第3話

さて、妖精王と絡繰王はまごうことなきSSRのスキルである。

だが、最初から使えるわけではない。熟練度矢手順というものがあるのだ。

まず、王シリーズはスキル保持者がモンスターを落とすとドロップするカードが稀に増える。

それを集めて配下を増やしていくというクッソ面倒な仕様なのだ。

しかし育てるとめちゃくちゃ強いけどね。


「絡繰王って初めて聞くスキルですね」

「俺が知ってる。特殊カードをドロップするようになって、それを集めるんだよ、確か」

「絡繰ってぐらいだから、パーツとかですか?」

「そう。大器晩成スキルだし、しばらくは黙ってた方がいいよ。昨日もなんか治安悪かったし」

「あそこは特別悪いんですよ」

「そうなの!?」

「今日行くダンジョンは、公務員の方々も訓練してますし、治安がいいですよ」

「そっかぁ。あっ 俺、家出たから」

「えっ 生活費は?」

「今日稼ぐ」

「カード売った方が良かったのでは?」

「本当にやばかったら奥の手があるし」

「それなら良いですが……」


 ダンジョン、「冒険道場」につく。

 人がかなり賑わっていた。なるほど、いかにも軍警っぽい人たちが多い。


「隠しルートがまた見つかったらしいぞ」

「またか? ここ一年おおいな。ダンジョンの活性化が起こったり」

「新しいダンジョンが発見されたそうだぞ!」

「なんだと!?」


 なるほど。俺以外の転生者が活動しているな。そりゃそうか。

 入賞者は、えーと、全部で108人だった気がする。

 一人でいくつも応募が当たり前だったから、入賞したダンジョンはその10倍くらいだったが。

 俺も70近く応募して、50近く入賞してたし。現代世界向けのダンジョンはそのうち20くらい。

 5つはもう攻略されすぎて枯渇して消えてる。

 稼働終了したダンジョンしか名前が表示されない為、後は記憶を頼りに動くしかないが。


 確か、転生先は90人くらい中世ファンタジーを選んでた気がする。

 現代は20人ほど。ちょっと変動あるかもだが、それだけ圧倒的に中世ファンタジーが人気だった。


 ということは、他に20人くらい、俺と同じチート持ちがいるってことか。

 当然、ダンジョンの知識もある。そして、他の人たちがそれを知って集まってくる。


 うーん。まあ今日は数狩るか。

 その後普通に狩りをした。


 剣術スキルカードがドロップした。


「凄いですね、結構人気な奴ですよ」

「高く売れる?」

「売っちゃうんですか?」

「適性率低いもの。0.3%だぜ?」

「私だって2%です」

「山分けしようぜ」


 50万円で売れたので、山分けした。

 

「昨日もスキルドロップしたし、ドロップ率良いですね」

「まあね」


 妖精王はドロップ率若干上昇するのだ。

 ちゃんと「妖精の種」や「パーツ」もドロップしている。

 俺は途中でスキルポイントが貯まって新たなスキルを得たことにした。

 スキルポイント貯まるの早いと言っていたが、適性率がすごく良かったことにした。


 早速、帰り道でパソコンとマイハウススキル用のネット端末、携帯を買う。

 メディアリテラシー!

 これで噂話とかも収集できるぜー!


 マイハウスにセッティングして、久々にネットを楽しんだ。

 勉強のための資料も必要だし、ゲームも欲しいし、服だっていとこのお下がりだけだから買わないとだし、あっという間にお金が飛んでいくな。

 

 それから、ダンジョンをちまちま攻略して、お金やカードを貯めて行った。

 卒業と同時にクランを結成する事にする。そうするとパーティー口座が持てたり、税金面でも色々優遇措置があるので。起業は大学を卒業してからでいい。

 

 そして、3月。

 俺と武光はめちゃくちゃ浮き足立っていた。

 とうとう最初の配下を作るのだ。武光なんかはこの日の為にパーツを厳選していた。

 

「それでは! 行きます!」

「おおー!」


 二人でそれぞれ、栽培セットのカードとパーツのカードを掲げる。


 俺の前に植木鉢が現れ、武光の前に大きなプラモの部品っぽいものがどさどさっと落ちてきた。


「なんか想像と違います……」

「育てるぜー!」


 ということで、配下を育てます。まずは水やりから!

 水やりを終えると俺の本日のお仕事終了なので、武光の部屋で勉強をする。

 武光はパーツを見てああでもないこうでもないと組み立てていた。


 視線を感じると、ドアの隙間からでっかいのとちんまいのが覗いていた。兄弟かな?


「武人(たけひと)様。武流(たける)様。どうなされました?」

「!?」

「武光。何してるの? それ、スキル?」

「随分と変わったスキルのようだが」

「ええ、パーツがドロップしてそれを組み立てるというスキルです」

「見てていい?」

「ロボットは好きだ」

「お二人のお好きなようになさってください」


 うわあ。そっか、武光は異能がないから。名家って大変なんだな。武光が礼儀正しいのって、そういうのもあるのか。


「君は武光の友人か。ルームシェアをすると聞いたが」

「はい」

「ゲーム作りをする為の資金をダンジョンで集めるそうだが。うまくいくのか?」

「怪我しない? 武光弱いもん」

「二人ともテイマー系ですし、無理はしません」


 俺も丁寧に受け答えする。


「しかし、それで稼げるのか?」

「ダンジョンで稼ぐのはあくまでも生活費と資料費で、基本は特許で稼ぐつもりです。それぐらい出来ないなら、VRゲームの開発は無理です。医学部に一発で入学できなければ、スッパリ諦めて次善のプランを立てる事にしますよ」

「困ったら早めに相談してほしい」

「ありがとうございます。でも大丈夫だと思います」


 腐ってもここより文明の高いところにいたのだ。VRゲームの製造についての知識もかじったことがある。

 絶対に再現してみせる。


 それにしても良い兄弟だな。羨ましい。

 それから一ヶ月後。


 無事、初めの一体が組み上がった。


「名前はタケルです」


 絡繰人形が礼をする。


「よろしくな、タケル」


 植木鉢の花も開花し、中から黒髪の妖精が現れた。

 早速名付ける。


「シャドウだ」

「よろしくお願いします、シャドウ」

「よろしく、武光、タケル!」


 妖精がヒラヒラと飛ぶ。

 その日はクラン結成のお祝いを武光の家族と一緒にした。


 こんなに楽しく騒いだのは、今世で初めてだった。

 

 それから、俺達は3年間+大学の8年間頑張った。びっくりするほど順調に行き、俺は医大、武光は理工大に進み、無事資格を取得できた。資格が医師資格だけじゃ足りなかったため、武光には物理学を専攻してもらった。ダンジョンも何度か踏破した。

 おかげでVR装置は無事完成。宣伝も終わり、後は配信するだけ……の所で、乗っ取られてしまった。

 特許も何もかも、会社ごと取られてしまい、借金だけが残された。

 びっくりした。今でも何されたのかわからない。


「どうしよう。どうしよう。どうしよう」

「こうなったら思い出のダンジョンコアを売るしかないですね」


 探索の成果物はクランの物なので、基本的に会社に預けてなかったのが助かった。

 そもそも申告してないのも多いしな。ダンジョンの成果物は売り買いだけ完全に国に管理されている。

 逆に言えば売り買いさえしなければ、個人でいくら所有していても問題はない。

 特に初めて得た冒険道場のダンジョンコアは、社に祀るほど大事にしていた。


『お待ちください。そのVRげぇむとやらは再現するので、どうか売らないでください!!』


 お待たせしました。

 ここからが本編である。

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