episode .2

1




side. Tamotsu







「じゃ~ん!コレなんだ?」


「………携帯灰皿、か?」


「そう、せいか~い!」




学校の屋上、真っ青な空の真下で。

今日も僕らは一緒にいる。





一難去ってまた一難。

上原君の失恋、僕との友達宣言と言うビッグイベントを経て…


現実に戻れば、学生の本分なるものが迫っていたという…。





優等生の綾ちゃんなんかは、然して問題なかったみたいだけど…。平均的な頭脳の僕にとっては、まさに一大事。


最悪、追試の二文字が頭を過ぎったんだけど───…







『一緒にテスト勉強すっか?』



彼の意外な一面を、垣間見ることに。


今まで、まともに授業も受けてなかったし。

3年への進級すら危ぶまれてた上原君だったから…。


きっと勉強もそれほど得意じゃないんだろうなって、勝手に思ってたんだけど…。



流石は理系クラス。

毎日コツコツと、真面目に授業を受けてた僕なんかよりも。上原君の方が遥かに頭が良かったんです…。



地味にショックだけど。

ちょっとキュンっ…てきちゃったよね。







加えて机に至近距離で肩を並べて。

一緒にテスト勉強出来たのは、この上ない幸せだったなぁ…。


真剣な顔で教えてくれる上原君に、つい魅とれ過ぎてしまい。しょっちゅう怒られちゃったけど…ね。



おかげでテストも無事クリアして、後は夏休みを待つのみ────…



…なんだけど、さ。









「…で、なんだよコレ?」


「だから灰皿だよ、は・い・ざ・ら!」



上原君て未成年者なのに、良く煙草吸うし。

吸い殻は当然のように、そのまんまポイ捨てなわけで…。

屋上を掃除しに来る人なんていないから、

僕が密かに片付けてたわけだけど。



それじゃあダメだよね…と言うことで。


若干の下心もありつつ、上原君が好きそうな感じのお店に行って。オシャレで場違いな空気にドキドキしながらも、勇気を出して買っちゃったのです。


携帯灰皿を。







「お前の────なワケねぇよな…。」



ハイどうぞと差し出したら、面倒臭そうに…って、ホントは照れを隠しながら。ぶっきらぼうに受け取る上原君。


もう、そんな意地張らなくてもいいのになあ。






「上原君に似合いそうなの選んだんだから、ちゃんと使ってくれる…よね?」


「…わーってるよ。」



上原君は口を尖らせながらも、手にした煙草を早速灰皿に押し込んで。

僕が選んだ物は、キーホルダータイプの灰皿だったから。財布を取り出すと、それに繋いでたチェーンへと、さっそく嵌めてくれた。


なんだかんだ優しいんだ、上原君は。

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