4 星降る夜

 22時。

 約束の時間。


 お母さんたちに見つからないように周りを確認してから、そろ~っと部屋のドアを開ける。

 その先はベランダになっているから、そこに出る。


「よ」

「来たよ」


 私は一応運動神経は結構いいと思う。

 太いベランダの手すりに立ち、力を籠め、約二メートル先の真夜のベランダに飛ぶ。


「…紗弥、相変わらず運動神経半端ねーな」

「えへ」


 真夜の家の広いベランダには、望遠鏡が置かれている。


「うわ~、本物の望遠鏡だぁ……」

「学校で見ただろ」

「いや、家にあるもんなんだなって……ね?」

「なんか…言うことが面白おもしれー」


 そう言って真夜は小声で声をあげて笑う。


「何がそんなに面白いのよ」


 ついでに一緒になって笑う。


「あ。星いっぱい!」

「だろ? 結構今日晴れてるから良く見えんだよ」

「晴れててよかった~」

「ホント。最近何故か雨多かったから良かったよ」


 満天の星空。生まれてから両手と両足で数えられるくらいしか星空なんて見上げたことがない。


 多分、今日も真夜に誘われなかったら、こんな星空見れなかった。

 真夜、ありがとう。

 と口に出したいけど、そんな素直に言えるわけない。


 その日は、夜中零時まで星空を見て笑い合った。

 あんな事件が起こるなんて、1mmも思いもしなかったんだ――――。

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