第15話 対死にかけの星の意思Ⅱ
「はぁ……はぁ……はぁ……」
一度僕から距離をとった死にかけの星の意思は息を切らし、僕の方を睨みつけてくる。
「やはり……この出来損ないの姿ではいくら人間であるとは言え、この星の意思の力を持つお前には勝てぬか」
忌々しそうに呟く死にかけの星の意思が何をしても対処出来るように身構える。
基本的に生命は追い詰められてからその生命の真価を、本来の力を開放させる。
この世界で最も安全なときに己の本性がさらけだされ、この世界で最も危険なときに己の肉体の真価が最も開放されるというのが大半の生命である。
「『暗天』」
僕はなんとなく嫌な予感がしたから故に、明天から暗天へと切り替える。
「良い判断だとも……あぁッ!!!」
死にかけの星の意思の……黒い影が陽炎のように揺らめき、辺りを光が包み込む。
「……ッ!?」
僕の視界は潰され……何が起きているのかわからなくなる。
頭の中で物事を考えるのを妨害され、上手く感が働かなくなる。
「……陽向ッ!?」
光が消え、視界が戻った瞬間。
確かに結界で守っていたはずの陽向の姿が跡形もなくなくなっていたのを見て動揺し、大きな声を上げる。
「……ッ!!!貴様ッ!」
僕は……己の中の何が変わるのを感じた。
何故だろうか。
ただのいくらでもいる人間の一人でしかない陽向を奪った死にかけの星に対する憎悪が僕の中より溢れ出してくる。
「何をしたッ!!!」
何か、繭のようにすべてを包まれている……死にかけの星の意思を睨みつける。
「そんなに怒るな」
「……は?」
僕は繭の中より聞こえてきた声に困惑の表情を浮かべる。
「それほどまでにこの女が大事であったのか?」
繭が解かれ、一人の存在がその姿を表す。
恐らく死にかけの星の意思。
「そんなことなかろう。星の意思がただの矮小な生命一つに心をとらわれることなどありえぬからな」
「なん、で……?」
繭から出てきた死にかけの星の意思の姿は何故か陽向の姿……そのものだった。
陽向の意思でなく、死にかけの星の意思を持った陽向の姿をした存在が僕の目の前に立っていた。
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