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side. Akihito




俺ひとりなら、すぐにでもられたんだが…


保がいる以上、ヘタに刺激する訳にもいかず。

シカトを決め込もうと思ったんだけど…。






「このチビ……お前のだろ?」


重野が言い放った、突拍子もない台詞。


パリシなら、まだ解らなくもないが。

なんでいきなりそうなったのか…相変わらず頭の捻子が飛んでる野郎だなと、若干呆れ気味に受け流していたら。





「オレさあ~…見ちまったんだよね────」



“オトコとキスしてただろ?”



最悪。

あの瞬間を…一番タチの悪いのに見られてたとはな。


精神的に参ってたとはいえ、自ら起こした過ちに。

つい吐き気を覚えた。






何も返さない俺に、調子づいた重野はペラペラと暴言を吐きまくる。



本音すぐにでも、その汚ぇ面に一発ぶち込んでやろうかと…内心ハラワタが煮えくり返る思いだったが。


無関係な保だけは、巻き込む訳にはいかないと。

いつもの好戦的な自分を圧し殺し、その場は耐え抜く覚悟でいたってのに…







「………れ…」


重野の連れに肩を組まされたままの保が、

その大人しげな顔に、くっきりと怒りを露わにし。





「謝れ……上原君に謝れッ…!!!」



そう叫んだと同時に、保は…

目の前の重野に向け、体当たりを喰らわせていた。









(なっ……)


信じられなかった。

外見も中身も大人しく、すぐ顔を赤くして黙っちまうような保が…



俺なんかの為に、本気で怒っているだなんて。








「上原君はそんな人じゃないっ…!」


ひっそりと俺を見守ってくれてた、

お前だけが知る真実。



本当は重野が言うとおり。

お前が思ってるほど俺は真っ当じゃないし、

優しいと呼べる人間でもない。



寧ろ、汚れまくってるくらいだってのに…。




それでもお前だけは俺を否定したりせず、

好きだと言う気持ちを、ひたすらまっすぐに…


ぶつけてくれるんだ。









あまりに保が必死だったから。

俺はただ茫然としてしまい、成り行きを眺めてる事しか出来ずにいたんだが…





「……ざけんなよっ、クソチビが!!」



ブチ切れた重野の払った拳が、保の横顔に放たれて。


気付いた時にはもう、保の身体は吹き飛ばされ…

花壇の側面に背を打ちつけ、力無く倒れてしまっていた。







「保っ…!!」


急いで駆け寄り、保を抱き寄せると…





「…あやま、れっ…」


弱々しくも傷ついた身体で手を伸ばし、

まだ起き上がろとする保。


その姿に俺は、柄にもなく目頭が熱くなるのを知る。








「へっ…弱ぇクセに…」



勝ち誇ったよう唾を吐き捨てる重野。


なんだろうな…

奥底から湧き上がってくる、この感じ。




初めて、だ。

こんなにも…腹が立ったのは。








意識が朦朧としている保をそっと抱き上げて、

安全そうな場所へと横たえる。





「お前ら、覚悟しとけよ…」



保を傷つけたんだ。こんなクソ野郎の命じゃ、

いくつあっても足りやしねぇ。




だって保は、

俺の一番大事、な────…?



それは無意識に口から飛び出し掛けた、


答えにならない確かな本音…だった。

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