特別編 廊下ですれ違ったあの子は
病室を出て、病院の廊下に出た私たち。
そのまま家に帰ったはいいんだけど……。
「ねえ、何の話?」
『え、分かんない?』
私は家に帰って小学校の大親友、
「分かんない」
主語がないから何の用件なのかが分からなくて、私は正直に波香に問いかける。
『病院‼ いたでしょ、紗弥! 真夜君と一緒に! 真夜君松葉杖ついてたよね⁉ 違う⁉』
「え、あの子……波香ぁ⁉」
『そうだよ波香だよ‼ もー、なんで気付かないの! 話せたじゃん、久しぶりに三人で‼』
「といっても小学校の卒業式で四週間前会ったじゃん……」
『話してはいない!』
「…はいはい……」
何故中学校に波香が居ないかと言うと、波香は中学受験をしたから。
見事難関校に合格して、中高一貫校に入ったんだよ! 秀才っていいよね……。
『おーい?紗弥?聞こえてる~?』
「あ、ごめん」
『でさ、なんで真夜君松葉杖ついてた訳⁉』
「えっとね、今日から中学の仮入部期間に入ったんだけど、私と真夜は天体観測部入ろうと思ったんだけど、友達に誘われてドーナツ屋さん行ってね、それで帰る時に、ちょうど目の前の横断歩道を普通に真夜が歩いてて、そこに軽自動車が交差点の右側から勝手に信号無視して突っ込んできて、タイヤが真夜の足轢いて、そのまま逃走よ‼ もうありえない轢き逃げとか‼ 弱虫だわね‼ 意味分かんない‼」
『で、骨折と』
「ホント‼ アイツ許さん‼‼」
『ちょ、ちょっと紗弥? 大丈夫? 頭に血がのぼってるのが目に見えるよ』
「ご、ごめん」
一度冷静にならないと。
『でも、よかったね! 真夜君と毎日一緒に登校して荷物まで持つんでしょ? しかも同クラ? すごいよね! 運命って感じ!』
そう。波香は私が真夜が好きと言うことを知っている。
「う、運命……それ言っちゃえば、私席隣なんだけど」
『あ、そっか。まだ入学してから二週間しか経ってないから、席替えしてないもんね。プラス、紗弥の苗字が堀川で、真夜君の苗字前澤だもんね』
「うん。これは、まあ運命じゃないか」
『いやでもさ、真夜君がまず前澤って苗字に生まれて、小二に転校してきたとき、もう二人は付き合うって…』
「ああもうやめて! 恥ずかしい‼ 毎回やるなら電話受け付けないよ⁉」
『いやああああああああああああああそれはやだあああああああああああああ‼‼‼‼』
「う、うるさい‼ 耳がキンキンする‼」
『ご、ごめん』
波香はこういう噂話が大好きで、電話かけてくるたびに勝手にこの話になる。なんか逆にすごい。
「そう言えばさ、波香はどうしたの?病院なんかいて」
『え?…あー、話さないとダメ?』
「え、なになに?」
『はあ~…しょうがない、親友の紗弥にだけは聞かせてやるか』
「聞かせて!」
「…ちょっと待って、心臓が」
「え? 心臓?」
何か気になる。
『えっとね、私、何故か篠原くんと同じ中学になったでしょ?』
「うん」
『その後、ね…中学の始業式の放課後、出席番号のあれで席が隣になったのね。でね、ノートの切れ端でこう書いて来たの。放課後にボロ門来て、って』
「ボロ門って?」
『え?…ああ、200年前くらいからずっとあった門でね、全くみんな通ってなくて、人気無いの』
「ふーん。で?」
大体見当はついてたけど、聞いてみることにした。
『で、い、行ったら、告白、されて……。考えた末、お付き合いし始めることにしたの』
「お~! 最初から分かってた結末‼」
『あ、でね、その篠原くん……来矢くんが怪我しちゃって、そのお見舞いに行ってたの。大した怪我じゃないんだけどね。紗弥のこと話したら、会いたいって言ってたよ』
「ヤキモチ焼かないんだ?」
『ん、なっ……! …まあ、それは……』
スマホの向こうで顔を真っ赤にしてる波香が目に見える。
「あ、そろそろ私予習しないと! 波香、今度友達紹介し合おうよ!」
『お、いいね! 連絡、明日するね!』
「うん、よろしく! じゃね!」
『バイバイ! おやすみ』
「おやすみ」
ピッ
そうして電話を切った私たち。
私はそのまま予習を始めた。
実は……。
その日、予習、結局途中で寝ちゃって……予習、十五分だけで。
朝、起きたら机の上で…真夜との朝出る約束の時間まであと数分で、めちゃめちゃ速く準備して、家を出た。
そして、理科の時間、話の長い理科の先生がいつもよりも話が長くて、その間、寝てしまって、真夜に起こされた。
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