第2話 俺の世界

ニューラルネットワーク。


 大は小を兼ねると云う。

 それでは小は何を兼ねるのであろうか。

 小ただの弱者なのだろうか。


 赤く汚れた大地。


 これの掃除をしなければ生活が出来ない。


 生活が出来ないとは、言葉通りである。この赤い物体は私たちを殺す。だから除去しなければいけない。


 しかし、仕事の前に食事が必要だ。


 私は食事を採りに行く。


 普段も雨は降る。雨の中に食べ物がある。私たちはそれを食べて生きている。


 しかし、今日の雨は赤かった。だから地面も赤い。


 赤い雨の日。その日は食べ物がないわけではない。しっかりとある。


赤い雨で固まった食べ物。これをしっかりと綺麗に洗浄して食べる。


 赤い物体は私たちにとっては毒そのもの。洗浄作業は半日かかる。


 半日経ち、綺麗になった食べ物。


「いただきます」


 私はそれを食べる。

 まったく味はしない。上手くもなければ不味くもない。


 この後は生活する為の仕事が残っている。

 本当、毎日毎日大変だ。

 

 仕事場に向かう。


「すまん。メシの洗浄が長引いてよ」


「ん?気にするな。そんな事よりも防護服を着てこい。今日の現場はヤバイぞ」


 数えきれない程の人たちが作業をしていた。


 数時間作業する。なかなか手強い。

 防護服が赤い塵で染まっていた。


「今日の赤い雨はひどかったな。今日は赤の除去作業だけか」


「おう。赤の除去作業だけ。でも今回のは一日で終わる量じゃないよなぁ」


「当分はこの作業が続くのか。疲れちゃうな」


「仕方がないだろう。天災に抵抗する事は出来んよ」


 作業中。ふと思う事がある。

 なぜ神は仕事を与えるのだろう。

 こんな世界が、神が創造した完全な世界なのだろうか。


 赤の除去作業を一旦中断し、仮眠をとる。


 起床後、食事の洗浄作業に入る。食べる為に働かなければいけない。


 食事の洗浄作業が終わった。


 現場で食事を取る。


 食後に軽く赤の除去作業をして帰る。


 やっと1日が終わる。意識が飛びそうになるほど疲れた。でも最高に気持ちが良い瞬間だ。



「なんでこんなに大変な世界なんだろうな。自由な時間なんて全くない」


 帰り道。赤い雨に打たれた人間が何人も倒れている。

 その人間達を見て、つい愚痴をてしまった。


「世界を恨むな。きっと俺たちの世界よりも過酷な世界は存在する。それよりはマシだろう?」


「この世界よりも過酷な世界?そりゃヤバイな」


 帰り道。

 たわいもない会話。

 少しだけの幸せだった。


 鼻に水が落ちた。


 空からの水。

 空を見た。黒い雨が降っている。


「赤い雨の次は黒い雨かよ」


 赤い雨には激痛。

 黒い雨には幻覚。


 どちらの雨も危険である。


「神は試練しか与えないのかな」


 私は愚痴のように呟いた言葉。


「違うよ。神は、試練を乗り越える力を与えてくれるはずだから」


 ジンマシンが出る言葉。


 赤い地面が、黒い雨により紫に変わっていく。この地面を見ながらそんな事が言える人間は尊敬に値する。


 私はそこまで人間が出来ていない。





 コーヒーのような黒い雨が降り続く。

 その世界の人々はリセットされた。

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夜中3時。俺の世界 @colo1212

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