12







「もうすぐ明けるのかなぁ…。」



屋上には着いたものの、生憎雨が降っていて。

仕方なく扉を入ってすぐの軒下へと腰を下ろす。



どうして上原君が僕を呼び出したりしたのか…。

それだけはさっぱり分からなくて、


ちょっぴり不安が募った。









「…………遅いなぁ…。」



かれこれ1時間くらい待ってると思う。

もしかしたらそれ以上…。


こうもひとり待ちぼうけしてると、弱い僕の心はどんどん悪い方へと偏ってしまうから…しんどい。








(そんな事ないと思うけど、な…。)


上原君の表情からは、何か吹っ切れた感じが見て取れたから。






「大丈夫。うん、大丈夫…」


「何が大丈夫なんだ?」


「ぎゃ───…!!?」



俯いたまま、ブツブツと自分の世界に浸っていたら。

頭上から声がかかり、思わず悲鳴を上げた僕。






「んだよ、ヘンなヤツ。」



呆れたようにそう言って、

上原君は隣りにどっかりと座り込んだ。



あ、近いかも…。









「……………」



話があるから呼び出したんだろうけど。

上原君は煙草を吸い始めてしまい、一向に話す気配はない。


かと言って自分から切り出す勇気もないから…黙ってるしかないし。



心臓に悪いです、この距離…。







「やんだな、雨。」


「ふぇっ…!?」



思わず顔を空に向けたら、灰色の雲間から光が差し込んでいて。小降りだった雨は、いつの間にかその姿を消してしまっていた。






「来週辺り、梅雨明けるってよ。」


「あっ、そうなんだ…。」



なんだろ…普通に会話とか、擽ったいなぁ。

けど今はまったりしてる場合じゃ────…






「芝崎と話した。」


「え……ええっ!?」



今日の上原君はヘンだ。

さっきからビックリさせる事ばかりで、僕の心臓をガンガン揺さぶってくれるから…


振り回される僕は、何気に息をするのも大変だ。








「悪かったな…。」


「上原君…?」


「効いたよ、お前のコトバ…。」



上原君が言うには…


昨日あれから色々反省したんだそうで。

ここでひとり考えて、僕に言われて…やっと気付いたんだという。






「アイツの傍で支えてるつもりで…結局自分の気持ち押し付けて、追い詰めてただけだったんだなって、さ。自分がこんな不器用だったのかよって─────」



マジ情けねぇよな、と照れ臭そうに苦笑する上原君。






「芝崎君とは、なん…て?」



今なら聞いてもいい気がして、

僕は遠慮がちに問いかける。


目線だけで見上げたら、バッチリ上原君のそれとぶつかり。ふわりと微笑まれてしまった。



その不意打ち、格好良すぎてヤバイです…

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