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side. Akihito






「うえはりゃきゅん~、おたんじょぉびおめれと~!」


「ああ…もう分かったって…」



かれこれ何十回と続く祝福のコトバ。

…後悔ってのは必ず、後からやってくるもんだ。







忘れかけてた誕生日。

この俺が、んなモン気にする質じゃねぇけど。


8月21日。

今までダチとかに祝って貰えるような時期に、

生まれなかった所為もあり。


誕生日の祝いなんてガキの頃に、

家族と数える程度しかした事がなかった。






自室のベッドでごろごろしながら、

ふと浮かんだ保の顔。


誕生日ってのは、単なるきっかけにすぎないけど。


それを肴にアイツとバカ騒ぎすんのもいいかもなとか…気付いたら、朝イチでメッセージを送信していた。








コンビニで缶ビールを買って、保の家に向かう。

こういう当たり前な瞬間が不慣れで、妙に擽ったいクセに。


意外としっくりくるんだから、不思議だ。









「い、いらっしゃいっ…」


会う度にガッチガチになってく保。

そんな姿もなんだか微笑ましくて…ニカッと笑って挨拶すれば、面白いくらいに真っ赤になっちまった。




誕生日ケーキを自分で用意するのもなんだから、

訳も言わず保に用意させたけど。


何すんのかも解ってない割にコイツは、他にも色々と準備してくれたみたいだ。







早速疑問をぶつけてくる保に、今日が俺の誕生日なんだと打ち明けたら…露骨にショックを受け出して。


泣きそうな顔で、今からプレゼントを買いに行くだの言い出すもんだから。

一緒に祝ってくれればいいと伝えたら、なんとか納得して大人しくなった。






とりあえず乾杯って事で、保がグラスにコーラを注ごうとすんのを手で制して。持参したビールを進めてみると…


俺とは違って真面目な性格だから、さすがに躊躇ってたけども。

ちょっとからかったら保は真に受けてしまい、

飲めもしない酒を一気飲みしちまったもんから───…




…どうもそれが、失敗だったみてぇだ。









こういうタイプの人間ほど、

何故か極端に酒に弱いというか…酒癖が悪いようで。





「ほらほらぁ~、キミものみなってばぁ。」


いつもなら恥じらって近付こうともしないクセに。

今は俺のすぐ隣、肩に腕まで回して密着し絡んでいる。






「オイ、もうやめとけって…」


「やら~、うえはりゃくんがのめのめってゆったじゃんか~!」


とか言ってもう呂律はおかしいし、フラフラしてんじゃねぇか。



たく、しょうがねぇな…。






「保、ダメだ。な…?」


グラスを持つ手を掴み、子どもをあやすよう顔を覗き込んで優しく諭してやる。


すると保はぼんやりと俺を見つめてきて…

酒気で潤んだ瞳を向けられた俺は、一瞬ドキリとして胸を熱くした。








「うえはりゃく…」


「ん?なんだよ…。」



舌っ足らずな声で名を呼ばれ、返事をすると…





「しゅき~だぁいすき~…えへへ…。」


そう言ってすとんと俺の膝に跨ると、

両手を首に回してきやがった保。



なんだコレ?対面…







「はぁ~…やっぱりカッコイ~だぁいすきだあ~。」


「ッ…保、やめろって…」


冗談じゃねぇ、こういうのがマジ困るんだよ…。

コイツには何故か強く出れねえから、余計質が悪い。

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