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「水島も芝崎も、お互い好き合ってるクセに…他人ばっか気にして空回ってんだろ?俺には…やっぱり無理だったからさ。芝崎だったらっ…て思ったんだよ。」



ライバルだからこそ、理解出来る事がある。


上原君は端から答えを知ってて。

それでも芝崎君の口から直接、綾ちゃんへの気持ちを聞きたかったみたい。






「俺は芝崎がしたことを許す気はねぇ。けど水島は今もずっと、ひとりで苦しんでるし。俺じゃ…どうにもなんねぇから────」



芝崎君の背中を押した。想い人のもとへと、自ら。


それは上原君にとって苦渋の決断だったのだろう。







「行ったの…?芝崎君。」


「ああ…さっきな。」



そっか…それで僕を待たせてたのか。







「大丈夫かなぁ、綾ちゃん達…」


「あ?んなの当たり前だろ、好き同士なんだからよ。」



そう言ってまた新しい煙草に火を点けた。



やっぱりカッコイいなぁ、もう。

ホント、好き過ぎて死にそうだ────…って、


振られたのにこんな事思ってたら、うざがられるかな?




顔が急に熱くなって、

堪らずギュッと自分の膝を抱き寄せたら────…






「保。」



優しい声で愛しい人に、下の名を呼ばれた。





「っ……!!」


不意打ちなんてされたらダメだ…。

膝に一度埋めた顔は、恥ずかしくて上げられやしない。



今なら死んでもいいかも…







「バカ…照れすぎだお前。」


「…ッたぁっ!!」


コツンと軽く頭を小突かれる。

や、地味に痛いです上原君…。


思わず涙目になって隣を見上げたら、






「バッ…こっち見んじゃねぇ!!」



思いっ切り顔を背けられ、また叩かれてしまった。


垣間見た上原君は、

なんとなんと耳まで真っ赤になっていたので…




つられて僕の顔は飛び火して。更に熱くなっていた。








陽が暮れて、

そろそろ帰るかと共に立ち上がる。



会話はなく、人気の無くなった薄暗い帰路を、

とぼとぼと並んで歩き…



ここでお別れってなった時、去り際に放ったキミの言葉。








「なぁ、保。」


「ん…?」


「その、お前の気持ちとか…俺も正直、失恋したばっかで、ちゃんと答えられそうにねぇから、さ…」



“友達から始めないか”



不器用で乱暴で。

本当はとてもお人好しで、誰より優しいヒト。



僕が生まれて初めて本気で好きになったキミが、

慈悲にも与えてくれた最大のチャンス。



否定はしない、だからって肯定する事も簡単には出来ない。それなら…




ゼロの関係から、もう一度始めないか…と、

キミは僕に、手を差し伸べる。







「泣くなって……ったく…。」


呆れたように笑ってたけど。

仕方ないなって、その手でぶっきらぼうに頭を撫でてくれたキミ。



ボロボロと泣きじゃくる僕の顔を覗いて、

くしゃりと笑った上原君は。






「よろしく…な、保?」


だから僕も精一杯の想いを込めて、





「うんっ、よろしくねっ…!」



まずはここから。

僕のコトを知って貰うために。







後悔しても知らないよ?

だって、もっともっと知ってしまったら…

絶対に、僕は今よりキミを



好きになる自信があるんだから─────…ね?




episode1・完。


2010年3月15日、完結。

2022年、加筆修正。©️祷治


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