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『好きなコについ意地悪しちゃった小学生の図』
…まさにそんな感じ。
上原君は知ってしまったんだ。
綾ちゃんの本当の魅力に。
そうだよね?
好き、なんだよね…。
「そうだっ、たまにはお昼ご飯一緒にどおかな?」
多分この誘いは断られる。
知ってて僕はワザと大きめな声で、綾ちゃんにそう切り出した。
思った通り反応する上原君。
「あ、その今日も…」
「あっ…そっか、また彼と食べるんだね?」
綾ちゃんからは、曖昧にしか話して貰えてないけど。
僕は知ってるんだよ、色々と…。
いつもひとりだった綾ちゃんの隣。
いつの間にかそこには、最近知り合ったらしい後輩君がいて。
人嫌いな綾ちゃんにとっては、大変珍しい事だった。
綾ちゃんから聞くところによれば、彼は単なる後輩との事だけど…。
ちょっと前に見かけた、その″
どうやらそのコも綾ちゃんに、恋愛感情を抱いてるみたいで。
だって彼も、上原君と同じ瞳をして…
綾ちゃんの事を、とても眩しそうに見てたから。
(キミも知ってるんだね…)
内心焦ってるんだろうな。
芝崎君と同じ『好き』なのに。
上原君は相当な、ぶきっちょさんだから。
こんなカタチでしか表現出来なくて。
無関係な僕にだけは、痛いほど解っちゃうのにね…。
誰もが恐れる強面不良なのに、やってる事がなんだか可愛くて。
最初は純粋に、綾ちゃんに会いに来てたけど…
いつの間やら、それを口実に。
彼を観察するのが…僕の日課になってしまっていた。
(あっ…タバコ吸ってる…)
体育の授業中、グラウンドから屋上を見上げれば。
フェンスにもたれ掛かる金髪頭を発見。
ここんとこ上原君は、あからさまに元気がない。
原因は勿論…あの芝崎君ていう、2年生の存在。
最近の綾ちゃんは以前に増してキラキラしてる。
なんて言うか、良く笑うし。
会話もちゃんと返してくれるようになってた。
それはとても良いことなんだけど。
上原君にとっては良くない話…なわけで。
冷たい態度を取りながらも、
きっと綾ちゃんの隣を夢見てきたんだろうな…。
彼的に長期戦攻略のつもりが、あっさり芝崎君に横取りされてしまったものだから。
(健気だなぁ…。)
不器用だけど…ちゃんと恋、してるんだね。
あんな風につっぱっててもさ。
上原君の女性関係の噂は、あのルックスと喧嘩の強さもあってか。モテまくりの節操なし…って内容ばかりだったけど。
今ではパッタリと聞かなくなった。
(初恋、なのかな…)
きっとそう。
だから余計、戸惑ってるんだよね…?
「…あっ。」
目が合ってしまった。
こんな距離があったから、油断した。
かなり焦ったけど、内心は嬉しかったんだ。
キミの瞳に、一瞬でも僕が映ったことが…。
僕はキミの想いを一番理解してるよ。
例えキミが僕を知らなくても、僕はキミの味方だから…。
(叶うといいね、キミの想い────…)
勝手に願っておいて、
僕はやっぱり胸を痛めるんだ。
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