第2話

家に帰ると、部屋に篭る。

前を向いた俺は、副賞を見ることとした。

嬉しそうに頭の中で跳ねるプレゼントボックスを開ける。


副賞

ダンジョンポイント 1200万DP

ゴールドポイント 1200万GP

ダンジョンコア(大) 1ダース

スキルチケット 12枚

アイテムチケット 12枚

モンスターチケット 12枚

スキルガチャカード 120枚

アイテムガチャカード 1200枚

モンスターガチャカード 120枚

スキル「妖精王」

邪神セット

邪神のショップカード

界渡りの鍵


稼働終了したダンジョンの報酬

2,039,676DP

2,039,676GP



ダンジョンポイントはダンジョンのエネルギー的なもの、ゴールドポイントはショップで使えるポイントだ。

チケットは指定のものが得られる引換券で、副賞の中では邪神系の次に凄い。邪神系とどちらが凄いかはわからない。それほどすごいアイテムだ。

ガチャカードはたまに流通に乗っているので、金策に出来そうだ。

ダンジョンコアに突っ込む事で報酬や配下にも出来るし。

妖精王は妖精を使役できるかなり強いスキルだ。

邪神セットは、装備品と邪神スキルだった。

ヴェネチアンマスクに羽根の生えた衣装で、いかにも妖精っぽい。

邪神のショップカードに触れると、ショップが頭の中に浮かび上がった。

後は界渡りの鍵。


実は、設定……事実だったわけだが……されていた世界は、異能系現代ファンタジーと、剣と魔法のファンタジーの世界だった。鍵はその行き来の為のものだろう。

キャラクリエイトの際も、どちらか選ぶことになっていた。

圧倒的にファンタジーが人気だったが……。俺は、敢えて現代で作ったんだった。

適性が魔法回避タイプのトリッキーなキャラで、異能は光の矢。それと、デフォルトのアイテムボックススキル(小)とマイハウススキル。


こう並べるとものすごいチート感があるが、コアにはGPが紐づいていて、ダンジョンコアはダンジョンクリア報酬に普通にある。コアを介せばショップも使える。

DPについては、コアと契約をしたダンマスならば微量ながら生産も出来る。MPみたいなものだ。

確認した所、俺の場合は最大1000DP。MPみたいなものでそれ以上貯める事は出来ないが、毎日コアに泊まり込みでちまちま注ぐ事はできる。副賞を持たずとも賄えそうではある。

回復には十分な休息が必要なので、使えるのは一日1000DPが限度。

うん、今日からコアにちまちま注ごう。使わず腐らせるのは勿体無い。


ガチャカードもチケットも存在は確認されているし、アイテムでもスキルでもマイハウス系はある。妖精王も最上位スキルとはいえオンリーワンではない。

なんならカードなんてSSR限定ガチャとかもあるくらいだ。


界渡りの鍵は回数限定とはいえ、一定以上の難易度のダンジョンで報酬指定されたアイテムだし、ショップのラインナップは見てないが、それと邪神セット位だろうか、俺オンリーなのは。

直、ステータス鑑定というスキルはあるが、上位のスキルは見破れないので邪神スキルもその意味では安全である。


なので、とても使いやすいチートと言える。


適当にダンジョン探索したフリをしてこれらを出せばウハウハなのだが、不測の事態があるかもしれないし、頼らないで済むなら頼らない方がいい。

ちょうどいい金策となると、やはりダンジョン探索は避けられないのだろうか。

ダンジョン探索の実績を積んでおくと、いざという時アイテムが売りに出しやすいし。


いつまでもチートを封印するつもりはない。

VRゲームの開発を機体から開発するのだから、莫大な資金がいる事は確かなのだから。


後は、武光がどこまで本気かと現在の技術がどこまでいってるのかだよな。


それは明日見せてもらおう。


マイハウスにベッドと机がある事だけ確認して、俺は眠りについた。




翌日、早速武光の家に遊びに行った。

武光の家は家というか屋敷だった。

古い家柄らしい。武光にはないが、異能を持って生まれる者も多いとか。

部屋には、ゲーム、パソコン、VRゲームやダンジョンの資料がたくさん置いてあった。


「高校生からとれる奨学金の資料はこれですね。私も家を出る予定なので、シェアハウスでもします?」

「大検取ってダンジョンに潜って学費と生活費稼ぐのは?」

「心境の変化ですか?」

「そう」

「考えたんですけど、相性のいいスキルが見つからなかったんですよね、私。それでも低階層なら行けますけど」

「なるほど」


 スキルはスキルカードから得る。カードを手に取ると適正率が出るのだが、これが高くてスキルポイントを持たないとスキルは得られない。スキルポイントはダンジョン攻略をすると得られる。

 なお、ガチャカードはその人が使えない物は出ないので、適正を見るのには適していたりする。


「VRゲームの資料とか見せてもらってもいい?」

「どうぞ」


 見せてもらうと、驚くほどきっちり調べられていた。

 VRゲームに使えそうな技術を持っている企業、テコ入れの必要な技術、論文。

 もちろん、ゲームの企画も。


 読んでいて、ワクワクした。

 ちゃんとモンスター一匹一匹デザインされていて、目を閉じれば情景が浮かんできそうだあった。

 武光は、ゲームクリエイターとしても、VRゲームの立役者としても、きっと大成すると信じられた。


 ダンジョンの資料を読めば、ダンジョンの事を思い出せた。武光は本当によく調べていると思う。

 そうだ。俺のダンジョンはもちろん、他のダンジョンも散々遊びにいったから覚えてる。

 そもそも、この世界にあるダンジョンはコンテストで入賞した有名所ばかりなのだから。


「休日に、ダンジョンに行かないか?」

「切り替えはやっ 良いですよ」

「ここ行きたい」

「良いですよ」


 俺の作ったダンジョンではないが、危険が少なくスキルガチャカードを得やすいダンジョンを選択する。

 

 入場料と交通費が必要だな。10歳までの時に父さんと母さんが口座に入れてくれていたお金も尽きかけていたし、いくら何でも家を出る時には資金をくれるだろう。伯父さんに前借りするか。

 後は、今度は俺の価値を示さないと。


 俺は帰って、伯父さんに独り立ちの準備のためのお金が欲しい事を告げた。


「ああ、ほら」


 伯父さんがくれたのは2万円。


「一ヶ月の生活費にもならないけど」

「なんだと!? 感謝どころか文句をいうとはとんでもない奴だ! そんな奴には一銭もやらん!」

「ああ、そう。父さんと母さんの遺産はどうしたの?」

「それで十年も食わせてやっただろうが! 今出て行ってもらっても良いんだぞ!」

「そう」


 両親が死んだのは10歳の時で、今俺は15歳。2倍の年月を言ってきた。

 ここ五年、俺が家事をしていた。遺産だって奪われた。もう良いんじゃないか?


 部屋に行って、鞄に着替えや参考書、筆記用具などの荷物を詰め込む。

 残金は五万円。休日まで十分に持つ。

 父さん、母さん。10歳の子供の口座に、5年間持つだけのお金を入れてくれていてありがとう。


「お世話になりました」


 深々と頭を下げる。

 そのまま家を出て、マイハウスのスキルでマイハウスに転移して寝た。

 

 それから、二日後の土曜日。

 武光と電車に30分ほど揺られて、一万円の入場料を払い、一万円のカードホルダーを買ってつける。

 スキルガチャカードが最近たくさん出ているらしく、人で混んでいた。

 武光は刀を持っていた。服もちゃんと防具らしい。俺は普段着。


「私はスキルないんですよね。ダンジョン初めてだから、咲也くんもないですよね?」

「実は両親から貰ったカードがあるんだ。後はスキルポイントを貯めるだけ」

「では、ダンジョンの入り口で練習しましょうか」

「そうだな」


 異能の練習をする。

 矢を放つと、一撃でツノ兎が肉のアイテムカードになった。


「良い異能ですね」

「装備ないから助かった」


 それからしばらく狩りをする。人のドロップしたカードをちらちらと見ている人もいて、横取りする気満々っぽいなこれ。


「もうちょっと人がいない所に行かない?」

「いえ、逆に今日は広場から出ないようにして狩りをしましょう」


 お互い、同じ人に視線をやって答える。

 なるほど、人目がないところも危険、と。


 治安悪っ


 それから、1日入り口辺りで狩りを続けた。

「跳躍」のスキルカードが出たけど、案の定取られた。

 武光が抗議してくれようとしたけど、止めた。

 

「もうそろそろ帰らないとですが、スキルポイントは貯まりましたか?」

「うん。そろそろ家に帰ってスキルカード使おうかな。その前に武光の家によって良い?」

「良いですよ」


 そこで、後ろの方にいた男が舌打ちする。


「ちっ 家かよ」


 どうも視線があると思ったんだ。危なかったな。

 ダンジョンから出て、二人でカードホルダーをそのまま買取施設に預けた。

 どうせ大したものは出ていない。

 

「13067円と20127円になりますが、宜しいですか?」

「「お願いします」」

「最初から黒字は凄いですね。カードホルダーはずっと使えるものですし、凄い異能です」

「交通費考えたらトントンだけどね。明日も行かない?」

「また此処ですか?」

「道場ダンジョンに行きたい」


 電車に揺られて戻り、武光の部屋まで向かう。

 武光が飲み物を持ってきてくれている間に、スキルガチャカードを置いた。


「それがご両親の遺産ですか?」

「ん。アイテムボックス(小)とマイハウス。ルームシェア出来るね。後もう一枚あるけど、ポイント貯めないと。これは君の分」

「私の? こんな高価なもの、もらえない」

「じゃあ少なくとも卒業まで、毎回休日ダンジョン付き合って」

「……わかった」


 武光がカードを使うと、カードが光り輝いた。適性が片寄ってる人はピーキーなの多いんだよな。何が出るかな?


「絡繰王……適性率100%!?」

「すげえ! もう絶対使えってことじゃん。使って!」

「で、でも」

「早く」


 思った以上に凄いのが出たな。凄い特化タイプなのかも。

 スキルカードが溶けて消えた。

 それから相談して、卒業までパーティーを組み、良さそうならルームシェアをして勉強探索大検を頑張る事とした。マイハウスが広くて良かった。

 

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