6 大丈夫の一言
病院の、個室のドアの前の椅子。
もちろん、目の前の個室の中にいるのは、真夜。
「紗弥様、個室に入っても大丈夫だそうです」
「は、はい」
何故か緊張してる。
何で?
私は、開かれたドアの部屋の中に、一歩踏み出した。
「紗弥…」
「真夜、怪我は⁉ 大丈夫なの⁉」
「い、いや、紗弥、そんなに慌てなくても……」
「いやでも‼ 私目の前で事故現場見たんだよ⁉ んもう逃走したあんヤロー許さない‼」
「いやなんで紗弥が怒んだよ……」
呆れた表情をする真夜。
だって、そりゃ心配するじゃん。幼馴染が足怪我したってんだから。
「で? 怪我は⁉」
「いや、ただの足の骨折だよ…」
「いや、ただじゃないでしょ‼ …って骨折⁉」
「ああ、歩くときは松葉杖。ま、そろそろ病院出るから、大丈夫。俺、何故か松葉杖手慣れててさ」
真夜が『大丈夫』と言ったとき、真夜の顔は泣き笑いの表情だったけど、気が付いていない様子で私は話を続ける。
「おかし。私が知ってた時は真夜が松葉杖持ってるの見たことないもん」
「俺も、小さい頃に松葉杖使ってたかもしれないこと自覚してない」
「マジ…」
そう言った途端、ガラッと個室のドアが開いた。
「前澤さーん、そろそろ退院ですよ。ご両親と弟さん、知り合いの方が迎えに来てらっしゃいます。準備はいいですか?」
入ってきたのは看護師さんだった。
そっか。退院か、もう。
「はい。大丈夫です」
看護師さんとのやり取りに慣れているらしい真夜は、微笑んでそう答える。
「荷物、持とうか?」
「え?…いいのか?」
「
「んじゃ、お言葉に甘えて……」
真夜が持ってきていたらしい荷物を、私が受け取る。
看護師さんがドアを開け、私たちは個室を後にした。
廊下ですれ違った女の子が、まさかのあの子だったのを知るのは、もう少し後の話……。
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