第17話 対死にかけの意思Ⅳ

「……何がおかしい」

 

 笑い続ける僕を見て死にかけの星の意思は首を傾げ、僕を睨みつけてくる。


「いや……何。ずっと僕の中にあったもやもやが解消されたんだ。今まで感じていたそうだ。そうだ。僕は陽向のことが好きだったんだ」

 

 どうやら僕は……自分が思っていたよりも弱かったみたいだ。

 

「ありがとう……これで君を殺す理由が出来たよ」

 

 僕は死にかけの星の意思に向かって笑顔を投げかける。


「……何を言うか。汝がこのおなごに魅力を感じていたのは己を覚え、嫌悪感を抱かないで居てくれる!ただそれだけ!たったそれだけなのだッ!我が消えればこのおなごは汝の持つ力に対抗することができなくなるぞ!我を殺すために明天の力を使えば……!このおなごはお前のことを綺麗サッパリ忘れることになるのだぞ!」

 

 死にかけの星の意思は叫ぶ。


「だから?人との縁は自分で繋ぐものだよ?」

 

 僕は……一度失った縁をわざわざ繋ごうとしなかった。覚えようともしなかった。自分で縁を繋ぎに行くことすらなかった。

 ただただ僕は……怠惰にそこに座して待っているだけだったのだ。

 たまたま縁が繋がってくれるのを。

 それじゃ駄目だったんだ。


 陽向は一度、すべてを捨てた僕を追いかけてくれたのだ。

 ならば僕は何度でも陽向を追いかけよう。


「明暗天『蓮』」


「待ッ!?」

 

 明天と暗天……その両方をあわせて合体させた明暗天の力を振るった。

 相反する二つの力は、星の意思をこの世界から完全に消滅させる。

 僕よりも遥かに弱き……ただの矮小な器を手に入れたにすぎない死にかけの星の意思風情が僕に勝てる道理も、抵抗出来る道理もない。

 ただただ確実にその生命に終わりが告げられる。

 

「またね。陽向」

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