続きをして、後は締切に向かってがむしゃらに作るのみ!


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チートなダンマスはVRゲームを開発したい @yuzukarin2022

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