7
side. Tamotsu
「ねえねえ~、ちょっといいかナ~?」
水の掛け合いで年甲斐もなくはしゃいでいたら、流石にバテちゃって。日陰に並んで、ぼーっと海を眺めていると…。
「キミらって高校生?良かったら一緒に泳ごーよ?」
ヤケに可愛い声でシナを作り、際どい水着で谷間を強調させたお姉さん達が。
僕達…いや、上原君に向けて声を掛けてきた。
「わわっ…」
お姉さん達は大胆にも、僕と上原君の僅かな隙間に割って入り…。気付けば両手に花状態な上原君。
途端にムスッとしちゃったのは、僕の気の所為ではないハズ…。
「キミ、すっごくカッコイいよね~!大学生かとも思ったんだけどぉ。ずっと声掛けようか迷ってたんだ~。」
あっそと、皮肉たっぷりにぼやいた上原君の腕に遠慮なく腕を回し。ふくよかな胸をそれに押し付けてくる派手なお姉さん。
僕は堪らずモヤモヤしてしまい…
けど口には出せず、気休めにもそこから視線を逸らす事しか出来なかった。
お姉さん達は巧みな話術と色香で以て、上原君を落としに掛かってたけど。
当の本人は、分かり易いくらいに不機嫌オーラを放っており…既に完全無視を決め込んでいて。
相手にされてないお姉さん達が、少し可哀相だったけど…本音はかなり、ホッとしてたんだ。
──────…だけど。
「ねっ、弟クンもお兄さん説得してくんない~?」
鉄壁な上原君は、簡単には墜とせないと観念したのか…と思いきや。今度は予想外にも、僕の腕にその胸を寄せてきたお姉さん。
どうやら僕の事を上原君の弟だと、勘違いしてるみたいだ。
…僕はチビだし、上原君は長身で大人っぽいから。
そう見えても仕方ないけど…ね。
「ホラホラ、行こ~?」
むにむにと、女の子の武器を使われても…困る。
そりゃ、あからさまに胸なんかを押し付けられば、当然恥ずかしいし。少し前なら、普通に流されてたかもしんない。
けど今の僕には…お姉さん達がどれだけ誘惑してこようと、絶対通用しないんだ。
上原君にだったら、瞬殺されてただろうけど。
いつの間にか二人がかりで僕を狙い打ちし始める、
お姉さん達。
正直こういう派手で積極的な女の人って、苦手だから…どうしよう…。
困り果てて真っ赤な顔して俯いても、
その腕は一向に離しては貰えず。
折角の夏休みで、まるで初デートみたいで。
楽しかったのになぁ…とか。
勝手にヘコんでいたら─────…
「…オイ、保から離れろよ。」
上原君が、冷えた声音で言い放つ。
「とっとと失せろ、尻軽女。化粧が濃過ぎて臭ぇんだよ、ブス。」
ピキーン────…
全員…勿論僕も含め、場が瞬時に凍りつく。
「はっ、はぁ…?何言って────」
しかし強気なお姉さん達はすぐ我に返り。
負けじと反論してきたんだけど…
「帰んぞ、保。」
「えっ、あ……う、うんっ…」
聞く耳もたず。
上原君は僕の腕をグイッと引くと、スタスタと歩き出してしまった。
見上げた顔は、スッゴく眉間に皺を寄せ…
あからさま怒っていて。
後ろでお姉さん達の罵声が聞こえてきたけど…
僕はもう、それどころじゃなくなってた。
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