12



side. Tamotsu




ガタンと立ち上がる僕。

えっ、ウソウソ…そんなまさか─────





「今日、なの…?」


「ああ。」



嘘でしょ…なんでなんで!?






「そんなっ、もっと早く言ってくれれば…僕、なんにも用意してない!」


片想いとはいえ、大好きな人の誕生日を見過ごしてたなんて…。



ひとりショックで半泣きする僕に対し、

上原君は至って冷静でいて。



更に僕の心を、揺さぶりに掛かる。







「なんも要らねぇって。お前が一緒に祝ってくれりゃ、それだけでよ。」


「ッ…!……う、うん…」



ズルいよ、ズルい。


なんだか良いように絆されて。

仕方なく椅子に座って。仕切り直しとばかりに、ふたりきりのお誕生日会はスタートしたんだけど…








「な、ナニコレ…?」


「何って、普通にビールだろ。」


コーラの為に用意したハズのグラスには、予告なく小麦色のシュワッとした飲み物が注がれて…。



グラスを手にしたままピシリと硬直していると、

上原君に勝手に乾杯され─────…


本人はグビグビと、

当たり前のように一気に飲み干してしまったから。






「はぁ~…やっぱ夏はコレだよな~。」


お前も飲めよとか、当たり前に進めちゃってるけど。


ごく真面目に育ってきた僕は、こんな未知なる飲み物…ていうか、未成年だから飲んでる方がおかしいよね?



しかも真っ昼間からお酒って…。







「オラ飲めよ、保~?つまんねえだろ~。」


オロオロしてる間に、もう缶が3つも空になってるし…。僕には上原君の好意を、無碍には出来ない弱みがあるから─────…







「んっ…!」


勇気を出してグラスに口を付け、

勢い良くビールを喉へと流し込んだ。



うう、苦っ…。







「おお~やるじゃねぇか保~!」


ヒュゥッと口笛を吹いて、またなみなみ注がれる。


まだ飲まなきゃなの、コレ?

あ───…なんだか、ぽかぽか気持ち良くなってきた…




そうこうしてる間に、

僕の意識は曖昧に…段々と怪しくなっていった。

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